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番外編:【新婚旅行のアルバムと、おじいちゃんのやらかし】

おばあちゃんのバケーションの話を聞いた翌日のこと。僕には大事なミッションがあった。明日には東京へ帰らなければいけない。だからどうしても、今日中に見つけ出さなければならないものがあった。それは、おじいちゃんとおばあちゃんの新婚旅行のアルバムだ。

納戸へ向かうと、何かを察したのか、おじいちゃんが慌ててついてきて「何を探してるんだ?」と聞いてくる。素直にアルバムのことを聞くと、おじいちゃんは「そんなもんあったかなあ……」と白ばっくれた。すると、奥からおばあちゃんがやってきて、迷わず一冊のアルバムを取り出した。おじいちゃんの腕をしっかり掴んで、みんなでこたつへと向かう。

テーブルの上にアルバムを置くと、みんなで覗き込み始めた。おじいちゃんは照れ臭いのか、わざとらしく見ないふりをしている。おばあちゃんが語り始めた。

「当時ね、新婚旅行といえば熱海だったのよ。東洋のハワイなんて呼ばれていて、みんなこぞって熱海へ出かけたものよ」

アルバムの1ページ目。そこには、今の尖った顔の新幹線とは違う、丸い顔をした当時の新幹線が写っていた。その前で、少し間を空けて、照れ臭そうな顔をした二人が立っている。おじいちゃんはトレンチコート、おばあちゃんはスーツにベレー帽、そしてハンドバッグ。足元には、キャスターのない頑丈なトランクが置かれている。

「この時はね、お屋敷の奥様が『せっかくの新婚旅行なんだからおしゃれしていかなきゃね』って、全部揃えてくれたのよ」

ホームはラッシュアワーかと思うほどの人だかりだった。

「なんでこんなに混んでるの?」と聞くと、当時は結婚式が終わった後、会社の同僚や親戚みんなが見送りに来るのが定番だったそうだ。当時の白黒写真には、見送りのスーツ姿の男の人たちが大勢写っていた。

出発直前、同僚たちが「新婚さんだ! 胴上げだ!」と担ぎ上げようとしたとき、おばあちゃんは必死で止めたという。「胴上げで落とされて怪我をして、旅行に行けなくなったなんて話を聞いていたから、冷や冷やしたわ」とおばあちゃんは笑った。

次のページをめくると、ほとんどがおばあちゃんのソロショットだ。おじいちゃんが写っているのは、欄干の端で浴衣に茶羽織をまとい、顔をそむけてたたずんでいる奇跡の1枚だけ。

「おじいちゃん、撮るのは好きだけど撮られるのは苦手でね。人に撮ってもらうのが恥ずかしくて、景色ばかり撮ったり私を撮ったりしているうちに、フィルムが切れちゃったのよ」

そういえば、当時はカメラ自体が非常に高価で、誰もが持てるものではなかった。このカメラもお屋敷のご主人が大切にしていたものを、二人の門出のために貸してくれたのだという。それを聞いて、僕は思わずポケットの中のスマホを握った。今の時代なら、一瞬で何十枚でも撮れるのに。フィルムの枚数を気にしながら、シャッターチャンスを逃し、挙句の果てにフィルムが切れるまで二人で写るのを躊躇していたなんて、なんとじれったくて愛おしい失敗だろう。

おばあちゃんの失敗談に、僕は思わず笑ってしまった。高台の旅館から見たという「宝石箱をひっくり返したような熱海の夜景」の話をするおばあちゃんの目は、当時のままキラキラと輝いていた。

新幹線なのに1時間半もかかったというのんびりとした旅路、照れくさくて二人並んだ写真が撮れなかった初々しさ。しっかり者のおじいちゃんが、実はこんなにお茶目だったなんて。お正月の最後に聞いたこの温かい思い出は、僕の胸をいっぱいに満たしてくれた。


家族の物語はまだまだ続きます。次はどんな思い出話が飛び出すかな?楽しみにしていてね!

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