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番外編:【送り出す方法は違っても、気持ちは一緒】

お父さんの赴任先の異国の地へ行った後に、おじいちゃんとおばあちゃんのいる三陸へ行くね、とタブレット越しに僕が伝えた。画面の向こうのおじいちゃんは少し寂しげな表情で、おばあちゃんは優しく微笑んでいる。

「おじいちゃん、なんだか疲れてる?」と聞くと、おばあちゃんが「……あ、そうそう。昔住んでいた団地の近くの人がね、亡くなったって連絡があって。あなたも覚えてるかしら」と名前を挙げたが、母はピンとこないようだ。けれど、母は何かを思い出したように、ふと口を開いた。

「ねえ、お母さん。昔、私たちの団地にハワイへ行ったご夫婦がいたでしょう? あの人たちのことかな。私、当時は子供だったからすごく高齢の方だと思っていたけれど、すぐ団地から出て行ったわよね」

するとおじいちゃんが答えた。「定年で、高度成長期に身を粉にして働いた夫婦が、思い切ってハワイへ行ったんだよ。その後、マンションを買って娘さんたちと一緒に暮らすって言って出て行ったなあ」

そんな話から、母は遠い記憶を掘り起こすように言った。

「そういえば、ひいおばあちゃんのお葬式で、すごく不思議な光景を見たのを覚えてるわ。女の人たちが輪になって座って、綱引きの綱みたいに長い数珠を回してたの。珠の一つひとつが拳くらいの大きさで……あれ、夢じゃなかったわよね?」

僕が驚いて「野球ボールくらいの数珠を回すの? そんなの重くないのかな」と聞くと、おばあちゃんが教えてくれた。

「それは『百万遍念仏』っていうのよ。地域の人々が力を合わせて、故人の魂を押し上げるための力強い祈りの形なの。今はもう見かけないけれど、当時は大切な別れの儀式だったのね」

さらに母は、山梨のひいおじいちゃんのお葬式で見た光景も教えてくれた。大きな桶に故人を座らせる『座棺』で、そのまま土に埋める習慣だったこと。参列者が『手甲・脚絆・頭巾』を身につけて葬列を組んだこと。「子供心にすごく怖くて、本当はつけたくなかったのよね」と母は当時を懐かしむ。富士山麓では死者は浄土へ登るという信仰があり、参列者もその旅の供をするかのような儀礼があったのだと、おじいちゃんが優しく解説してくれた。

「地域が違うと、送り出し方もこんなに違うんだわねえ」とおばあちゃんがしみじみと言うと、今度は話題がお盆の話になった。

「去年はあなたも三陸に慣れるのに必死だったけれど、お盆にはキュウリの馬とナスの牛でお迎えするのよ」

おばあちゃんは、送り火をまたぐ風習についても教えてくれた。それは穢れを払い、無事に浄土へ送ったという証であり、家族の団結の印でもあるのだと。

「去年、あなたが送り火をまたいで思いっきり飛び越えていたのを覚えてるわよ」と笑うおばあちゃんに、僕は「意味を知らずにやってたけれど、今年はみんなの話を思い出して、大切に迎えたいと思う」と答えた。

今年の夏、三陸の海風を感じながら、ご先祖様を丁寧に迎えようと思う。

形は違っても、家族を想う気持ちは時代を超えて繋がっているのだから。


山あり谷ありの道ではあるけれど、こうして語り継がれる記憶と共に、僕たちの家族の物語はまだまだ続いていく。



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