番外編:お母さんと僕の初めての大冒険⑦〜汗と涙の香港大縦断!〜修行の果てに見つけた宝物〜
翌日、三陸は今日も雨だ。2日も続くなんて普段ならすぐに飽きてしまうはずだが、お母さんとの冒険の話をおじいちゃんとおばあちゃんがずっと聞いてくれるので、全然退屈しない。おじいちゃんもおばあちゃんも、ニコニコと楽しそうに相槌を打ってくれる。朝食を終え、一段落した頃、広い縁側に3人で集まった。
「おばあちゃん、お父さんのヤラカシはずっと続いたんだよ」
僕が語り出したのは、香港島に来て2日目のことだ。
「今日も張り切って香港島のほうに行くぞー!」
朝から張り切るお父さんの姿に、僕とお母さんは顔を見合わせた。また修行が始まるんじゃないの?と内心ヒヤヒヤしたけれど、やっぱり予感は的中したんだ。
まずはお粥だ。日本のものとは違って、出汁が効いた濃い味で最高においしい。でも、隣の人が食べていた「揚げパン(油条)」が気になったお母さんが、言葉も分からないのにジェスチャーで店員さんに必死にアピールしたんだ。
「本当にそれでいいの?」という顔の店員さんに自信満々で頷いたのに、出てきたのは作り置きで冷めきった、油でベタベタの揚げパン。「まずい……!」と一口で撃沈するお母さんを見て、おじいちゃんは「そりゃ美味いわけない」と呆れていたよ。
その後、スターフェリーでセントラルへ。切符代わりのプラスチックのコインを握りしめながら、僕は思った。『これが昨日お母さんが言ってたトークンか!』。昨日は疲れていて気づかなかったけれど、着実に冒険のスキルが上がっている気がした。
セントラルに着くと、広場には何千人ものメイドさんたちが集まって休んでいた。日曜日は故郷の仲間と過ごすのが恒例なんだって。お父さんの地図アプリを頼りにヒルサイド・エスカレーターへ向かった。
「見たことある! 昔の映画で!」
おばあちゃんが嬉しそうに言う。確かにエスカレーターはずっと上まで続いていて、すぐ横にはマンションが立ち並んでいる。窓から中まで丸見えで、ついつい覗いてしまった。
問題はここからだった。
「下りのエスカレーターはないから、あとは歩こう。すぐそこだよ」
お父さんが自信満々に言い出したのを聞いて、お母さんの顔が怖くなる。アプリでは平坦に見えた道も、実際には容赦ない階段と狭い坂道の連続だった。国際ローミングで準備万端だった僕が先導したけれど、足がつって「暑い、足が痛い!」と叫ぶお母さんを連れての炎天下の山道は、まさに修行だった。お父さんは「地図アプリじゃ分からなかったんだよ!」なんて言っていたけれど、おじいちゃんは「昔からヤラカシばかりだな」と笑っていた。
動物園で一息つき、やっとの思いで高級上海料理店へ。坦々麺で復活した後は、お待ちかねのトラムだ。2階席の最前列からビルを見下ろす風景は圧巻!
ワンチャイのおもちゃ街では、市民の足である「ミニバス」のミニカーを買った。昔はブザーがなくて「ヤーロー(降ります)」って叫んでいたんだって。今の便利さもいいけど、そんな大声でやり取りする熱気も少し味わってみたかったな。
最後にチムへ渡り、甘い香りに誘われて食べた熱々の「ガイダンジャイ」は忘れられない味だ。九龍公園で涼み、夜は日本料理店で締めて、プロムナードから香港島の夜景を眺めた。
「修行の連続だったけど、全部報われる綺麗さだったよ」
そこまで話すと、ちょうどお昼の時間になった。
冒険はまだまだ、これからが本番だ。




