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…今更ですが、昔と今のエスメラルダが別人ですね…。
一応、自分的には、エスメラルダがエスメラルダである事を受け入れてきて、エスメラルダを演じるのをやめたって感じにしたかったんですが…。
あと、殿下とリトとその他攻略キャラによるエスメラルダの取り合いを描きたいのに、話が進むのが遅すぎて、なかなか攻略キャラ達が揃わない…。
うー、頑張ります。
うー、緊張する。
楽しもう、と思っていたけれど、やっぱり緊張はするものだ。
私と殿下は、今、会場のドアの前で待機している。
私は緊張で演技が崩れそうなのに、殿下はそんな素振り一つも見せない。
私は手をギュッとにぎりしめて、震えないように、時間の経過を待つ。
「…エスメラルダ?」
そんな私の様子に気がついたのか、殿下が私に話しかけてきた。
でも、ごめんなさい。
いま、そんな余裕ありません…。
「…っ」
すると、殿下は私が握りしめていたてをやんわりほどき始めた。
「でーー」
「大丈夫だ。怖がることなんか、何も無い。たとえ、この先、どんな苦難があろうとも…君だけは命に代えても守ってみせるから」
すると、パッパラパー と、トランペットの音がなり、ドアが開いた。
「王子殿下ラガルハーネル様とその御婚約者様である公爵令嬢エスメラルダ様が到着いたしました!!」
…なんか仰々しい。
先ほどの静けさが嘘のように大量の音と光に満ち溢れている。
差し出された殿下の手を取り、微笑みながら会場にある指定位置まで歩く。
清く、正しく、美しく。
なのに、さっきの殿下のせいで顔が火照る。
手をつないでいることもあって余計に。
…バレて、無いよね?
指定された場所、そこに居たのは、やはり、殿下の両親である王と王妃様。
「本日は、お招きいただき、誠に有難うございます」
頭を垂れ、ドレスの裾を掴まない、特別な歩き方で王と王妃殿下の元へ向かう。
「二人とも、面を上げよ」
「「はっ!」」
「今日は、存分に楽しんで行ってくださいね。わたくし達はあなた達の成長を楽しみにしていますからね」
つまり、ダンスは完璧にしろ、と。
「勿体無いお言葉です」
動揺したのをポーカーフェイスで隠して、優雅に笑う。
「では、楽しんできなさい」
「「はっ」」
…私への質問の方が多かった。
噂とか…あのお二方の耳にも入ってるのかしら…。
多分…知ってる、わ、ね。
「エスメラルダ、ダンスがはじまる。踊るぞ」
「! 喜んで」
少し…恥ずかしい。
まだ、殿下とちゃんとダンスを踊ったことはないから。
下手くそだと思われたらどうしよう。
ワルツが流れ出す。
バイオリン、ビオラ、コントラバスの三つの弦楽器とピアノから溢れ出すハーモニー。
流れてきた曲は、比較的、簡単な曲だったので、適当に、綺麗に見えるように踊る。
ただ淡々と曲は流れていき、いよいよ終わりだと思った時だった。
殿下の、ラガルハーネル様のリードが急に変わった。
今までは、規定のルーティン通りだったのに、途中でアスロスを入れてきた。
「ら、ラガルハーネル様!」
「良いから合わせろ。リードはする」
すると、急に難しい技が入り始める。
通常のターンだったのに、ヒールターン、そのままヒンジ、そして、本当に曲が終わろうとしているところでチェックバック。
曲が完全に止まったところで、私たちはパッと手を離し、殿下はそのまま礼を、私はターンをしてから礼をする。
すると、徐々に拍手が始まり、最終的には、多大な歓声と拍手となって、私たちを祝福し始めた。
入学式の時の、機械的な拍手ではない、本当の、心からそう願って行った拍手。
少し…嬉しいかも。
「エスメラルダ、やって良かっただろう?」
「はい! ラガルハーネル様はダンスがお上手なのでごさいますね」
「ダンスは母が得意なのでな…仕込まれたんだ」
どこか、憂いに満ちた顔で、殿下がそう答える。
…どんなレッスンだったんだろう。
「でも…凄いですわ。私なんて付いて行くのに精一杯で…。それに、付いて行けたのもラガルハーネル様のリードがとても上手だったからですし」
本当にそうだ。
殿下のあのリードが無ければ、私は今、ホールで盛大にこけているか、もしくは殿下の足を踏みつけてしまっていただろう。
「エスメラルダも上手かったぞ」
「恐れ入ります」
褒められるって慣れてないから、なんだかムズムズする。
なんていうんだろう……こう…何処かもどかしいような…なんて言うの…?
「次も踊ろうか」
「はい。喜んで」
私はニコッと笑いながら殿下の手を取る。
だが、次に流れ出したのは難易度の高いテンポの速い曲だった。
「わっ」
「おっと」
テンポの速いクローズド・チェンジで、転びそうになってしまった私を、殿下がパッと支えてくれた。
「あ、ありがとうございます…」
「いや、それよりこちらのリードが甘かった。すまない」
は、恥ずかしい…。
変な声…出てなかったかな…。
ナチュラルターン、オープンインピタスアンドウイング、ステップ(シャッセ)を踏んでからのオーバースウェイ。
ナチュラル・スピンターン、バックウイスク。
シャッセ、シャッセ、シャッセ。
面して、オープン・テレマーク・アンド・クロスヘジテーション。
もう一度ナチュラルターンをして、曲が止まった。
ちなみに私達はまだ婚約者の立場であるので、二回以上は踊れない。
結婚すれば何回でも踊れるが、他人とは一回しか踊れない。
それが、パーティー…いや、社交界のルール。
だけど…。
「殿下!!」
「エスメラルダ様!!」
私たちがダンスをし終わったのを見越して、だんだんと人が集まってきた。
主に、女性。
私となら学友に、殿下となら、あわよくば側室…もしかしたら正妻を狙って要るのかもしれない。
……あれ? アカリ様は?
適当に会話を中断して、アカリ様を探す。
そこまで広いパーティー会場ではないので、ベランダや外に出ていない限り、すぐに見つかるはずだ。
…いた。
白とピンクを基調とした、フリル満点のドレスを身にまとったアカリ様は、端の方でスコーンを食べながら、ジッと動かずにパーティーの様子を眺めていた。
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