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番外編:【お母さんの独白】〜異国の空の下、すれ違う視線と温度差〜

三陸にいる子供の声が、タブレット越しに聞こえてくる。画面の向こうで笑うおじいちゃん、おばあちゃん。その様子を眺めながら、私はふと物思いに耽っていた。

今回の旅は、少しでも家族の絆を修復できればという私の願いから始まった。仕事と家事に追われる中、複雑な渡航手続きや電子機器の操作は、まるで終わりなき苦行のようだった。それでも子供が「パスポートに出入国スタンプが欲しい」と言うから、ネットで調べ上げ、一つひとつ準備を進めた。

ようやく到着した異国の地。しかし、空港で待ち合わせるはずの夫の姿がない。何十分待っても現れず、メッセージを送っても既読にならない。子供の小さな手を強く握り締め、震える心で夫を捜し歩いた。やっと見つけた夫は、なんとヘラヘラと笑っていたのだ。私と子供がどれほど不安だったのか、彼には想像もつかないのだろうか。

マンションに着いてからも、夫の「日本に帰ったらいつもゆっくりさせてくれるから、今回はゆっくりさせてあげるからね。」という言葉は、私には空虚に響くだけだった。家事をしなくていいと言いつつ、溜まっていく大量の洗濯物を放置できるわけがない。慣れないドラム式洗濯機のボタンを押し、乾燥機能を使っても、どこか湿った空気が残る。そんな些細な不快感さえ、夫や子供は気にも留めていない。「やってくれて当たり前」という空気が、じわじわと私の不満を募らせていく。

旅行中、夫は自分の「大変さ」を誇示したいのか、私たちに過酷な移動を強要した。観光の願いを自分のこだわりで台無しにされ、出入国ゲートの手続きさえも私が夫をナビゲートする始末だ。

特に忘れられないのはYMCAホテルでの夜だ。夫がいびきをかいて寝ている横で、私はコインランドリーにいた。フロントでトークンを買う仕組みも、見慣れない洗剤の匂いも、何もかもが疲労を加速させた。洗濯機が回るのを待ちながら、「私はどこに行っても休めないんだ」と叫びたい衝動を必死に抑え込んだ。

新幹線が混雑し、何本も待つことになった時も、夫は悪びれる様子もなかった。私はカフェで一人、冷めたコーヒーで心を鎮めるしかなかった。さらに市内案内でのトラブル、未知のタクシーでの不安……。それでも、異国情緒を楽しむ子供の姿だけが、私の救いだった。

極めつけは空港での別れ際だ。自分の寂しさから号泣する夫を見て、呆れるしかなかった。子供は我慢しているというのに、父親が感情をさらけ出してどうするのか。

けれど、今回の旅で子供は驚くほど成長した。帰宅後、山のような洗濯物を干している私の横で、子供がふと私を見て言った。

「帰ってきてからも洗濯してくれて、いつもありがとう」

その一言で、今までの苦労がふっと軽くなった気がした。

「……お母さん、聞いてる?」

タブレット越しの子供の声に、ハッと現実に引き戻される。

「明日は友達とお兄さんが、金華山に連れてってくれるんだって」

楽しそうに報告するその顔を見て、私は「気をつけてね。みんなによろしく」と微笑んだ。

今回の旅で、家族の絆は確かに深まった。でも、夫と私との距離は、もしかすると以前よりも遠くなってしまったのかもしれない。そう思うと、窓の外の景色が少しだけ切なく滲んだ。


まだまだ番外編は続く


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