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「ラガルハーネル様、ただいま戻りました」


 優雅に一礼をして、スカートを摘む。

 と言ってもドレスを着ているわけでは無いから、エスメラルダがやるには異質かもしれないのだけれど。


「おい! 危ないだろう?!」


 てっきり、そうかとでも返ってくると思っていたのだが、結果、返答は罵倒と言う名の私を心配する言葉だった。

 …何故? 私は悪役なのに。


「大丈夫ですわ。屋敷では、いつもリトと訓練していましたから」


「そうではなくてだな……まぁ、終わったことはしょうがないか…だがな、これからは何かする前に僕に相談しろ。行動するのはそれからだ」


「…?…それでは私の行動は何もできなくなってしまいますわ」


「なぜだ」


 一段階、殿下の声が低くなった。

 なにかに、怒ってる?


「それでは私は動くこともできません。…ラガルハーネル様は私を人形にしたいのですか…?」


 お粗末な人形が悪役令嬢にはお似合いって事…?


「ちが…」


「違うのですか…?」


 すると、殿下は一つ、諦めたように大きなため息をつき、私に言った。


「はぁ、エスメラルダは真面目すぎるな…、もう少し肩の力を抜いても良いんだが…。よし、金は集まったしどこか店にでも行くか」


「!……ええ!」


 私達は、とある商家らしい家の屋根に降り立つと、そのままダッと大通りまで走りきる。

 こんな時、エスメラルダは運動神経が良くて良いよね。


 大通りまで出れば、もう心配は無い…筈?

 衛兵にさえ見つからなければ連れ戻される心配もない。

 つまり、じ ゆ う!!


 甘いお菓子や可愛い洋服やお人形、良い匂いのする香水やエレガレントな帽子屋さん。

 町中の全てが集まったようなこの道は、活気に溢れ、人々の笑顔で満ちている。

 さっきのことが、まるで嘘だったように。


 私達は、目に入ったシックでおしゃれなカフェで休憩を取ることにした。

 勿論フードはかぶったままなのだが、これはちゃんと店員さんに許可をもらったのことだ。

 多めにチップを渡せば逆に嬉しがる程度のことだろう。


「ラガルハーネルは何をお飲みになられますか?」


「ぼくは…そうだな…ニルギリのレモンティーだな。エスメラルダは?」


「私は…そうですわね…ディンブラのレモンティーで、お茶請けにフルーツを頼もうと思います」


「なら僕もお茶請けはフルーツにするか」


「少し、運動した後なので、それが一番だと思いますわ」


 運動、とにごしたのは、勿論魔法を使った事。

 魔法は体力を使う。

 良く、某漫画などで魔法を使い過ぎたものが倒れてしまう…なんて描写が良くあるが、ここ《プラネット》では、そう言う現象がよく起こる。

 ヒロインの姫巫女…アカリ様のイベントで、たしかテーマス様ルートだったと思うけど…。

 姫巫女が…回復魔法を使い過ぎて倒れてしまった彼女をテーマス様が連れ帰り、看病するという…て、言うかテーマス様ルートへのインorバックがかかったイベントだった気がする…。


 フルーツにはビタミンが豊富だし、体にも良いだろう。

 それに、ニルギリにもディンブラにも合うし。


 注文をして、すぐに紅茶もお茶請けも用意される。

 本日のフルーツ盛り合わせは、林檎と蜜柑、梨の蜂蜜がけだそうだ。

 この季節のフルーツは、酸味が強いため、このくらいがちょうど良いのだそう。

 その代わり、レモンティーに入れる角砂糖を少なめにする。


 ディンブラは少し苦味があるため、レモンティーで飲むのが一般的だ。

 ミルクティーでも美味しいが、やっぱり私はレモンティーの方が好きである。


「うん…ちゃんと淹れてあるな。うまい」


「はい…硬水…ですね。ちゃんと一から淹れてあります。砂糖もちゃんと白いですし」


「この店はあたりか。…でもこれで商売になるのか?」


 殿下の言葉に私は伝票をみる。


「えっと…値段は……え?」


「どうした?」


「き、金貨60枚だそうです…」


「は?」


「金貨60枚だそうです…ラガルハーネル様」


 金貨60枚。

 土地によれば家でも買えそうな値段だ。

 ぼったくりめ。


 カジノで稼いできたから足りるものの、危ないところだった。


「…ラガルハーネル様、出ましょう。紅茶も…何が入っているかわかりません」


「…少量の麻薬が混じっている。慣らされているとは言え、飲まない方がいいだろうな」


「そうですね」


 私達は、ティーカップを置くと立ち上がる。

 レジの下にナイフを持った黒服の男が一人。

 こんな格好の私達を入れたのは…金を払えなかったら奴隷にでもするつもりだったのだろう。

 外道めが。


「お会計は金貨70枚です」


 …は?

 計算もできないと思ってるのか?


「…金貨60枚のはずですが」


「……失礼いたしましたー! 金貨60枚でございます」


 受付嬢が困惑している。

 本当に馬鹿にして……後でこの店は潰そう。

 それから…奴隷にされた人たちを助けなくっちゃいけないし…。


 じゃら、と金貨が入った袋を殿下が受付嬢に投げつける。


「お釣りはいらないから。…あんまり悪いことすると、痛い目見るよ?」


 …それからこんな事を言っていた。

 私に読心術は使えないので、読唇術だが、だいたいあってると思う。

 …怒ってるし。

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