表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/60

番外編:おばあちゃんの話 【平和の味がした、魔法のハム】

戦争が終わったばかりの頃。この田舎にもGHQがやってくるという噂が流れ、私は「女の子なら髪の毛を坊主にして隠れていなさい」と大人たちに言われ、ずっと屋内で息を潜めていた。さすがに坊主にはしなかったけれど、戦地から帰らないお父さんの帽子を探し出し、深くかぶって髪を隠し、ただ怯えて過ごしていた。

しかし、私の弟は好奇心に勝てなかったようだ。仲間たちと連れ立って、初めて見る外国の兵士たちをこっそり見に行ったのだ。

しばらくして戻ってきた弟の手には、見たこともない缶詰が握られていた。兵士たちがくれたという、チョコレートと「ハムの缶詰」だった。

初めて見る外国の食べ物。どうやって食べるのかもわからず、お母さんがあれこれと試行錯誤した末に、それを火で焼いてみた。

立ち昇る香ばしい匂い。それは、長年戦火に怯えていた家族にとって、この上ない「平和の香り」だった。

けれど、私はまだ箸をつけられなかった。

あの日、B29の機銃掃射が家を襲った光景が、どうしても忘れられなかったからだ。必死の思いで畳を上げ、その下で震えていた私。家の中にまで戦争の記憶が生々しく残っていて、どうしても食べる気になれなかったのだ。

そんな私を見て、お母さんは毅然と言った。

「たくましくなりなさい。食べられる時には食べなさい。今度いつ食べられるか、なんて誰にもわからないんだから」

そう言って、家族みんなでハムを少しずつ分け合って食べた。

その一口が、私にとっての初めての「ハム」であり、戦争が終わったという確かな安心の証になった。

あの時、お母さんが焼いてくれたハムの味。

当時のお母さんの歳を遥かに超えた今でも、私は忘れることができない。

あれ以来、家族を想って焼くハムには、いつだってその日の祈りを込めている。今、孫までできた私が「祈り」というスパイスをかけてハムを焼くのは、あの時のお母さんから受け継いだ大切な習慣なのだ。


(※この『夏のタイムカプセル(略して夏カプ)』の世界は、番外編としてまだまだ続きます。おじいちゃん・おばあちゃんの家にインターネットをつなぐドタバタ劇や、おじいちゃん視点のエピソードなども執筆予定ですので、引き続きお付き合いいただけると嬉しいです!)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ