番外編:【ビヨビヨはどヨどヨ?】
ある日、三陸のおじいちゃんとおばあちゃんと、画面越しに東京のお母さんと僕とで話していたときのこと。
お母さんがおじいちゃんとおばあちゃんに切り出した。
「昔、団地に住んでいた時に、よくお父さん(僕にとっておじいちゃん)って動物拾ってきたわよね。うさぎとチャボとさ」
それを聞いたおばあちゃんは、「あったわねぇ」と懐かしい顔で話し出す。
おじいちゃん「あの頃の多摩ニュータウンはまだ開発途中で、道を歩いてるとタヌキなんかが結構ちょこちょこ出てきたし、いきなりどこから逃げ出したのか、チャボやウサギが通り過ぎることがよくあったんだよ。かわいそうだから連れて帰ったんだ。交通量が半端ないからね。あの頃の多摩ニュータウンはダンプカーがガンガン走ってて危なかったんだよ」
お母さんが「私、そのウサギもチャボも覚えてるわ。家の団地の近くに管理人さんが当時住んでる棟があって、そこの管理人さんがよく家に怒りに来てたわよね。『動物は飼っちゃいけません!』って。今は比較的みんな猫とか犬とか飼ってるのに、当時は絶対ダメだったのよね。それも管理人さんが近くに住んでていつも見張られてるような気がしたわ……」
おばあちゃんが「そうなのよ。夜中にいきなり満月の中ウサギが逃げ出して困ったことがあったわ。早く見つけないとまた管理人さんに怒られるわって…だけど笑ってはいけないけれど、ウサギがいるって、やっと見つかったらまるで昔話みたいに芝生でウサギがぴょんぴょん月をバックに飛び跳ねてたのよね。思わず笑っちゃったわよ。それにチャボだってオスだったから朝早く鳴くから、ベランダの物置の奥に入れて厚手の毛布をかけてたわよ。外に聞こえないように」と言った。
お母さんは「ウサギやチャボの餌を、週に1回団地に来る大きなトラックで安い野菜を売りに来ていたおじさんのところに行ってもらってきなさいってお母さん(おばあちゃん)が言うから私すごく嫌だったのよね。キャベツの葉っぱの外側とかいらない葉っぱよって私を行かせて…。私、それがすごい恥ずかしくて言えなくてね……」
おばあちゃんが「あら、いらないものをもらってくるんだから、あちらがゴミの処理をしなくて済むんだから恥ずかしさなんかないわよ! それに、ちゃんとチャボやウサギの餌になったんだからね。」
お母さん「それはそうだけど……」と言った。
さらに、お母さんはこんな思い出も語ってくれた。
「私、そのチャボを結構かわいがってて、名前もつけてインコの鳥籠に入れてたのよね。確かに今考えるとかわいそうよね、あんな狭いところに入れられてさ。それで、メモ書きに『ビヨビヨの家』って色とりどりに書いたのに、見る人みんなが『面白い! 名前つけてるねぇ、「どヨどヨ」なんてさ』って言うのよ! 自分の字の汚さに、あの時すっごい落ち込んだんだからね」おばあちゃんが「あら、そうだったの? 全然気づかなかったわぁ。」とのんびり言った。そうするとお母さんは「それに、そのビヨビヨは私が夏休みの宿題で持って帰ってきた鉢に植えた稲の実を全部食べちゃったのよ。観察日記が書けなくなっちゃったんだから!」
それを聞いて、みんなで大笑いした。
話題はさらに広がり、今度はこんな思い出へ。
お母さんが「お父さん(僕にとっては、おじいちゃん)、昔『秘密の場所で拾った』って言って、扇風機くらいの大きさの、ツルツルしたビニールテープとも違うガムテープみたいなぐるぐる巻きのものを拾ってきたことあったよね。粘着はないんだけどさ。それがどのくらいの長さか知りたいからって、5つの階段があって50世帯入っている団地の周りをぐるっと、そのロールを持って回って測ったのよ。そしたら全然余って、団地の周りを1.5周もできるくらいの長さだったの! あれはいったい何だったのかしらね」
おじいちゃん「俺もよくわかんないけど、いろんな資材が捨てられてたから、今でいうと不法投棄だったんじゃないかなぁ? よくわからないけどそこにいっぱいあったんだよ。多分建築資材だったんだろうな。余ったものとか、いらなくなったものをそこに捨ててしまったんだろうなぁ。今だったら大問題だよ。当時の多摩ニュータウンは建築ラッシュだったからさぁ」
お母さん「それでお父さんが『また秘密の場所に連れてってあげる』って言って、あの有名な(アニメ映画)のタヌキが出てくるような奥地の林道みたいなところに車を止めて。それで、そっと上から見たら、ちょっとした池みたいなところがあって、そこに数え切れないくらいの水鳥がいてね。お父さんが『シーッ』って言いながら『内緒だよ』って見せてくれたの。覚えてる?」
おじいちゃんが「あー、そんなこともあったなぁ! あそこももうみんな開発されちゃんだろうなぁ……。今言われてもどこだったんだか全然わからないよ。2人で見たんだから幻ではなかったんだろうけどね。ハハハハ!」
僕が「今だったらインスタに載せてバズるよね。『幻の水鳥の生息地』って」と言うと、
おばあちゃんが「おじいちゃん、私は連れてってくれなかったわね!」と、ちょっとすねた感じに。
おじいちゃんは慌てて、「いろんなところをいっぱい2人で見てきたからいいじゃないか!」と言い訳をしていた。
あのタヌキが出てくる映画のような世界が本当に実在していて、それをリアルにおじいちゃんもおばあちゃんも、そしてお母さんも経験していたんだなぁって、なんかしみじみしちゃった。
2年前の夏から、どんどんどんどん僕のタイムカプセルが増えていって、ますます楽しくなっていく。
まだまだこのお話は続きます




