番外編:【体操服の謎】
6年生になって、ゴールデンウィークが近づいてきた。クラスにもようやく慣れてきた頃だ。夕ご飯の支度をするお母さんと、何気ない会話を交わした。
「今日、体育で運動会の練習があったんだけどさ。日差しが強くて、もうヘトヘトだよ」
お母さんは手際よくお味噌汁をよそいながら言った。
「昔は運動会って十月十日だったけど、今は暑いものね。五月のこの時期に練習なんて、熱中症には本当に気をつけてね」
「うん。……ねえ、お母さんの子供の頃って、どんな体操服着てたの? 今みたいなハーフパンツ?」
僕が尋ねると、お母さんは懐かしそうに笑った。
「私たちの頃はね、『ちょうちんブルマ』っていうのを履いていたわよ」
「ちょうちん……? 何それ」
「かぼちゃみたいな形をしているの。ほら、あなたが小さい頃に見たことあるかもしれないけれど、絵本に出てくる王様が履いているような、丸く膨らんだズボンってあるでしょう? 裾がゴムでキュッと絞ってある、あんな感じの形よ」
「ええっ、そんなの履いて走ってたの?」
「そうよ! 今のウェアと違って、動き回ると布がふわふわ揺れるの。当時はそれが当たり前だったけれど、今思うとちょっと不思議な形だわよね。……でもね、このちょうちんブルマを履いていたのは女の子だけで、男の子は今と変わらない形の半ズボンを履いていたのよ。当時はなんだかちょっと、ずるいなぁなんて思ったりしたわ」
お母さんが笑いながら当時の様子を話してくれて、僕の頭の中に、丸い体操服で校庭を駆け回る女の子たちと、普通の半ズボンの男の子たちの姿が浮かんだ。
時代が変われば、当たり前もこんなに変わるんだな。大人たちの子供時代の話を聞くたびに、僕の知らない風景が少しずつ広がっていく。
まだまだ、僕の小さな発見は続いていく。




