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番外編:【麦?なに?】

僕は、アイツと仲間たちと遊んで帰ってきた。この三陸の急な坂道も、だいぶ足が慣れて、今では何とか軽快に上り下りできるようになった。

すごく喉が渇いたので、「おばあちゃん、ただいま! 喉乾いた〜」と、いつもの甘い麦茶をおばあちゃんにお願いした。

しばらくして、おばあちゃんが台所から冷えたグラスを持ってきてくれた。

「はい、麦。さあ、早く飲みなさい。暑いからね」

「……麦?」

僕は一瞬、自分の耳を疑った。今の、確かにおばあちゃんは「麦」と言った。聞き間違いかと思ったけれど、おばあちゃんはそのまま何事もなかったかのように台所へ戻ろうとする。

「ねえ、おばあちゃん。今の、なんて言ったの?」

僕が声をかけると、おばあちゃんは足を止めて、不思議そうに振り返った。

「え? 何のこと?」

「だから、その……麦って……」

僕の言葉に、おばあちゃんは少しだけきょとんとした表情を浮かべ、それから「あらやだ」と小さく笑った。目尻のしわが、優しい弧を描く。

「ごめんねぇ。ついつい、大昔の言い方が出ちゃったわ。麦湯……あぁ、今は麦茶って言うのよね。若い頃はみんなそう呼んでいたものだから、つい癖でね」

おばあちゃんは少しだけ恥ずかしそうに頬を染めていた。

僕は黙って、その甘くて冷たい「麦湯」をゆっくりと味わった。今の麦茶とは少し違う、この言葉の響きも一緒に飲み込むような不思議な心地よさが胸に広がった。

おばあちゃんの歴史の一部に触れられた気がして、僕は嬉しくなった。


まだまだ、僕の小さな発見は続いていく。

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