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王道ルート拒否!~転生やりこみゲーマーはメインストーリーを避けて通りたい~  作者: 藤原キリオ


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43/52

41:アディエラ山林稼ぎ



 以前にも言ったが、【AG】(アーク・ジェネシス)を普通にプレイして序盤・中盤・終盤に分けるとすると、1:7:2くらいの割合になる。

 王都のイベント……『王都騒乱』は結局起きなかったが一応終わった扱いなので、そこからは中盤に入ったと認識している。


 全体の七割を占める中盤は、「プレイヤーの好きに遊んで下さい!」という感じだ。

 チュートリアルのスタートからして自由度を求められる【AG】(アーク・ジェネシス)ではあるが、中盤に入ると自由度の幅が広がるなんてもんじゃない。

 逆にルート化しないと不安になるレベルだ。だからみんなwikiに群がることになる。


 終盤はもう最終決戦が魔王と戦うという一択なので、結局はそこに集束した旅路になるのだが、そこに辿り着くまでの中盤の旅路は本当に人それぞれ。

 誰を仲間にするのか。どの国に行くのか。どんな職業(ジョブ)に就けるのか。どんな装備をさせるのか。

 そしてその為にどんなイベントを熟すのか。それによってメインストーリーさえも分岐する。



 俺の中ではすでにある程度のルートは決めている。

 決めないと動けないし、その為に今から動くべきことも多いからだ。


 具体的には、シュトローゼル王国から南東へと抜けて【リッツエルデ王国】へと行き、そこから北東の【モルデリア大森林】へと行ってから【イーステッド武国】に行くまでは確定している。

 そこから【ヴェナト海王国】か【ボイルーツ共和国】に行って、シュトローゼル王国に戻り、北進して【エイリーン聖王国】で最終決戦……というのが考えている旅程だ。



 となると「【エルフの隠れ里】に行くまでにネフィリアはこれくらい育てておかないと」だとか、「武国に行くまでにフライヤはこのくらい強くなってないと」と計算が必要になるのだ。

 その為にはステータスを見つつ、レベル上げや熟練度稼ぎを行って、適宜転職する……ということが必須なわけだが、<ディテクト>の宝玉がなければステータスを確認できないという現実世界の弱点が俺の邪魔をしている。


 どうにかできないものかと色々考えたが、結論としては「受け入れるしかない」ということだ。

 それがこの世界の常識であり、だからこそ人類は伸び悩んでいる現状なのだとは思うが、だからと言ってどうにかできるものでもない。

 貴族ルートであれば如何様にもできたとは思うが、戦うこと、冒険者ルートに入ることを自ら望んだのであればこれ以上高望みはできない。世界に順応するしかないと、半ば諦めている状態である。


 とは言え、出来る限り効率良く強化を図りたいし、その為に頻繁に聖教会に通っているわけだ。毎回大金を出して<ディテクト>の宝玉を使っている。渋々だが。

 それはこれからも変わらないだろうし、だからこそ金も貯めたいし、なるべく街のそばで活動したいと思っている。



「――が、【アディエラ山林】でレベル上げしても確認できるのは一日分離れた【ダンブレッドの街】なんだよな」


「【アディエラ山林】に一番近い宿場町では聖教会もないだろうしな」


「じゃあどうするんだ? ちょっと狩ったら【ダンブレッド】に行って、また山林に行ってって繰り返すのか?」


「それはさすがに効率が悪すぎる。だからもうある程度、無駄が出るのは割り切って、余計に狩ってしてしまおうかと思っている。レベルはカンストしてもスキル熟練度は上げられるわけだしな」



 一番早くレベルがカンストするのはLv45の俺だ。

 しかしLv50になった段階で【ダンブレッド】に行って転職して、また山林に行ってレベル上げする……というのはやらない。

 俺に限れば効率は良いのだろうが、結局五人はステータスを確認できないからな。どう足掻いても非効率になる。


 だったら俺がLv50になっても、そこからは「経験値は無駄になるけど熟練度は稼げる」と割り切ってレベル上げを継続したほうが、結果的にかかる時間は短くなるはずだ。

 問題は切り上げ時だろう。

 例えばLv36のエリザがLv50になるまでやるのか。Lv50になったとして俺がどうやってそれを把握できるのか。それは何とも言えない。


 その辺は感覚に頼るしかない。ほとんど勘で計ることになるだろう。

 本当なら計算機を叩きつつ「あと〇〇でレベルが上がるからあの魔物を何体斃せば――」とやるべきなのだろうが、【AG】(アーク・ジェネシス)ではその方法がとれないのだ。


 ゴブリンだって【ゴブリンLv1】と【ゴブリンLv20】では取得経験値が違う。

 これから行く【アディエラ山林】だって【スナイプモンキーLv38】もいれば【スナイプモンキーLv41】もいる。

 見た目で判別などできないし、それができるのはそれこそ<ディテクト>持ちだけだ。まぁ貴族が魔物を看破するなんて、それこそ最終決戦やイベントの時に限られるのだが。



 そんなわけで、大体は俺が勘で判断するが、いずれにしても無駄が出るようなやり方でレベル上げを行う。

 といった話を馬車の中でしつつ、王都を出てから三日目、俺たちは【ダンブレッドの街】直前の宿場町に到着した。


 翌朝、馬車が南下していくのを無視して俺たちは西へと歩みを進める。

 目指す場所はすでに見えている。緑に囲まれた歪な山。そこから広がる木々は森林と呼べるほどの規模ではないものの、平野部にまで浸食し、一見すると危険そうには見えない爽やかささえ感じた。



 そこが【アディエラ山林】――王国南部で有数の危険地帯である。



 標高はそれほど高くないが広く盛り上がった山という印象を受ける。

 上るのも楽そう。見た目は緑豊かな山。だというのに冒険者ギルドではAランク推奨となっているらしい。


 それもそのはずで、wikiによると【アディエラ山林】の難易度は三段階に分かれており、麓の時点で推奨Lv40、山の中腹までは推奨Lv50、山頂付近になると推奨Lv60となるのだ。

 【ヴォンヘーデンの森】も浅層で推奨Lv40だったから同じようなものなのだが、改めて自分の実家がどれほど危険地帯にあったのかと思い知らされた。あんなトコに村建てんじゃないよ。



「多分だけど林に入った瞬間からいきなり魔物が強くなるからな。警戒しておけよ?」


「「「はいっ」」」


「ジェイル、武器はどうする? 熟練度上げを優先させるのか?」


「とりあえずは主武器で。余裕がありそうなら熟練度上げにシフトして欲しいけど、まずはここに慣れるのが先決だ」


「マジックバッグを使った換装にも慣れないといけないな。ジェイルのように上手くはなかなかできん」


「俺の場合はマジックバッグじゃなくてインベントリだからな。換装のしやすさは比べ物にならないだろうよ」



 予定では林の入口にテントを張り、朝から晩まで狩りをするつもりだ。

 一応三日を予定しているがそれでどこまで稼げるか。

 出来れば安全性を考慮して麓までにしておきたいところだが……まぁやってみての様子かな。


 そうして始まったレベル上げ重視の狩り。

 林の中での戦闘というのはみんな慣れている部分もあるのだが、どうしても難しいと感じる。

 陣を布くのも武器を振るうのも難しい。索敵も全方位必要だし、集中力がガリガリ削れる。



 麓の魔物はLv40前後なのだがほとんど単一では出てこない。複数か、悪い時には二つの群れが同時に襲ってきたりもする。

 そうなるともう地下水路で戦った改造魔物三体より難易度は高いのだ。

 それが戦いにくい林の中で四方から襲い掛かってくるのだから尚更タチが悪い。


 地面からはモグラ、木の上からはサル、時々トリも飛んでくる。

 もちろん地面を走ってくる魔物もいるのだが、ヤマネコやバッタモドキなど小柄で素早い魔物ばかり。

「生態系はどうなってんだよ!」と言いたくなるようなラインナップである。


 エンカウントも異常に多い気がする。

 レベル上げの観点で見れば助かるのだが、とても喜んでなどいられない。とにかく忙しいし集中力を切らせない。

 冒険者が間引くようなことがないのかもしれないな。Aランク推奨だから。

 だから飽和状態の魔物が「餌がやってきたぞ」とばかりに襲って来る。



「MPがなくなったらとりあえずMPポーションで凌いでくれ! 周囲の魔物を殲滅したら休憩するからそれまで辛抱だ!」


「「「はいっ!」」」


「カリン! 火魔法の扱いには注意しろよ! 火事になっても消せないぞ!」


「了解ですっ!」



 火魔法は四属性の中で一番強いのだけどこういう時は不便なんだよな。

 人気はあるけど風や水のほうが実用性はあったりする。もちろん現実世界となったからこそそう思うのだが。



 そんな感じでじりじりと進みつつ、魔物を対処しつつ、俺たちは前進を続けた。

 最初こそ魔物の強さに戸惑っていた部分もあるが、次第に慣れていく。

 レベルも装備も一応適正ではあるのだ。となると苦戦していた要因は経験や慣れになるわけで、時間が経つごとに戦闘が楽になっていくのを俺だけじゃなく六人全員が実感していた。


 すでにフゥガは剣からメイスに変え、熟練度上げを意識している。元々攻撃を意識した戦い方じゃないからな。メイスで十分と考えたのだろう。

 カリンは杖で魔法を放ったり、慣れることを前提で鞭を試したりもしている。

 俺は投擲と短剣を併用している。魔物の数が多ければ短剣を使う感じだ。



 昼頃には山の麓に到着した。が、ここに休憩所などない。テントを張って食事をとることもできない。

 仕方なしに立って警戒を続けたまま屋台で買った串焼きを食べた。

 食べられるだけマシだろう。インベントリ様様である。


 山のエリアに入ると推奨Lv50と一段階難易度が上がる。

 だから山登りはするつもりがなかったのだが、みんなの様子を見るに、もう少し強い魔物が相手でも大丈夫かな? という気もしたので、今日のところはこのエリアぎりぎりの所で狩りを継続することにした。


 今まで戦ったLv40前後の魔物。山方面からはLv50の魔物。どちらも対処する形だ。

 しかし少し戦っただけで後悔した。麓と山で魔物の種類が異なるから余計に難しくなるのだ。

 Lv40前後のサル五体と戦っている時に、山からLv50のハイコボルトが三体襲ってきた時は本当に焦った。

 退きながら全力でスキルを使ってなんとか一体ずつ斃せたが、退いているうちにまた別の群れに襲われるんじゃないかと冷や汗をかいた。


 結局それからは山から少し離れ、林の魔物を中心に戦うことにした。さすがに安全性重視になる。

 夕方まで戦って、林の入口まで戻ってきた時は誰からともなく大きく息を吐いた。

 平野であることがこんなにも安心できるとは。これもまた経験、教訓である。


 テントを張って、食事をとりながら改めて話し合いをする。



「ちなみに俺のレベルは49だ。一日でこれだけ上がるってのはさすが【アディエラ山林】だな。明日には確実にカンストするぞ」


「となると私たちも47か48くらいにはなっているのか。徐々に戦いやすくなっていたのはそのせいか?」


「慣れもあるでしょう。一日中ずっと戦い続けていましたからね」


「ダンジョンより遭遇率が高いとかとんでもない狩り場だな、ここは」


「明日はもっと減っているのではないでしょうか。今日これだけ間引きしたのですから」


「ジェイルさん、明日はどうするです?」


「今日と同じでもいいんだが魔物の数が減っているようなら山に再チャレンジかな。行ってみての様子だけど、やっぱり数多く戦える機会というのは大きい。レベル上げにしても熟練度稼ぎにしても」



 おそらく明日、同じように戦い続ければ五人は職業(ジョブ)レベルがカンストする。

 ただここまで上がるようならエリザも一緒に転職させてしまいたい。

 王都の時点でLv36。おそらく今はLv43~44くらいじゃないだろうか。

 だとすればあと二日でカンストするはずだ。やはり予定通り、計三日の修行期間としよう。


 その日はそんな話を共有して、テントで眠った。

 明日もまた厳しい戦いが続く。嫌な顔もせず付き合ってくれるみんなを、俺は頼もしく感じていた。





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