番外編:【二層式洗濯機の冒険と、お父さんの少年時代】
冬休みも終わり、日常が戻ったある日のこと。異国の地で単身赴任をしているお父さんが、ようやく休みをもらって一週間だけ一時帰国することになった。
平日は学校や仕事がある僕たちをよそに、お父さんは久しぶりの日本での生活をのんびりと楽しんでいるようだ。お昼には、異国の地ではなかなか味わえないこってりとしたラーメンや、新鮮なお寿司を毎日食べ歩いている。その贅沢さに少しだけ羨ましくもなるけれど、普段の厳しい環境で忙しく働くお父さんへの、神様からのささやかなご褒美なのだろう。
ある日、家族三人で食卓を囲んでいた時のこと。ふと気になって、お父さんに尋ねてみた。
「ねぇ、お父さんのおじいちゃんとおばあちゃんって下町に住んでたよね? お父さんって下町育ちだと思ってたんだけど」
すると、お父さんは少し懐かしそうに首を横に振った。
「いや、小学校の低学年までは九州にいたんだよ。おじいちゃんの仕事の都合で、それから下町へ引っ越してきたんだ」
どうやら九州での幼い頃、お父さんはかなりのやんちゃ坊主だったらしい。おじいちゃんとの間には、二人だけの秘密がたくさんあったそうだ。
「夜になるとね、おじいちゃんに『行くぞ』って、人目につかない山奥の秘密の場所に連れ出されるんだ。仕掛けておいた鰻を取りに行くためさ」
場所が知られると他の人に獲られてしまうからと、夜更けの真っ暗な道を二人で歩いたという。藪の中は怖かったけれど、おじいちゃんが手際よく仕掛けを引き上げ、中から大物の鰻が現れた時の興奮は、今でも鮮明に覚えているそうだ。
「おじいちゃんは手先がとても器用だったんだ。家の庭にコンクリートで湧水を引き込んで、自家製のプールを作ってくれたこともあった。でも湧水だから真夏でも氷のように冷たくてね。いつの間にか、そこに鯉をたくさん飼っていたな」
そんなお父さんのやんちゃな一面を表す、とんでもない事件もある。
当時主流だった二層式洗濯機に、捕まえてきたザリガニを投げ込み、脱水槽でぐるぐる回してしまったのだ。当然、ザリガニはミンチ状態になり、おばあちゃんに烈火のごとく怒られたという。
「なんでそんなことしたの!」と聞くと、「ザリガニが目を回すかどうか確かめたかったんだ」と真顔で答えるお父さん。……子供の好奇心とは、時として恐ろしいものである。
「今度春休みになったら、お母さんと一緒にお父さんの赴任先へ来ないか? あまり面倒は見てあげられないけど、きっといい経験になると思うぞ」
お父さんがそう言ってくれた。もし行けたら、お父さんがいる異国の地でも、お父さんが過ごした少年時代のようなワクワクする冒険ができるかもしれない。
三陸と九州。距離は遠く離れていても、昔の子供たちはみんな、暗い夜の闇や冷たい川の水の中に、自分だけの冒険を見つけていたんだ。お父さんの話を聞きながら、僕の心も少しだけ、昔の子供たちと同じ冒険の世界へ旅をしたような、不思議な温かさに包まれていた。
家族の物語はまだまだ続きます。次はどんな思い出話が飛び出すかな?楽しみにしていてね!




