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夏のタイムカプセル ―僕と魔法のハムの夏―  作者: Fos B


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番外編:【品川のホテルの思い出と、おじいちゃんとおばあちゃんは健脚、お父さんはヘトヘト? 懐かしの多摩散歩】

昨日は、帰りに品川の駅前にあるホテルの中にある水族館に行った。ここは昔、おばあちゃんの妹の旦那さんが働いていて、コックさんをしていたホテルのグループでよくチケットをもらってスケートに来ていたそうだ。ここの水族館はおじいちゃんもおばあちゃんも、僕たちみんなもとても感動した。そしてその日は、僕たちのマンションに帰っていった。

今日は「今度は多摩ニュータウンに行きたい」とおじいちゃんとおばあちゃんが言い出したので、当然僕も行くと主張した。学校の勉強も大切だけど、家族のルーツを知るのも大切だと大きな声で主張して、お母さんは渋ったけれどお父さんが許してくれた。ありがとう、お父さん。そして多摩ニュータウンへと出かけて行った。

近くのコインパーキングに車を止め、まずはお母さんの思い出の小学校を見るために歩き出す。高層団地が2棟立っていて、下にスーパーや商店街があるところを抜けて、学校の裏から歩いて見に行った。今はセキュリティが厳しいので、小学校へ入って見学はできないから、周りから見ることにした。

小学校自体も山の途中にあって、その後も山が続いているから結構大変だけど、おじいちゃんとおばあちゃんは普段から歩き慣れているので全然大丈夫だ。お父さんの方と言えば、普段から乗り物にばっかり乗っているから、すでに怪しい……。

学校の裏から見ると、ちょうどプールや、田んぼか畑の区画が見えた。

そうするとお母さんが「懐かしいわ。昔、泥だらけになって田んぼで田植えをしたわね。そしてここで、夏休みの宿題用に持って帰った植木鉢の稲を、チャボのビヨビヨに食べられてしまったんだわ」と言った。それを聞いて、おばあちゃんは何かを思い出したのか大笑いした。

お母さんがさらに続ける。

「あの辺に焼き物を焼ける釜があったのよね。図工の先生のこだわりで作ったんだけど、確か…お茶碗みたいなものを作った記憶があるわ」

「そんなすごいものがあったんだね」と僕が言った。

そして、坂をぐんぐん上がっていくと、右手の下のところが「都内の学校でも唯一の土手がある」と言われていた場所だった。

「学校に土手があるって面白いね」と僕が言うと、お母さんは左手の山の上のほうにある建物を指さした。

「お母さんはそこの幼稚園に行ってたのよ。毎日毎日、すごい坂で大変だったわ」

「ほんとに、私も毎日連れて行くのが大変だったのよ」とおばあちゃんが笑う。

しばらく歩くとトンネルが見えてきた。そのトンネルを見て、お母さんが言った。

「そういえば幼稚園の帰りにここでお父さんの知り合いがペンキを塗っていたわよね」

おばあちゃんが「よく覚えてるわねぇ」と感心すると、おじいちゃんが「俺もその話を覚えてるぞ。偶然ってあるんだなぁってびっくりしたんだ」と言った。

トンネルを抜けてしばらく行くと、右手にすごく長い下り階段がある。その横を下まで下っていくと、小学校の全貌が見えた。

お母さんが懐かしそうに言う。

「ほら見て、あそこの土手! 私、あそこで時々クローバーをいっぱい摘んだり、男の子に混じってサワガニや粘土をとって遊んだんだわ」

僕は「学校の土手にサワガニなんていたんだ。すごいね、僕じゃ考えられないや」と驚いた。

一方、お父さんはヒーヒー言いながら階段を降りてきて、言葉を何も発せなかった。

階段を降りて陸橋を渡り、ちょっと行くと左手にまたまたすごい上り階段が見えた。

「ここが神社だよ。俺も頑張って登るから、せっかくだからお参りに行こう」とおじいちゃんが言った。

おばあちゃんも「そうね、せっかく来たんだからお参りしていきたいわ」と言った。

お父さんが顔を引きつらせていたのは、見なかったことにしよう。さすが鍛え方が違うおじいちゃんとおばあちゃんだ。ゆっくりゆっくりだけど登っていって、とうとう上まで上がって神社が見えた。

ちゃんとお参りをして後ろを振り返ると、結構な高さで目の前に団地がいっぱいあるけれど、景色が良い。遠くの百草団地の方まで見渡せた。

この長い階段を登ってきて本当によかった。お母さんが百草団地の方を指差して、

「うちの4畳半の私の部屋の窓からも、少し百草団地が見えてね。なんだか私、お母さんとかお父さんに『ほら見て、アメリカが見える!』ってよく言ってたの覚えてるんだけど」

と笑うと、おばあちゃんが「アメリカに憧れていたからかしらね。ほんとによく言っていたわねぇ」と懐かしそうに教えてくれた。

さらに、おばあちゃんが言った。

「大晦日に家族みんなでここにお参りに毎年来たわね」

すると、お母さんが続ける。

「私、お母さんに髪の毛を洗ってもらったあと、今みたいにドライヤーがないから髪の毛が凍ってたの覚えてるわよ」

「そうだったわ、すごく寒かったのよね。若かったのかしら、無謀だったわね……」とおばあちゃんが笑う。

「寒かったから、無料で甘酒を配っていて、それがおいしかったなぁ」とおじいちゃんが懐かしそうに言った。

お父さんは相変わらず無言だ。やっと息が整ってきたらしい……。

神社の裏を通って中学校を見に行った。その右横に小さな山があった。昔も今もそこのところは変わらず公園みたいに保護されていて、自然がいっぱいだとお母さんが言っていた。中学校も昔と変わってないなぁとつぶやいていた。

「そうそう、さっきの小学校の横だけど、実はあそこは桜並木なのよ。春はすごく綺麗で、中学校の行き帰りに友達と『これが青春だね』ってわけわかんないことを言っていたわね」と、お母さんは目を細めていた。

さすがにお父さんがヘトヘトなので、もう戻ることにした。

帰りに車の中から、おばあちゃんがパートに行っていた会社も見ることができた。

「多摩ニュータウンは本当に夕日が綺麗で、ニュータウン全体がオレンジ色に全部が染まって、何もかも全部隠してくれて、すごくきれいに見えてたのよね」

とお母さんが言うと、おじいちゃんもおばあちゃんも大きくうなずいていた。

おじいちゃんもおばあちゃんもお母さんも、みんな懐かしそうで、うれしそうで、楽しそうだった。僕も、話だけに聞いていたことを実際に目の前で感じることができたので、「今日は学校を休んでも来たかいがあったなぁ」と思った。

僕たち家族の旅は、まだまだ続いていく。

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