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王道ルート拒否!~転生やりこみゲーマーはメインストーリーを避けて通りたい~  作者: 藤原キリオ


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38:閃ノ雷鳴



 翌日、俺たちは六人で王都を出た。

 排出口に行く時に通った森へと入り、そこで分別することにする。


 が、森へと入った途端、俺の<エネミーサーチ>は何者かの気配を察知した。

 背後から付けてきているヤツが一人。おそらく<ハイド>を使っているがLv8ではないのだろう。俺の<エネミーサーチLv8>のほうが上だ。



 考えられるのは三つ。

 一つは【穴倉の蝙蝠】の残党が俺たちに復讐しようと狙っている……が、おそらくこれはない。

 【穴倉の蝙蝠】に【アサシン】などいなかったし、【スカウト】か【ハンター】にしてもそれほど優秀なヤツはいなかったはずだ。

 よって【穴倉の蝙蝠】ではないと結論付ける。


 二つ目は暗殺者ギルドの誰か。

 昨日【穴倉の蝙蝠】が壊滅したことを受けて、俺たちに辿り着き、調査しようとしている。

 暗殺者ギルドからすれば敵か味方か分からないだろうからな。いきなり暗殺は狙わずまずは調べるといったところ。


 三つ目は国の暗部の可能性。

 ゲーム内にそんなヤツらは出てこなかったが、いて当然だとも思っている。

 仮に国の命だとすれば、フルアデス関係の犯人探しか。それに加えて昨日【穴倉の蝙蝠】を斃したのでそれも絡めて俺たちに当たりをつけた……ってところだろうな。



 さてどうしたものか。

 俺は悩んだ末に、接触してみることにした。

 背後に振り返って、大声で呼んでみる。



「おーい、そこで隠れているヤツ。暗殺者ギルドか? だったらブリメアに伝えてもらいたいことがあるんだが、ちょっと来てくれないか?」


「…………」


「こちらに戦う意思はない。暗殺者ギルドをどうこうするつもりもないから安心しろ」



 小声でフゥガが「どういうことだ?」と言ってくるが、ジェスチャーで黙っておけと言っておく。

 しばらくするとどこかの木の上から声がした。姿を出すつもりはないらしい。まぁ場所なんてバレバレだけどな。



「言伝だけ聞こう」


「俺たちはあと数日で王都を出る。その間、これ以上王都の裏に関与するつもりはないからそう伝えてくれ」


「…………」


「あと、ズラタン男爵とワーデル侯爵に気を付けるんだな。ギルドが依頼を受けないことを祈ってるよ」



 それだけ言って俺はまた前を向いて歩き始めた。

 <エネミーサーチ>ではしばらく動かなかったヤツが帰っていく気配を捉えている。

 どうやら暗殺者ギルドで合っていたらしい。律儀に報告に戻ったのだろうな。


 だがもし国の暗部だったとしても今の会話は問題ない。

 【穴倉の蝙蝠】の件は俺たちの仕業とバレるだろうが、そこからフルアデスの一件には結びつかないだろう。

 だから渦中となっているはずのワーデル侯爵の名をわざと出したのだしな。

 フルアデスの一件は国に伝わっているはずだし、侯爵もすでに捕らえられている可能性が高い。ならば気を付けるも何もないだろう。


 俺は名前が広がったり、名声を得たりすることが嫌なだけだ。

 フルアデスの一件が表沙汰になれば間違いなく名声に繋がる。それは避けないと今後行動しづらい。

 しかし【穴倉の蝙蝠】だけであればサブクエが一つ完了しただけにすぎない。そこまで名声を得ることには繋がらないだろう。

 だから昨夜の件が俺たちの仕業だとバレるのは許容しても、フルアデスの件は許容したくないと、そういうことだ。


 フゥガたちには改めてそんな説明をした。

「そこまで意固地にならなくても」「名誉を受け取ればそれで済む話なのに」みたいに言われたけどな。

 すでにメインストーリーから大きくずれている現状で、あまり目立った真似はしたくないんだよ。

 出来る限り理想的な最終決戦まで持っていきたいからな。まぁそれこそ本当に理想論なのだが。



「ちなみにブリメアというのは?」


「暗殺者ギルドのギルマスだよ。通り名かもしれないけどな。少なくとも内部をよく知ってるヤツじゃないとその名前も分からないと思う。普通の依頼人じゃ会えないだろうしな」


「そんなのよく知っているもんだ……というのも今さらか」



 一応、暗殺者ルートも嗜んでいたからな。それこそ暗殺者ギルドにはよくお世話になっていたもんだ。主にクエスト受注で。

 暗殺者ギルドのギルマスなんてそうそう表に出る人間じゃない。

 だからこそ俺が「暗殺者ギルドのこともよく知っているよ」と言うことで警告と、俺の言葉に信憑性を持たせたわけだな。


 これで余計に俺を警戒するか、素直に俺の言うことを聞くかは賭けだな。

 いずれにせよさっさと王都を出るつもりだから別に構わないのだけど。



 そうして警戒を続けたまま分別を行い、何事もなく作業は終わった。

 装備品とかはやはり流用できそうもない。良さげなヤツは一応死蔵させておくがほとんど売っていいだろう。さすがに王都では売れないと思うが。


 王都へと戻り、昼食を済ませて今度は南東の裏町へと行く。

 まさしく暗殺者ギルドの御膝元なのだが、例の道具屋がこっちにあるのだから仕方ないだろう。

 案の定、裏町に入るあたりから監視されている気配を感じてはいたが無視して道具屋を目指した。


 何本もの路地を入り、長屋の並ぶ一角で俺たちの足は止まる。



「ここか? 看板も何もないから分からないが……」



 どうみてもただの小屋だ。貧民街らしく質素すぎる建屋。とても商売をしているようには思えない。

 だが武具屋で聞いた情報では確かにここなんだよな。

 一応ノックしてみたが返答はなし。仕方ないので少し開けて中を覗いてみる。



「なんじゃ。ここは行儀のいいお坊ちゃんの来るトコじゃないぞ」



 カウンターからこちらを睨みつけていたのは偏屈そうな爺さんだった。

 明らかに裏町の住人じゃない俺たちに対して「お前らは客ではない」と言っているかのようだ。

 しかしそんなことはお構いなしに俺たちは店へと入る。途端、爺さんが「チッ」と舌打ちした。


 店内は狭く、陳列されているものなどほとんどない。

 爺さんに欲しいものを言って、それがあれば売ってくれるというシステムなのだろう。防犯面を考えれば正しいのかもしれないな。



「爺さん、刀は売ってるかい?」


「刀だぁ? なんじゃそっちの姉ちゃんが【ブレイド】か」



 フライヤを一目見て『武国の者』だと分かったらしい。まぁ身体的特徴があるから分かって当然なのだが、シュトローゼル王国じゃほとんど見ないはずだけどな。

 それでもすぐに【ブレイド】と言ったということは職業(ジョブ)と武国の関係性をよく知っているということだ。

 なかなか侮れないな、この爺さん。



「一本だけあるが」


「あるのか!」


「小僧じゃとても手が届かん額じゃぞ。諦めて帰ったらどうじゃ」


「とりあえず見せてくれ。それで判断する」



 爺さんは面倒くさそうな顔をして一度カウンターを後にすると、奥からすぐに戻ってきた。

 一本の刀を携えて。鞘に収まったそれは見るからにしっかりした造りに思える。

 見た感じは『打刀』。太刀でも脇差でもない。標準的なサイズだな。

 俺は本で覚えていた<アプレイス>を無詠唱で使用し、じっくりそれを見た。



=====


 閃ノ雷鳴:STR+67、雷属性付与、麻痺付与


=====



 ぶはっ! と噴き出しそうなのをぐっと堪えた。

 こんなの武国へ行っても早々お目にかかれない代物だぞ。

 武国にあるダンジョンのボスドロップだ。そんなのがどうしてシュトローゼル王国に……?



「百五十万milじゃ」


「高すぎる。閃ノ雷鳴だったらせいぜい二十万milだろ」


「なんじゃ<アプレイス>持ちか。つまらんヤツじゃのう」



 どうやらふっかけたらしい。百五十万はさすがにやりすぎだ。

 ゲーム内で閃ノ雷鳴を売るとすれば五万mil程度になる。

 とは言え現実世界となった今、そんな値段で武器が売られているはずもない。これまでに買った武器もそうだが相場がかなり割高になっているんだ。宿屋とかも同じだな。


 だからと言って百五十万はありえない。さすがにボりすぎだ。



「しかし二十万はないぞ。刀なんぞ貴族のコレクションにされている程度で、この国で買おうと思ったらこの一本しかない。買わないのならさっさと諦めるんじゃな」


「だからと言って誰にも使えない刀を売らないのは宝の持ち腐れだろ? せっかく使える【ブレイド】が来たんだ。売らなかったら爺さんが損するだけだぞ? 三十万でどうだ?」


「たわけ。こっちは長年手入れまでしているんじゃぞ? 百万。それ以上はマケられん」


「これから手入れする必要がなくなるんだ。手離せるチャンスを棒に振る気か? 四十万」


「これだけの名刀じゃぞ? 小僧に売らずとも伝手はあるわい。九十万」


「伝手があったらとっくに売ってるだろうが。五十万」



 そんな言い合いのような値引き合戦が起こり、結局は七十万milで落札した。

 爺さんはうっとおしそうな顔でシッシッと手を払って来る。もう来るなということらしい。

 一方の俺は満面の笑みである。「またな!」と手を上げて店を後にするのだった。


 ゲームで閃ノ雷鳴を買うことなどできないが、おそらく十倍程度の値段にはなっただろう。

 しかし後悔はない。むしろここで手に入れておかなくてどうするという感じだ。



「フライヤ、さっさと大剣スキルをカンストさせてくれ。そうなればこの刀の出番だ」


「そりゃ分かったけどよ……そんなにスゴイ刀なのか? 見た感じは確かにスゴそうだが」


「【絡繰大空洞】のボスドロップだ」


「はあ!? そ、そんなの存在するのか!? あのダンジョンを攻略したなんてあたしは聞いたこともねえぞ!?」



 イーステッド武国にある【絡繰大空洞】というダンジョンは階層が少ないものの難易度が非常に高い。

 推奨レベルは67。アシュトルーデと戦えるくらいの力量でなければ探索もできないということだ。

 職業(ジョブ)レベルが50でカンストなのに67とはなんぞやと思うだろうが、推奨レベルとは目安にすぎない。「平均Lv67の雑魚が出てくるから気を付けてね」というwiki作成有志の思いやりなのだと考えている。


 冒険者で入れるとすれば確実にSランクだろう。

 今のこの世界は俺の想像よりも弱い印象だから、Lv31のフライヤでもBランク冒険者だったが、Lv67のダンジョンとなるとAランク冒険者でも無理に違いない。


 だからフライヤは【絡繰大空洞】を攻略した者を知らないと言っている。そんなことできるのは英雄級のヤツだろうしな。もし攻略できたら名が広まっているだろう。


 そんなダンジョンのボスドロップがこんな所にあるのがおかしいのだ。

 爺さんはそんなことを知らないだろうから価値までは分からなかったと思うが、国宝認定されてもおかしくない代物である。

 七十万の出費? 安いもんだろう。この世界の価値で考えれば。買う以外の選択肢などない。



「はぁ……なんかあたしが使うのも気が引けるんだが」


「お前以外に誰が使えるってんだ。せいぜい頑張って使いこなしてくれ」


「なんだ、それほどとんでもない武器だったのか……なぜこんな辺鄙な場所にあるのだか」


「分からん。冒険者の遺品かもしれないし、どこかの宝が流れ着いたのかもしれん。いずれにせよこれ以上ないほどの掘り出し物には違いない。ラッキーすぎた」


「ジェイル様の正義の行いを神は見ていたということです。天から下賜されたのかもしれません」



 それはどうかと思うが、そういうことなら神に感謝でもしておこう。聖教会に祈りには行かないがな。





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