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番外編:お母さんと僕の初めての大冒険⑧〜灼熱のスタンレーと、魔法のピッとスタンプ〜

お昼を済ませ、おじいちゃんとおばあちゃんは所用へ、僕は宿題に取り掛かった。今年はお受験の子が多いから宿題は少なめ。少しずつ進めていると、パートから帰宅したお母さんとタブレット越しに繋がった。おじいちゃんとおばあちゃん、僕、そして画面の向こうのお母さん、4人での賑やかな時間が始まる。

「お母さん、お帰り! 午前中はね……2日目の『修行の日』の話をしたんだよ」と僕が切り出すと、お母さんは懐かしそうに笑った。

「あぁ、あの蒸し暑かった日ね! イルミネーションは綺麗だったけど、とにかく湿気の度合いが日本と違ったわよね。お父さんにガンガン歩かされて、本当に遭難するかと思ったわ」

「無事で帰ってきてくれて本当に良かったわよ」とおばあちゃんが目を細める。

「それでね、3日目はやっとお父さんがまともだったんだよ!」と僕が言うと、お母さんも頷く。

「そうそう、お粥もチェーン店じゃない裏道の当たりのお店で食べたしね。スターフェリーでセントラルへ渡って、今度は僕とお母さんでバスの番号を念入りにチェックしたの」

お母さんが当時の様子を語り始めた。

「お父さんが『右側の席に座ると海が見えて綺麗だよ』って言うから素直に従ってね。途中下車して、あの有名な赤い橋を渡ったの。お母さん、覚えてる?『慕情』の舞台」

おばあちゃんは画面越しのお母さんに嬉しそうに頷く。「まあ、レパルスベイ! 憧れだったわ。あの主題歌、今でも家事をしながらつい鼻歌で歌っちゃうのよ」

「そうよね、あの頃の映画の景色を肌で感じたわ」とお母さんは続け、スタンレーへ向かった時の話になった。

「バスを降りた途端、逃げ場のない熱気に目がくらみそうになったわ。スタンレープラザに駆け込んで、冷房の冷たい風を浴びた時の安堵感といったら……まさに天国だった! 私だけカフェで涼みながら、青い海で泳ぐあなたたちを眺めていたけれど、あんなに暑い中でよく泳げたわよね。帰りのバスで3人で『死ぬかと思った』って笑い合ったのもいい思い出よ」

「水は綺麗だったし、更衣室もシャワーも公営で無料だったんだよ! 日本じゃ考えられないよね」と僕が自慢すると、お母さんは「100万ドルの夜景のここといえば昔は水上レストランの『ジャンボ』だったけど、今はなくなっちゃったのが心残りだわ」と少し寂しそう。

話題はバスでの帰路へ。

「ショッピングセンターで生き返ったのに、バス停に戻った瞬間に湿気が襲ってきたよね。空気が暑くて吸えない感じ!」と僕が言うと、お母さんも苦笑い。「でも帰りのバスの冷房が寒すぎて、お母さんが持ってきてくれたウィンドブレーカーに救われたよ。それでも足が冷たくて、ビニール袋を被せたりしてね」

「異文化体験ね……」と笑うお母さんに、「あれをドヤ顔で語るお父さん、本当にすごかったよね」と僕たち。

その後、地下鉄でワンポアガーデンのイオンへ。

「イオンって、あの日本のイオン?」とおばあちゃんが不思議そうに尋ねるので、「それがね、面白い船の形をした建物なんだよ! 日本の食材もあるけど、見たことのない謎のお菓子もいっぱいで。たこ焼きを買おうとしたら、海苔が細切りじゃなくて変な感じで……結局それはやめて、名物のパンダクッキーを買ったんだ」と報告。

「疲れた時の和食は最高よね。スシローもあってびっくりしたわ」とお母さん。

最後におばあちゃんが「そういえば、今の入国検査ってスマホで『ピッ!』なんでしょ?」と尋ねた。

「そうなのよ。でも、機械が反応しなかったら怖いし、何より『海外に来た!』っていう実感が欲しくて、あえて有人のカウンターに並んでスタンプを押してもらったの」

「スタンプ、宝物ね」とおばあちゃん。

「じゃあ、またねー!」と画面を切った。

お父さんが過酷なたびにまたする不安もあるけれど、少しずつ観光らしくなってきたかな。


僕たちの冒険は、まだまだ続きます。

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