番外編:魔法の箱と三陸の家族② 〜おばあちゃんの魔法の小さな箱〜
タブレットの前に座って、僕の顔を見て話す時間は、おじいちゃんとおばあちゃんにとって何よりの宝物になった。でも、この「魔法の箱」がもたらした変化は、それだけでは終わらなかった。
「もっと、あの子(僕)と自由に話したいわ」
タブレットは、決まった時間に正座して待つ「特別な儀式」のようになっている。おばあちゃんは、もっと手軽に、自分の手元でいつでも僕と話せる手段が欲しくなったのだ。そこで手に入れたのが、高齢者向けの「楽々フォン」だった。
しかし、おばあちゃんにとって初めてのスマホは未知の世界だ。いきなり電話をかけて驚かせてしまわないよう、まずは使い慣れた黒電話から僕へ連絡を入れることにした。
「もしもし、今からその…『スマホ』っていうのにかけるわね。ちゃんと番号は表示されるのかしら?」
「うん、大丈夫だよ。ちゃんと今聞いた番号を『おばあちゃん家』って登録してあるから、出られるよ!」
僕との確認を終え、おばあちゃんは緊張しながら楽々フォンの大きなアイコンをタップした。
数秒後、僕のスマホが鳴った。画面に表示された『おばあちゃん家』の文字。出た瞬間、受話器越しではない、クリアな声が聞こえてきた。
「もしもし?……つながったわ!あの子の声が、こんなに近くで聞こえる!」
おばあちゃんが僕の声を聞いて大喜びしている横で、「俺にも貸せ!俺も話したい!」とおじいちゃんがやきもちを焼いている声も聞こえてくる。その賑やかで微笑ましい光景に、僕は思わず笑みがこぼれた。
さらにこの日、もう一件嬉しいことがあった。
おばあちゃんの熱心な推し活とスマホの便利さを目の当たりにして、アイツの婆ちゃんも「私もやってみたい!」と興味津々になったのだ。それをサポートするために、アイツもついにスマホを持つことになったという。
「あの子もスマホを持ったから、今度電話をかけてあげてね。あの子もきっと喜ぶわ」
おばあちゃんの優しいフォローに、この町が少しずつ、でも確実にデジタルで繋がっていくのを感じた。楽々フォンを手に、おばあちゃんの「文明の旅」は始まったばかりだ。
おじいちゃんとおばあちゃん、そしてアイツたちの日常は、魔法の箱が届けてくれた温もりで、今日も賑やかに続いていく。
家族の小さな物語は、まだまだ番外編として続いていきます。




