表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王道ルート拒否!~転生やりこみゲーマーはメインストーリーを避けて通りたい~  作者: 藤原キリオ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/52

44:ツールアンテの街、灰狼団殲滅



 二千年前の【人魔大戦】。

 人間界を救ったのは六人の英傑だった。


 英雄 エディラント

 剣聖 フォルン

 城塞 ウォレンズ

 賢者 マーグリット

 聖女 クロスノーツ

 弓聖 リンダカラー


 彼らは戦いのあと、一線からは身を引き、故郷へと戻ってからは国から賞されつつそれぞれの余生を過ごした。


 フォルンは武国の君主となり、民にも『武』による力を求めた。

 ウォレンズは帝国の騎士団に属し、精鋭を集めた帝国騎士団を作り上げた。

 マーグリッドは人里離れたところで魔法の研究に没頭した。

 クロスノーツは聖王国の象徴的な存在となり崇められた。

 リンダカラーはエルフの里へと戻り、それ以降、人の世に出てくることはなかった。


 そして英雄エディラントは――どこかに消え、その行方を知る者はいない。





「じゃあこれから向かうのは賢者の研究所ということか?」


「マーグリッドはリッツエルデ王国の北部、山の中に研究所とは言えないほどの一大研究施設を作ってそこに籠っていたらしい。だが王国とのやりとりも続いていた。まぁ王国側が放っておけなかったんだろうな」


「それはそうですよ。救国の英雄が自国にいるわけですからね」



 だから王国はマーグリッドを称え、魔法使いを尊重するような政策をとり始めた。今も王都にある魔法学院はその名残だ。

 そしてマーグリッドの死後、その研究施設を保護する意味で、近くに街を築いた。

 もともとその研究施設は大きな湖を望むような景観の良い場所に建てられていた。マーグリッドの趣味だろうけどな。

 街は湖に隣接するよう築かれ、今では保養地として国有数の観光スポットとなっている。


 【湖畔の街マグルリーチ】――そこがリッツエルデ王国における目的地だ。


 正確には【マグルリーチ】に向かう前に【橋の街ストンブリッジ】を経由するし、【マグルリーチ】に行ってからの【賢者マーグリッドの遺跡】が最終目的地なわけだが。



 俺たちの旅程としてネフィリアとフライヤの強化のため【エルフの隠れ里】と【イーステッド武国】に行くのは決まっている。最優先で動くべきだと思っている。

 リッツエルデ王国はただの通り道だ。

 だからこそ【ストンブリッジ】より南下して王都を目指すようなこともしないし、余計な寄り道はするつもりもない。


 しかしリッツエルデ王国に来ておいて【賢者マーグリッドの遺跡】に行かないというのはありえない。

 ましてや魔法職であるカリンがメインパーティーにいるのだから。

 ついでに言えば【エルフの隠れ里】に行くためにも【賢者マーグリッドの遺跡】を訪れる必要がある。時間を割いてでも行く価値があるということだ。



 ……という話を、【ツールアンテの街】を南下しながら話している。


 朝一に【ダンブレッドの街】を出て、国境を渡り、【ツールアンテの街】に入って、そのまま抜けた。

 新しい街に来たのにアイテムも拾わず、サブクエも熟さず、掘り出し物も探さずにただ通り過ぎるというのは俺の矜持に反するのだが、それでも早くに出るべきだと思ったのだ。


 やはり【ダンブレッドの街】で強盗殺人したのはやりすぎな気がする。いくら相手が悪人とは言え。いくらそれがサブクエとは言え。

 やったあとで何を今さらと自分でも思っているので何も言うことはないが、それでも足早に離れたくなってしまったのだ。


 だから【ツールアンテの街】から【橋の街ストンブリッジ】に行くのに馬車も使っていない。

 足がつくのを恐れたのだ。なんと弱い心だろう。俺はまだこの世界にアジャストしていないのかもしれない。



 だが歩きで街を出た理由はもう一つある。

 【ツールアンテ】南の山中に盗賊団のアジトがあるのだ。

 本当にこの世界は盗賊だとか闇組織だとかが多い。物騒な世の中だ。


 ゲーム的に明確な敵を作ることでサブクエの目標としやすいとか色々な理由があるとは思うのだが、現実世界的に考えれば悪人が力と金を得やすい環境でもあるのだろう。

 実際、こうした盗賊団のアジトは大きな街の近くに多い。金と荷物を運ぶ商人が集まるので、それを狙いにしやすい……という世界観を加味した配置なのではないだろうか。



 クエスト名【行商人は大変だ】。

 【ツールアンテ】の商業ギルドで受けられるサブクエストで、依頼人の商人は【ストンブリッジ】から【ツールアンテ】に来る途中で盗賊に襲われたらしい。

 荷物を捨て、命からがら逃げてきたが、その荷物がないと商売にならずこのままだと破産だ……というわけで盗賊団を壊滅させるといういつもの流れだな。


 盗賊団の名前は【灰狼団】。頭領は【灰狼のボルディオ】【ローグLv46】。

 地味に【砂鼠団】や【夜霧の梟】より若干強い。ただ人数は二十人程度と他の組織より少ないな。

 下っ端がLv25前後、幹部がLv36程度。中盤に入っていることを考えれば妥当な難易度と言えるだろう。


 例によって依頼は受けないので報酬はない。

 ただ盗賊団のアジトで手に入れないといけないアイテムがあるのと、根城にしている廃村が元は鉱山採掘のための村だったということで、近くに廃坑がある。

 廃坑は言わば天然のダンジョンだ。ちょっと潜って採掘するのも手だろう。金にもなるし、もしかしたら装備に使えるかもしれない。



「Lv46か。【ダンブレッド】でLv40五人を相手にしたがあれは参考にならんからなぁ」


「今の私たちがLv15ですよね。正直不安ですけど」


「できれば魔物相手にレベル上げしてから挑みたいですね」


「一応それも加味している。どうせアジトまでは街道から山道に入って行くんだ。魔物も出るだろうし、監視役の盗賊だって斃しながら行かなきゃいけない」


「それでどこまで伸びるかってとこだな」


「別にそんなに心配してないけどな。頭領はレベル高いけど所詮【ローグ】だからな。他にも【シーフ】だとか【スカウト】ばかりだし、幹部に一人【アサシン】がいるくらいだから」



 いわゆる「戦闘に強い戦闘職」じゃないんだよな。遠距離もほぼないし。

 一方こちらはバランスのいい冒険者パーティーだからぶつかりあったら間違いなく有利になる。

 敵がふいうちを狙って来ても俺とネフィリアの<エネミーサーチ>はLv8だからな。索敵で負けなければ不意を突かれることもない。

 だから俺としては楽観視しているのだが、彼女たちの気持ちも分かるので多少はレベルアップを図ってから臨むことにする。



 街道を歩きまずは山道へと続く分岐点を目指して歩いていたわけだが、やはり街道を監視するための下っ端がいたらしい。

 ここで目を付けた行商人を狙い、馬車ごと奪って廃村に持っていくのだろう。

 だからアジトまではある程度ちゃんとした道になっているのだ。馬車が通れるほどの道幅の山道が。


 俺とネフィリアは敵より先にその存在に気付き、即座に攻撃をしかけた。

 ネフィリアが<パラライズシュート>放つと同時に俺が即座に距離を詰める。

 かすってくれればOKというつもりで射たせたが、さすがに距離がありすぎたのか避けられてしまった。だが敵が慌てている隙に俺はすでに近づいていた。

 レベルは俺が下。おそらくステータスも現時点では劣っている。だが俺にはスキルがある。



「<ナイトメアスロー>」



 毒・睡眠・混乱・石化・麻痺・魅了をランダム付与する投擲Lv20で覚えるスキルだ。

 確率や相手のREG・LUKステータスに左右されるスキルだが今回は運良く『混乱』を引いたらしい。

 逃げることさえままならなくなった盗賊は、そのまま俺の攻撃をもろに受けることになった。それで終わりである。

 死体をインベントリに収納したところでみんなが俺に追いついてきた。



「おお、もう終わったか」


「所詮は下っ端だからな。おそらくアジトに行くまでの山道でも監視役の下っ端はいるだろう。まさか一人だけに任せているとも思えないしな」


「ジェイルとネフィリアに任せるしかねえな。あたしの<エネミーサーチ>はまだそこまでの精度じゃねえし」



 フライヤは【ハイブレイドLv5】の時点で<エネミーサーチ>を覚えている。だがスキルを育てている最中だからな。カンストまでの道のりは長い。


 俺たちはそれから山道へと入る。両脇は草原からやがて森になる。

 細く緩やかな上り坂は踏み固められているものの、馬車の轍が残っている。

 視界が広いわけではないが森の中の戦闘など慣れたものだ。

 と言っても出会う敵は魔物ばかりだったが順調に俺たちは歩みを進めた。



 どうやら監視役は街道沿いにいた一人だけだったらしい。

 合計で二十人程度しかいない盗賊団だからだろうか。監視を軽視しすぎだろ。ともかく俺たちは何の障害もなく廃村へと到着したのだ。


 元は鉱山採掘員のための村だったというそこは、まだ立派に村の(てい)を成していた。

 人気(ひとけ)があり、農作業をして、竈の煙が上っているというわけではないので『生活感のある村』という感じはしないのだが、崩れた家が並んでいるわけでもなく、家々はそのまま形を保っていた。


 俺のゲーム知識だとここは「鉱山から採れる量が減ったところで魔物が住みつき始めたので廃鉱・廃村となった」とテキスト上の説明があった。【灰狼団】はそのまま利用する形で住みつき始めたのだろう。


 外から見る村の様子は寂れた寒村という印象。

 だが村の入口には見張りのように盗賊の下っ端が座り込んでいた。

 衛兵のように真面目に立っているわけではない。いかにも「上から命じられたのでとりあえずここにいます」と言っているような姿勢と態度だった。



「は? 冒険者か? 何しに来やがったてめえら」



 いかにも「邪魔者がきた」みたいな顔付きで凄んできた。

 特に何も言うことはない。何を聞く必要もない。俺はそのまま<トリプルスロー>を盗賊の顔面に叩きつけて終わりだ。

 俺のステータスもまだ低く、投擲武器の攻撃力も高くはない。それでも急所に当たれば一撃で殺せる。


 これはゲームではありえなかったことだ。攻撃をどこに当てようとそのダメージは計算式によって出されるもの。

 しかし現実世界の今では「柔いところを狙えば弱い武器でも傷を負わせられる」し、血を流させれば失血死もありうる。

 投げナイフなどの投擲武器でも目に撃てば一撃死だ。いくらレベルを上げても目を鍛えることなどできないのだから。そこら辺が現実世界の便利なところでもあり、怖いところでもある。



 俺たちは堂々と廃村に足を踏み入れた。

 たまたま外に出ていた盗賊が入口に異変に気付き騒ぎ始めた。

 村の中央に着いた頃には【灰狼団】が勢揃いし俺たちを出迎えている。



「おい、てめえら、どういうつもりで来やがった! ただの冒険者じゃねえよな! どこの回しモンだ!」



 先頭でそう言うのは【灰狼のボルディオ】。頭領が逃げ出さずにいてくれて良かったな。

 敵から見れば俺たち六人は「普通の冒険者パーティー」だろう。人数と装備から見える編成は賊にも衛兵にも見えないはずだ。

 だが乗り込んで来る意図が分からない。まさかたった六人で盗賊団を殲滅しに来たなど思わないだろう。自分たちの強さは自分たちがよく知っているのだから。


 そりゃ【ローグLv46】なんて明らかな強者だからな。自分に刃を向けるヤツの存在が信じられないだろう。

 しかし俺はお前たち以上にお前たちの力を知っているんだよ。

 その上で斃せると思って乗り込んできたんだ。だから俺は口を開く。



「【灰狼のボルディオ】、お前らに苦しめられた人たちが多いもんでな。その報いを受けてくれ」


「てめえ、俺の名を……!? ふざけんじゃねえぞ! てめえらやっちまえ!!」


「「おおお!!」」



 残りの盗賊たちが一気呵成に襲い掛かってくる。

 弓使いが二人いるが残りは短剣か剣だ。盗賊団なんだからそういうものだよな。


 それに対し、俺たちはまずカリンとネフィリアが先制。



「<グランドファイア>! <ウィンドランス>!」

「<アローレイン>! <トリプルシュート>!」



 広範囲攻撃と後衛狙いの連続。

 【ウィザード】は【マジシャン】の上位職だが覚える魔法は「【マジシャン】の時に選択しなかった四属性魔法」だ。

 カリンは風属性を選択し、今は火属性と風属性の二属性魔法使いとなっている。

 現在【ウィザードLv16】なので【マジシャンLv15】で覚えた<ファイアランス>の風版、<ウィンドランス>を使えるわけだな。もちろん【マジシャン】の時に覚えたスキル(魔法)は平行して使える。


 ネフィリアは最初こそ得意の弓で後衛を狙ったが、弓使いを仕留めてからは武器を鞭に持ち替えた。

 <スウィープウィップ>で薙ぎ払いつつ、<ルートバインド>で遠くの敵の自由を奪う。

 後者は【ドルイド】のスキル(魔法)だな。【ドルイド】は精霊術士という感じなのだが、攻撃・回復・バフ・デバフを広く使える職業(ジョブ)だ。器用貧乏とも言う。


 ゲームではエルフ限定の職業(ジョブ)で、それが故に貴重な存在だった。

 なにせエルフを仲間にしようと思ったらユニーク以外だと、エルフの隠れ里でクリエイトキャラを作るか、リッツエルデ王国の冒険者ギルドに極低確率で登場するモブを仲間にするしかなかったのだから。


 おまけにその頃はすでにシュトローゼル王国で作ったクリエイトキャラもユニークキャラに鞍替えさせている時期だ。今さらクリエイトキャラを作ることなど早々ないし、モブをスカウトするなど以ての外である。

 必然的に仲間にするエルフはユニークキャラだけになりがちなのだ。中には「亜人縛りプレイ」みたいなことをするプレイヤーもいるのだが。


 ひるむ盗賊たち。そこに俺たちは当たっていく。



「<マジックアップ>! <ホーリーライト>!」

「<スウィープストライク>!」

「<バトルスタンス>! <スウィープソード>!」

「<トルプルスロー>!」



 エリザが杖スキルと【プリースト】スキルを。フゥガがメイススキルを。フライヤが【ハイブレイド】スキルと刀スキルを。そして俺は投擲スキルを使っていく。

 もうみんな、雰囲気や気配で分かっているのだろう。これは苦戦する相手ではないと。

 新しいスキルや武器を試しつつ、熟練度稼ぎをしているような攻撃は、最近よく見る彼女たちの戦い方だ。


 もうこれが普通(・・)だと、慣れたんだよな。

 盗賊たちは短剣や剣を振りかざしてただ向かって来るだけだ。近接の通常攻撃ならば恐れることなどないとばかりに、みんなはスキルを多用して圧倒していた。

 俺は盗賊に攻撃を入れながらも【灰狼のボルディオ】を注視していた。逃がすわけにはいかないからな。

 と言うか下っ端であろうと逃がすつもりはない。【灰狼団】は今ここで潰れてもらおう。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ