番外編:【お父さんの独白】〜異国での再会と、修行のような旅の思い出〜
私は朝から張り切っていた。今日は待ちに待った日だ。妻と子供が、この異国の地まで会いに来てくれるのだ。
到着予定時間のかなり前からタクシーに乗り、空港へ向かった。しかし、待てど暮らせど二人は出てこない。焦って同僚に電話をかけると、「ターミナルが間違っているのでは」と指摘された。確認すると、案の定、私は別のターミナルに来ていた。
やってしまった。大急ぎで妻たちがいるはずのターミナルへ移動する。同僚が「大きな空港だから仕方ないですよ」と慰めてくれたが、私は「そうだよなぁ」と苦笑いした。このドジ話をすれば、きっと妻たちも笑ってくれるだろう――そう思いながら、大急ぎで迎えに行った。
ようやく見つけた二人は、大きなスーツケースを持って不安そうに立っていた。私は再会の嬉しさから「ハハハ」と笑いながら近づいたが、妻と子供にひどく怒られてしまった。どうやら、かなりの不安を与えてしまったらしい。なかなか不機嫌が治らない妻を見て、私は焦った。
せっかく妻は仕事をしながら子育てをし、旅行の手続きまでして歩み寄ってくれたのに。子供にとっても初めての海外旅行なのに、嫌な思い出になったらどうしよう。私は取り返そうと、ますます張り切った。それが、さらなる失敗の始まりだった。
現地での生活を知ってほしくて、あちこちへ連れ回した。私にとっては当たり前の日常も、妻と子供には「過酷な修行」のような旅になっていたらしい。
とどめは、100万ドルの夜景への道中だった。普段はどこに行きたいと言わない妻が「トラムに乗ってピークへ行きたい」と言っていたのに、私はバスの番号(15と15C)を間違えてしまった。かなり曲がりくねったルートを走るバスに揺られ、妻はすっかり酔って機嫌を損ねてしまった。どうしようかと冷や汗をかいたが、子供の屈託のない笑顔だけが唯一の救いだった。
その後もたびたび「お父さんのやらかし」と二人から言われ、父親の威厳は下降の一途をたどった。それでも、翻訳機能と身振り手振り、そして怪しい現地の言葉でなんとか手続きをこなし、夫として、父親としての意地を見せられたのではないか――と、少しだけ自分に自信を持てたことも事実だ。
最後には新幹線の予約を忘れて何本も見送るという失敗もあったが、概ね、子供には楽しい冒険をさせてやれたのではないかと思う。妻とも、前より少しは歩み寄れたはずだ。
二人が帰国する前日、同僚たちが食事に誘い、交流してくれたことは本当に嬉しかった。言葉が通じない異国で、私は彼らに何度も助けられている。本当に良い仲間に恵まれたものだ。
最後、空港で見送るときに子供が抱きついてきて、私は思わず号泣してしまった。妻も子供も涙を浮かべて悲しんでくれたが、一人で大泣きしている私を見て、二人は意外とクールだった。手を一生懸命に振り続けたが、子供はちらりとも振り返らずに行ってしまった。
寂しさがこみ上げたが、ふと思う。これからも、家族と私の旅は続いていくのだ、と。
まだまだ番外編は続きます。




