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王道ルート拒否!~転生やりこみゲーマーはメインストーリーを避けて通りたい~  作者: 藤原キリオ


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05:夜霧の梟を壊滅せよ



 幽霊屋敷を出た俺はその足で南東部の貧民街へとやってきた。街の規模がそれほど大きくはないのでスラムとまでは言えないが、十分にそれっぽい雰囲気はある。

 長屋のような住居が並び、道は狭く、ゴミは散乱している。

 死んでいるのか寝ているのか分からないような人が道端で倒れ、それを違和感とも思えない雰囲気がその一角にはあった。


 貧民街の奥に似つかわしくない石造りの建屋があった。

 木造住宅ばかりの貧民街にあって異様な、商店サイズの建物だ。

 入口にはいかにもチンピラですとでも言うような屈強な男が二人立っている。もうすぐ夜が明ける時間帯だというのにご苦労なことだ。


 ここが本日の最終目的地。【ベレッサの街】探索のゴール地点である。


 正直【幽霊屋敷】をゴールにしたい気持ちがあった。

 しかし目的は金策だ。あのお宝群はたしかに売れば大金に化けるが、さすがにもったいないし、高級品すぎて売りづらい。

 少なくとも【ベレッサの街】で売れば目立つだろう。できればもっと大都市で売りたいものだ。



 というわけで別の金策先はないかと考えた結果、選ばれたのがここである。

 クエスト名【『夜霧の梟』を壊滅せよ】。

 つまりこの建屋は『夜霧の梟』という闇組織のアジトである。


 これもまたメインストーリーを進めた先に発生するサブクエストで、【ベレッサ】住人である依頼人のチェーンクエストを熟していくか、王都の騎士団や暗殺者ギルドでも、ある時期から受注できるクエストである。

 悪事を働いていた闇組織の壊滅が命題なのだが、その組織の本拠地が『はじまりの街』にあるというめんどくささ。

 メインストーリーを進めていたプレイヤーにとっては、せっかく王都まで行ったのに引き返すことが前提となっているクエスト。正直人気はない。


 じゃあ王都に行く前に終わらせようと【ベレッサ】のチェーンクエストを進めてもメインストーリーが進まないとクエスト自体が発生しないし、出来るだけ早期に熟そうと思っても『夜霧の梟』の連中がそこそこ強い。

 適正レベルでメインストーリーを進めていたプレイヤーにはちょっと荷が重いのだ。だからこそ余計に後回しになり、その分【ベレッサ】から離れてしまう。全くもって厭らしいクエストである。



 ところが開始初日にアジトに乗り込もうとしている俺。現実世界様様である。


 もちろん普通に考えれば無謀な挑戦だ。仮に不可侵領域に入れるとしてもLv1で乗り込む場所ではない。

 俺だって死にたくはない。だからこそ「どうにかできないか」と考え、先に【幽霊屋敷】をクリアしたのだ。

 【梟のアジト】を攻略するために必要なアイテムを【幽霊屋敷】で揃えたというわけだな。


=====

 ・長栄樹の杖 ・闇紫のローブ ・耐呪の腕輪

 ・暗月の短剣 ・<ナイトビジョン>の書

=====


 改めて、これが【幽霊屋敷】のお宝だが、杖とローブは【スカウト】だと装備できないので無視する。将来的にいい金になればいいなぁという感じだ。

 【耐呪の腕輪】は一応装備しておくが、<状態異常:呪い>にしてくるような敵は相当先にならないと出てこない。

 従って今は付ける意味もないのだが、何のアクセサリも装備していないし、だったらとりあえず装備しておこう、というくらい。


 残りの二つが重要だ。まず【<ナイトビジョン>の書】。

 これは<ナイトビジョン>のスキルを覚えることができるアイテム。

 スキルの効果はいわゆる『暗視』だ。暗闇でも視界が良好となるスキルで、【幽霊屋敷】の探索にも大いに役立った。

 【スカウト】のLv15で覚えるスキルでもあるが、先に取得できるのならそれに越したことはない。このおかげで今も周囲の景色は鮮明に見えている。


 そして【暗月の短剣】だ。これが一番欲しかった。


=====

 暗月の短剣:STR+42、闇属性付与、<ナイトフォッグLv3>使用可能

=====


 ゲームの中盤までこれ一本で行けるほどの性能である。

 ちなみに【ビギナーナイフ】は【STR+4】だ。比べるのも烏滸がましい。

 <ナイトフォッグ>は黒い霧を周囲に発生させるスキルで【アサシン】が覚えるものだ。【スカウト】の身で使えるというのも大きい。

 アンデッドや闇属性の敵に対して有効でないというのがデメリットだが、それを忍てでも使う価値はある。


 というわけで右手に【暗月の短剣】を装備し、【梟のアジト】に乗り込む。

 まずは入口に立っている見張りの二名からだ。

 <ハイド>で近づき、<ナイトフォッグ>で視界を奪い、<アサシンエッジ>で背後から首筋に刺す。

「な、なんだ!?」と多少は騒いだが問題はないだろう。クリティカルが乗ったこともあり一撃ずつで仕留めることができた。


 いくら見張りが下っ端とは言えレベルは20前後もある。本来、Lv1の【スカウト】が勝てる相手ではない。

 それを覆せるのが【暗月の短剣】であり、スキルだ。

 <アサシンエッジ>はふいうち特攻。相手に気付かれていない状態であれば、そして鎧などに阻まれなければ、確実にクリティカルが出る。これは俺の経験則も含む。

 STR+42の【暗月の短剣】がクリティカルで入れば、Lv20前後の敵ですら一撃だ。そう確信していたからこそ【梟のアジト】に攻め込んでいるわけだが。



 問題は「人殺しをして俺の精神状態は大丈夫か」というところだった。

 しかしどうやら大丈夫らしい。ゲームで散々斃した相手だからだろうか、現実世界となった今でも「よっしゃ! 敵を斃したぜ!」という能天気な感情を持っている。

 自分のことながら異常だと思わざるを得ない。できれば人として堕ちるような真似はしたくないものだ。(もう遅い)


 とは言え、闇組織の人間や盗賊、犯罪者が『討伐推奨』されているのも確かである。【AG】(アーク・ジェネシス)の世界観的な話で。

 だからこそクエストも【『夜霧の梟』を壊滅せよ】となっているのだ。

「全員を捕縛しろ」と言っているわけではない。「皆殺しにしろ」という意味である。


 まぁそんな物騒な世界だからこそ、俺の指針として『生き延びる』というのが入っているわけだ。

 そして、やはり生き延びるためには戦闘力が必要だなと痛感している現在である。



 見張りの死体をインベントリに仕舞った俺は、石造りの建屋へと忍び込んだ。もちろん常に<ハイド>している。

 建屋自体は平屋だが、中には地下へと続く階段があり、その先に【梟のアジト】が広がっているという構造だ。

 全体で見れば貴族のお屋敷くらいの広さがある。地上の建屋からは考えられないほど広い。なるほど力のある闇組織の本拠地だと思った次第だ。


 俺の記憶ではおそらく三十二人の構成員がいるはず。もしかしたら出払っているヤツがいるかもしれないが、ゲーム内では三十二人だった。

 その七割以上がLv20前後の下っ端だ。見張りと同程度のヤツらが溢れている。

 幹部っぽい六人がLv30前後、そして残った二人が問題だ。


 【夜霧の梟】頭領、【夜霧のベルゲッツィ】【アサシン】【Lv45】。

 副頭領、【剛腕のダンドーン】【アベンジャー】【Lv41】。

 二つ名付きのユニークキャラである。


 【暗月の短剣】+<アサシンエッジ>のコンボでも一撃で斃すのは不可能。

 一撃で斃せないということは二撃目以降『ふいうち』とはならず、<アサシンエッジ>は機能しなくなる。

 まぁそれ以前に『ふいうち』の一撃目を入れられるかという問題があるのだが、おそらく厳しいだろうなと思っている。


 ダンドーンはともかく、ベルゲッツィは一流の【アサシン】だ。

 <エネミーサーチ>は高レベルだし、他にも斥候系スキルを多く持っている。下手したらすでに俺の存在に気付いているかもしれない。

 ゲームではある程度侵入するまで気付かれることはなかったが、現実世界となって色々と変わっている可能性もある。居場所が違うとかな。

 慣れた襲撃とはいえ用心しておくに越したことはない。俺だって好き好んで危ない橋を渡りたくはないのだ。

 だからこそ慎重に慎重を重ねて、俺は探索を開始した。



 ……が、驚き、困惑もした。



(は? 寝てるじゃねえかよ!)



 ゲームの時は昼だろうが夜だろうが、アジトに侵入すれば常に構成員全員が起きていた。アジト内の部屋を巡り、数人ずつ斃していって、最終的には奥の広間みたいな場所で八人と戦闘になるのだ。

 正確な時間は分からないが、おそらく今は深夜の三時頃。

 確かに寝ていてもおかしくはないが……闇組織って夜のほうが活発に動いてそうじゃね? というのが困惑の原因である。


 とは言え、安全に殲滅できるのであればそれに越したことはない。

 俺は気持ちを切り替え、寝込みを襲って下っ端構成員を次々に始末していく。

 我ながら非道な行いだとも思うが、殲滅目的で侵入しているのだから起きていようが寝ていようが同じことだ。


 いくら<ハイド>を使っても部屋に入るために扉を開ければ気付かれるもの。

 そうなれば『ふいうち』は成立せず<アサシンエッジ>もクリティカルにならない。

 しかし敵が寝ているのなら確定である。好都合以外の何物でもなかった。


 そうして俺は<エネミーサーチ>を使いつつ近場の部屋から順々に殲滅していった。

 問題はスキルを使いまくっているので「MPが保つか?」というところだったが、そこは現地調達である。

 幾人かの構成員がMPポーションをドロップするのは知っていたし、部屋を漁れば備品も手に入る。なにせここはアジトで、部屋は構成員の私室なのだから。装備や鞄が置いていないわけがない。



「なんだ!? 敵襲か!? 敵襲―! 敵襲―!!」



 半分ほど斃したところでどうやら気付いたヤツがいたらしい。別の部屋から声が上がった。

 俺は<ハイド>を継続し、なるべく姿を見せないよう潜みながら、迅速に狩ることにした。

 <エネミーサーチ>でまだ寝ていそうな部屋に侵入し、速攻で斃す。

 起きていそうなヤツは背後から『ふいうち』を狙う。そうして徐々にアジトの奥へと目指していった。


 広間へと辿り着く前にヤツらは現れた。頭領・副頭領・幹部六人の計八人。

 やはりゲームのように広間で待ち受けているという展開ではないらしい。武器を手に、走ってくる様子が窺えた。

 もう俺の事も索敵済みだろう。『ふいうち』は使えないと思ったほうがいい。



「誰だ、貴様は!!」

「ここがどこだか分かってんのか!? ああん!?」

「【夜霧の梟】嘗めてんじゃねえぞ!!」



 最初に迫って来たのは幹部三人だった。後続は少し離れている。

 ならば三人だけでも先に斃そうと、俺は<ナイトフォッグ>を使用。通路は黒い霧で満たされた。

 <エネミーサーチ>や<ナイトビジョン>を持っている可能性は高い。それでもやれることはやろうと思ったのだ。

『ふいうち』できればそれに越したことはない。一撃で仕留められれば多少の余裕をもって後続と当たれる。


 幹部三人は霧の中、まっすぐ俺に向かってきた。やはり甘い希望だったらしい。

 仕方なしにインベントリからあるもの(・・・・)を取り出し、足元に置いた。もちろん<ハイド><ナイトフォッグ>は継続している。



「うおっ! なんだこれ!」

「いつのまにこんなものを!? 邪魔だ、クソっ!」



 それはソファーだった。元は高級品だったであろうボロボロのソファーだ。

 通路を塞ぐように置かれたそれに幹部たちは突っ込み、それで転ぶ者もいれば足を止められる者もいた。

 その隙をついて、俺は<アサシンエッジ><クロスエッジ>を使った。『ふいうち』とはならなかったかもしれない。Lv30前後あるのは分かっているし<アサシンエッジ>だけで斃せるとも思っていない。だから最初から追撃するつもりだった。


 <ナイトビジョン>を持っていなければ黒い霧の中でソファーに気付くことはできない。<エネミーサーチ>で無機物は察知できないのだから。

 仮に<ナイトビジョン>を持っていても、通路にいきなりソファーが出て来れば焦るだろう。俺がマジックバッグを使っている様子もないのだから。


 ちなみにこのソファーは【幽霊屋敷】で手に入れたものだ。他にも色々と持ってきている。

 さすがに壺で叩きつけるのはどれほどのダメージになるのか分からなかったので、大きめの家具で障害物を作ろうと思ったのだ。

 お宝だけでなく、資材調達のために先に【幽霊屋敷】を終わらせたと言っても過言ではない。


 ともかく三人を斃した俺は後続を見据え、死体を仕舞って、他にも家具を並べた。もうこの通路で戦おうと決める。

 もちろん<ナイトフォッグ>と<ハイド>は継続している。

 黒い霧の中、俺はインベントリから色々と取り出し、通路を塞ごうとしていた。



「何やってんだコラァ!!」



 やはり<ナイトビジョン>を使っているのだろう。残りの五人がまとめて襲い掛かってくる。

 先頭は【剛腕のダンドーン】だ。いかにも力自慢といった巨躯で、障害物をはねのけるように迫ってくる。

 俺は後ろに引きつつ、<ナイトフォッグ>を切らさないでインベントリからバラバラと通路にばら撒いていった。


 そうして全員がソファーを乗り越えたところで、インベントリから取り出した【爆火石】を投げつけた。

 【ベレッサの街】で拾ったものだ。それをダンドーンの足元に投げつける。

 爆発を起こす投擲アイテムだが所詮は『はじまりの街』で手に入る雑魚用だ。ダメージは期待できない。



「チッ! こんなもんでビビるとでも思ってんの――うおっ!!!」



 爆火石は起爆用(・・・)だ。

 本命は家具を乗り越えた先にバラ撒いたいくつもの致死トラップ(・・・・・・)

 それは【幽霊屋敷】の玄関ホールに設置されていた数々の罠だった。


 <ナイトビジョン>さえ使えれば、罠を触らずにインベントリに収納することも可能だ。手を近づけるだけでいい。

 もっとも罠の種類によってはそんなことはできないのだが、【幽霊屋敷】に設置されていたのはいわゆる地雷系。スイッチを踏まなければ起動しない。

 ゲームでは相応のスキルがないと罠の解除などできなかったが、試してみたらインベントリに収納できたのだ。だからこそ【夜霧の梟】のアジト襲撃に勝算が持てたというところである。


 罠を起動させるために投擲アイテムを使うというのはゲームでもありふれた手だった。

 そしてそれは今、実証された。


 いくつもの罠が一斉に起爆し、通路は爆音と爆発に包まれる。

 俺はなるべく下がるよう後ろ向きに走り、最終的には柱の影に隠れたが、それでもダメージを受けるほどだ。目はチカチカするし耳鳴りはひどい。

 数秒経ってから確認しないわけにはいかないと<エネミーサーチ><ナイトビジョン>を使いつつ、通路に顔を出した。



「うわぁ……さすが【幽霊屋敷】のトラップだな……」



 石造りの通路は、その一帯だけボロボロになっていた。天井も崩れ、横たわる構成員たちの上に落ちている。

 当然のようにソファーなどもない。跡形もなく吹き飛んだのだろう。

 それでも【夜霧のベルゲッツィ】【剛腕のダンドーン】の二人は生きていた。気絶の上、瀕死状態ではあるものの、さすが高レベルのユニークキャラである。



「悪いな。俺の糧になってくれ。<スターバースト>!!」



 念の為、今できる最高のスキルでとどめを刺した。

 達成感もあるがどっと疲れが出る。しかしまだ終わりではない。


 ――さて、アジトの掃除を始めようか。





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