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番外編:【僕には信じられない、昭和の運動会事情】

「お母さんたちの時は、高学年になると6年生みんなでピラミッドをやったけれど、下になると小石が膝に食い込んですごく痛かったんだよね。練習の時は、とにかく上になりますようにって神様にお願いしてたのよ」

お母さんは笑いながらそう話すけれど、僕はニュースで見た崩落事故の映像を思い出し、膝に小石が食い込むなんて絶対嫌だとゾッとした。

「お母さん、あれ危ないよ。ニュースでみんな大怪我してるのを見たもん」

僕が言うと、お母さんは「そうね、確かに危なかったわね。でも昔はみんなで一つのことをするのが団結の証みたいな感じで、ある種強制的にやらされていたのよね」と、少し寂しげに言った。

お昼ご飯の話も衝撃的だった。昔は運動会当日、おばあちゃんが朝早くから起きて、重箱いっぱいに家族分のお弁当を作ってくれたという。

「校門の前に並んで場所取りをして、レジャーシートを広げて家族みんなで食べたのよ」

「えーっ、それって今の感覚だとちょっと大変そう。僕たちは今、教室で給食を食べるよ。それに当時の十月だって、日差しが暑すぎて熱中症になっちゃいそうじゃん」

僕がそう言うと、お母さんは「そうね。でも当時は今みたいに異常な暑さじゃなくて、風も空気も爽やかだったから……」と懐かしそうに返した。

さらに驚いたのは、お母さんが住んでいた団地での『地区対抗運動会』の話だ。

「学校とは別に地区の運動会があってね。近所中で色分けして競い合ったのよ。中にはお酒を持ってきて飲んでいるおじさんもいたわね」

「小学校の校庭でお酒を飲むなんて信じられないよ!」

僕は耳を疑ったけれど、お母さんは「ほんとよね、今考えたら信じられないことばかりよね」とぼそっとつぶやいた。

景品の話も時代を感じさせる。

「優勝するとお米十キロとか、洗剤一箱がもらえたの。植物油、あとはトイレットペーパーもあったわねぇ。子供はノートや鉛筆をもらってね。当時は絶対に一位になって、あの景品をもらうんだって気合が入ったものよ」

「もっと今の僕たちが喜びそうなものにすればいいのに」と僕が言うと、「お米十キロなんて、当時の家族にはすごく嬉しかったんだからね」と、お母さんは少しだけムキになっていた。

お母さんの少女時代と、今の僕の時代。運動会一つとっても、何もかもが驚きの連続だ。でも、僕の知らない話はまだまだあるらしい。

「そうそう、昔の運動会はね、徒競走で転ぶと保健室じゃなくて、その場で先生が『赤チン』を塗ってくれたのよ」

「赤チン?」

「そう、昔はそう呼ばれる赤い消毒液があってね。傷口に塗るんだけど、私が怪我をすると、お母さんがそこに赤チンで『お花の絵』を描いてくれたの。それがなんだか嬉しくて、痛いのも忘れちゃったんだよね。あとね、足の裏を鍛えるために、運動会前からみんな裸足になって校庭を歩かされたりもしたわね」

えっ、砂利道を裸足で……?

現代の僕の常識では計り知れない話が、次から次へと溢れ出してくる。僕の知らない昭和の運動会は、想像の斜め上をいく世界みたいだ。


まだまだ、僕の小さな発見は続いていく。

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