番外編:お母さんと僕の初めての大冒険② 〜消えたお肉とミントのキャンディ〜
ひと口、甘くて冷たい麦茶を飲むと、おじいちゃんが「そういえば飛行機の中の機内食はおいしかったのか? 何を選んだんだ?」と聞いてきた。
僕は少しむっとして口を開いた。
「おじいちゃん、聞いてよ。機内食でお肉かお魚か聞かれた時、お母さんが僕のお肉好きを知ってて『お肉を2つお願いします』って頼んだの。そうしたら『どちらかお魚にしていただけませんか』って言われて……。仕方なくお母さんが『じゃあ私は魚で』って譲ったんだけど、僕たちが食べ終わる頃に後ろのおじさんを見たら、普通にお肉を食べてるんだよ!」
「えーっ、そんなこともあるのか」と驚くおじいちゃん。
「そうだよ。親子だからとか子供料金だからってひどいよね。食べたいものを食べさせてよって、お母さんも内心怒ってたんだから」
おばあちゃんが「空港の中はどうだったの? 初めての国際線でしょう」と話題を変えてくれる。
「そうそう、お母さんが言ってた『免税店の香水の匂い』って、お母さんの言う通りデパートの化粧品売り場と同じ匂いだったよ。お母さんは懐かしいって言ってたけど、僕にはちょっときつくて、鼻を押さえながら通り過ぎちゃった」
「あはは、確かにあの匂いは独特ね」と、おばあちゃんが笑う。
おじいちゃんが「子供には飛行機の中で何かプレゼントはあったのか?」と聞くので、「うん! 飛行機の模型か、膨らませるビニール風船みたいなのが選べて、僕は模型にしたんだよ」と答えた。
「でもさ、おもちゃは選ばせてくれるのに、機内食を選ばせてくれなかったのは納得いかないよね」
僕がそう言うと、二人は顔を見合わせて笑った。
異国の空港に着くと、匂いが全然違った。空気が熱くて、むっとする。日本語が一つもない看板、外国語で話す入国管理官。
僕たちがカウンターに立つと、お母さんはスマホの翻訳も使わず、身振り手振りでスタンプをゲットした。すると、管理官のおじさんが、カウンターにあったミントキャンディをなぜか鷲掴みにして僕にくれたんだ。強烈な匂いだったけど、学校で習った通り「サンキュー!」って言った。それを聞いたおばあちゃんも嬉しそうに笑った。
「それで、お父さんとやっと会えるって自動ドアを出たのに……さっき言ったお父さんのやらかしだよ!」
僕がまた思い出しながら怒っていると、二人は苦笑い。
その後、お父さんに連れられてマンションに着いたけれど、日本の作りと全く違って玄関のすぐ先がリビングなのが落ち着かなかった。お父さんには「水道水は絶対飲むな、うがいもダメだ」と言われてびっくりしたし、夕飯に行く前には「トイレは家で済ませろ」と言われる始末。
「ほら、やっぱりね」と、お母さんが一言。
ちょうどそこで夕飯の時間になり、「おばあちゃんも続きを聞きたいから、冒険の話はまたあとで!」と強制終了。続きはまた明日だ。
三陸の夜はまだ始まったばかり。
母子の冒険談は、まだまだ続いていきます。




