第02話 旅立ち
「六大国家」を巡るに辺りマキナ達はそれぞれの都市の基礎情報を洗いだした。
墓の前から移動し、
「政府」御用達の図書館を巡り、
してその中から資料をかき集めた形だ。
今、マキナ達三人はある宿屋のベッドの上に腰かけたりしながらも情報を整理していた。
まずは国家について
「国家」
それぞれマキナが作り出したAI、
「使徒」達が貴族として治める土地の総称。
基本的に残骸という前文明の遺産の元で栄えている。
それぞれ特産品や生産物が分かれており、交易や貿易を行ってそれぞれがそれぞれなりに支え合っている。
というようにそれぞれが支え合う相互補完の関係にある土地の総称を国家というようだ。
六大国家についても以下の通りであるとマキナは振り返る。
「六大国家」
「国家」の主権国家であり現在残骸の街のような「政府」をも超えた権限を持つ。
人類を統べる人類協定の常任理事国。
主に人類協定の結ばれた国家で形成されており、それそれが莫大な富と権力、軍事力を持つ。
それぞれが「剣の国家」「盾の国家」「▇の国家」・・・などと名前がありそれぞれ名前通りの特徴をした残骸と軍を持つ。
「▇の国家」
Fという使徒が治めている元国家であり▇の中にあるとされる土地の総称。
死者が辿りつく場所と言われ「勇者」の一人とも言われる使徒Aの生まれ故郷として機械や人を中心に信仰されている宗教、「機械教会」の司教が統治していた宗教国家が在った大地である。
「魔王」の残党に滅ぼされた唯一の国家である
かつては信仰上での理由で国際情勢を静観する事が多く、
各国からは薄っすらと嫌煙されておりかつ、使徒Fが管理する前は使徒Aが住んでいたという経歴を持つ特異な土地である。
不可思議な場所であり、信仰を中心に行動をする為争いは以外に多い。
今は三つの国が一つの大地で覇権を争っているようだ
「銃の国家」
使徒Aが治めていた国であり今は使徒BとCが二人で収めている土地。
「銃」の残骸の元に建国された人類協定の在る永世中立国家、
立地は国家間の中央にありながらも大地は痩せ、雨は降らず食糧的な自給自足が困難であるにも関わらず。常任理事国の中でも随一の生産力と軍事力を持つ。
「盾の国家」
使徒Bが収めている土地であり立地条件上強大な防衛力と生産力を持つ国。
「盾」の残骸の元に建国されたというその経緯通り国防に優れており、ここ200年は他国の侵略を許した事は無い。
資源が豊富であり土地も気候も良いため各国家に狙われている。
「剣の国家」
使徒cが治めている土地であり最も使徒が住む土地。
「剣」の残骸の元に建国されながらも避暑地であるという特性上観光客が多く、重要文化遺産登録された遺跡などが「国家」の内で最も多い国。
その割には歴史が浅く、すぐにクーデターが起こり政権が変わる。
「弓の国家」
使徒Dが治めている国家であり宇宙に居を構える。
「弓」の残骸の元に建国された国家、
人類最高峰の科学力と軍事力を持つ。
資源を外に依存している為、何かと幅を利かせずらい物の何か思惑が在る怪しい国
「毒の国家」
使徒Eが治めている国家であり海の中に居を構える。
「毒」の残骸の元に建国された国家、
軍事国家であり独裁国家である事から、諸外国から恐れられている毒霧に覆われた常任理事国。
毒霧に覆われかつ、資源は略奪に依存しながらも豊富であり、圧倒的な侵略国家として名を馳せている。
・・などなど「六大国家」についての調べられた基礎情報はこれが全てである。
「随分と長かったなー、我が言葉ながら半分聞いて無かったぞ。」
「自分の言葉なのにどうやって聞かない振りが出来るんだい、君は。」
軽口を叩くマキナにけれどシャーロックはそう返した。
パイプを吹かしながらのその返答に、
「どの口で言ってるんだ。」と考えながらもマキナはベッドの上にうつ伏せの状態で寝転がって足をパタパタ動かしながら言葉を重ねる。
「重要なのは次行く街だろ、
次はどこ行くの?
「█」の国家は殆ど滅んでるっぽいから無いにしても、やっぱり剣や盾の国家?」
「銃の国家だね。永世中立国家であるあそこなら、難民に等しい私達も職や住処が貰えるかも知れない。」
「ナイ神父の元を離れてから、晴れて娼婦卒業ですか。晴れ晴れとした気分ですね」
ジョーリアの安堵しきった言葉にけれどマキナは「ははは。」と快活に笑う。
マキナは記憶喪失中、
セクサロイドとしての業務を一切行わなかった。
元々客を殆ど取らなくても良かったが故に心理的な貞操は守られていたのだ。
けれど、だからこそマキナにはあの三日間のジョーリアの苦悩が理解出来た。
当然だ、毎晩泣きながらもマキナのベッドに潜り込んでくるのだ。
最初は、何だ何だと考え無かった訳でもないマキナであっても
そのジョーリアの異常な態度とすやすやと眠る寝顔を見てマキナの心は揺れていた。
どうして機械であるマキナに心があるのかマキナは分からない。
けれどきっと、マキナは目の前の無防備に寝顔を晒す金髪金眼の少女を見捨てられる理由を持ち合わせていなかった。
「だからさ、ジョーリア。
俺はアンタが昔の職業を捨て去れる事が出来るのを見て本当に嬉しいんだよ。」
「アンタは良くやった。これからはもっと自分の体と心を労わりな。」
「・・・・・・・・」
そう言って足をパタパタさせながらもマキナはジョーリアの顔をも見ずに言った。
一見ぶっきらぼうで冷たいその仕草は、しかし声質を聞けば印象が変わる。
隠しきれない愛情の籠ったその声をASM型人工知能であるマキナが発したのだ。
その事実に何処か感慨深い視線を送った相棒シャーロックをしかしマキナは見て、脚を止めごろりと転がってベッドの縁に手を掛け、立ち上がる。
振り返ってこう言った。
「さて、まだ共有出来てない情報はあるか、二人共。」
「有る。」
「有りますね。」
二人の言葉に思わず目を点にするマキナである。
よもやここまで綺麗に自分が仲間外れにされているとは考え無かったのだ。
記憶喪失してから最大のショックを味わいつつけれどマキナは言った。
「教えて、何の情報を共有したいの。」と単純に二人を見据えて情報の共有を願った形である。
けれど容赦もなくシャーロックはパイプを逆様にし灰皿にコンコンと打った後、こう言った。
「まずは朝食でも食べないか。」
という言葉と共にマキナの腹の虫がぐ~と鳴った。
記憶喪失中、初めての恥の掻き方だった。
□
宿屋の朝食はバイキング形式であった。
和食、洋食、中華など大まかに分けて三種類の食べ物から自由に選び取るのだ。
存外に多いこの形式の朝食についてけれどマキナはうーんと頭を捻る事も無く、
手っ取り早く食べ物を選んでいく。
そうして席につけばただ一人席についていたシャーロックは驚きに目を開いた。
「まさか、骨付き肉なんていう王道の食べ物を選ぶとは・・
君は少年漫画の主人公になれる素質があるのかも知れないな。あるいはただの大馬鹿者か」
「そう言うシャーロックはイギリス風の顔立ちの癖に和食じゃん。
言ってる事とやってる事が矛盾してるんだがー、
「あんたは極東漫画の主人公か!」って突っ込まれても何も言えないじゃないか?」
主食と汁物とおかずの三種類に分けられたこのバイキング形式の朝食の選択肢は数えきれない。
当然だが、誰が何を選ぶかは自由である。
シャーロックは一汁一菜の和食、
マキナは山盛りの骨付き肉、
ジョーリアはモーニング風の洋食朝ごはん、
などなど個性溢れる選択であった。
「私はクソする必要ないからともかくジョーリアはモーニング風の洋食朝ごはんにしてたよ。
あんなに食べて体は大丈夫かな、
またダイエット・・なんていう感じに運動しすぎて無理をさせなければ良いけど。」
「ああ、彼女の朝食は機械である君と遜色ないレベルで多いからね、太るだろう。」
「・・・・恋する乙女に対してそれは無いんじゃないですかね。シャーロックさん。」
ジョーリアの言葉にしかしマキナは驚いた。
目を見開いてみたのはけれどマキナの骨付き肉の山にも勝るとも劣らない
皿に乗せられたモーニング風洋食朝ごはんそのものを見たが故だった。
「オフトリ様の間違いではないかね、ジョーリア嬢。」
マキナとジョーリアの二人の拳がシャーロックの頭に刺さった。
□
マキナ達三人は朝食を食べながらも情報の交換を行った。
「六大国家」についての考察、
大統領率いる「政府」の動向について
ナイ神父一派の動向などなど
それぞれが集めた情報を朝の会話以上に交換したのだ。
これにより多くの事柄が決定した。
まず何処の国家に行くのかについて完全に決定された
「「銃の国家」か、まぁ残当だな。
あそこは永世中立国家である以上にこの「残骸の街」から最も近い位置にある。
「残骸の街」がそもそも「銃の国家」の真下にある地下空間にあるんだ、それも仕方ない。」
「え、ここって地下だったのか・・どういう事教えて、シャーロック。」
思わずマキナの喉からそんな声が漏れた。
しかしそれも仕方ない。
マキナは一般常識以外の記憶が軒並み全滅していた。
記憶喪失が故に殆どの事柄を忘れてしまったのだ
マキナが相棒に言われた言葉はこうだった
この場所は「地下自治区」なのだと
偽物の空に覆われた地下にあるここはしかし大まかに二つに分かれていた。
物流の拠点である「昼の街」と、
性産業の店が並ぶ「夜の街」と、
この二つに分かれていたのだ、
街の中央にある夜の街はしかしマキナ達が今いる宿屋とは別の場所にあった。
郊外にある「昼の街」にマキナ達はナイ神父に殺されたセクサロイドや娼婦達の墓を作り、
近場にある宿を取っていたのだ。
比較的格安なこの場所にしかしマキナ達三人は泊まっていた。
窓から見える大半が大破しならも垂直に刺さった駆逐艦を横目に見るマキナに対してシャーロックは言葉を紡ぐ。
「・・・・という感じだよ。文章の接続はおかしかったかも知れないが、問題無いかね。相棒」
「問題ない、シャーロック。
大体分かった、
しかしまさかここが偽物の空に覆われてるなんてな、
俺の中に残る一般常識と比べても殆ど同じだぞ、この街の空は」
「「地下自治区」ですよ、マキナ、ここはそう呼ばれています。」
「ああ、そうだったね、ジョーリア。」という納得の言葉がマキナから漏れた。
仕方ない、マキナとて情報量の多さに脳味噌がパンクしそうなのだ。
もっともASM型人工知能であるマキナにそんな物があるかは知らないがともかく本当に情報量が多かった。
「本当に驚きだ、空が「偽物の空」に過ぎだないなんて、
これは夜の街の皆や、
昼の街のまだ見ぬアイツらも知ってるんだよな、シャーロック?」
「まあ、君はいつも超然としていたからな、
常識を知らなくても無理は無いが。
しかしこれは「夜の街」で働く者であろうと知る事実。少々物を知らな過ぎないか?相棒」
「問題ないじゃないですか、シャーロックさん。マキナにも完璧じゃない所があるって分かって私は嬉しいですよ」
ジョーリアのその言葉にマキナはしかし言葉を返さない。
少しだけ膨れっ面を作ってけれどその後にマキナは微笑んだ。
「ハハハ。」と自然な笑みで笑んだ。
その後にマキナは言葉を返す。
「確かに私は記憶喪失中で、自身の名前の由来すら朧気にしか知らない。」
「けど、私は本気でナイ神父を殺す、いいや殺したい。そうして「星の智慧」の皆の仇を取りたいんだ。」
「そこだけはシャーロックもジョーリアも分かって欲しい。」
真剣な表情でマキナはまるで機械のようにそう言った。
その瞳にはどうしても堪え切れない慕情が、
そして濁り切った憎しみの混ざった、機械のような笑みがあった。
そうしてマキナ達三人は朝食を食べ終えた後、
宿を出て、「夜の街」の中央区、
政府の在る駆逐艦の「残骸」の真下の場所を目指して旅立った。
機械仕掛けのようなゼンマイの瞳、その白瞳が三度ガチャリと噛み合った。
ナイ神父の「計画」通りに




