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王道ルート拒否!~転生やりこみゲーマーはメインストーリーを避けて通りたい~  作者: 藤原キリオ


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34/52

32:砂鼠団を壊滅せよ



 【フランデルの街】は王都近郊にある小さな街。

 王都と【交易都市デュッセル】を結ぶ街道沿いにあり、王都西部の農村をまとめる管轄地である。

 ゲームの印象とはまるで違うが、街というより町という規模には違いない。

 領主も一応いるらしいがゲームにも登場しないので俺は全く知らない。

 だが【フランデル】の中には【デュイス・ワーデル侯爵】という法服貴族の別荘がある。領地なしの大貴族だな。


 こいつは貴族ルートでかなり絡んでくる極悪貴族なのだが、その場合はシュトローゼル王国編のボス扱いにもなる。

 色々と悪事を働いているのだが、雑兵扱いの手駒となっているのが【砂鼠団】という盗賊団だ。

 貴族ルートでも冒険者ルートでも【砂鼠団】を討伐するサブクエストがあるのだが、当然のようにチェーンクエストになっており、冒険者ルートでは商人の依頼をいくつか熟した先で発生する。


 クエスト名【大事な商品を取り戻して!】。

 盗賊団に盗まれた商品を取り返してくれと言いながら、盗賊団の殲滅を強要されるサブイベントである。

 ちなみに序盤では受けられない。フルアデスイベントが終わり、メインストーリーが進んでからやっと受けられる依頼だ。

 つまり難易度は中盤相応となる。だから盗賊団のアジトで手に入れられる【幽霊屋敷の鍵】で入った【幽霊屋敷】には【暗月の短剣】といった中盤相応の装備があったりするのだ。


 まぁ【夜霧の梟を殲滅せよ】のサブクエストも中盤のものだから、今さら感もある。あれは開始初日に熟したし。

 とは言え【砂鼠団】が【夜霧の梟】と同レベルの敵であるのは間違いない。十分に強敵だ。


 頭領は【砂鼠のネルソン】【ローグLv45】。ちなみに【ローグ】は【シーフ】の上位職である。

 他にもLv30~40程度の盗賊が二十人ほどおり、人数で言えば【夜霧の梟】のほうが上だが、質で言えば【砂鼠団】のほうが上だったりする。どちらの難易度が上かと言われれば悩ましいところなのだが。



「は? そんなに強かったのか、あの闇組織は」


「今さらですけど、よくジェイルさん一人で斃せましたね」


「俺だって本当は戦いたくなかったよ。結局斃した方法も正攻法じゃないしな」



 【砂鼠団】が【夜霧の梟】と同等だと言ったらフゥガとカリンが驚いていた。

 さもありなん。金に困ったあげくに強引に乗り込んで、初見殺ししただけだからな。ゲーム知識と主人公特典の合わせ技である。


 そんな話をしながら、俺たちは【フランデル】南方の森で探索している。

 俺は名称付きのエリアならだいたい地図は頭に入っているのだが、名もなき普通の地形だと曖昧だ。

 盗賊団のアジトのある森なんて名前もなければ滅多に訪れない場所だからな。俺も探り探りの歩みとなる。


 【フランデル】のサブクエストのために採取や狩りも行いたいので周辺を探索しながらアジトを目指すのは都合が良い。スキルの熟練度稼ぎもしたいしな。

 ただ街南部の森だけでサブクエの納品に必要なアイテムが揃うわけもないので、サブクエ三つ分、達成できればいいかなというくらいだ。【フランデル】のサブクエは四つしかないし。



 そうこうしていると森の深くに木造のロッジのような建屋があった。

 一見すると木こりの家というか倉庫というか、とても盗賊団のアジトには見えない。

 しかしLv8となった俺の<エネミーサーチ>はその近くで監視している盗賊の一人を捉えていた。



「あれがアジトなのか? だとすれば本当に上手く隠しているな」


「床に隠し階段があって地下が広いんだよ。小屋自体は偽装だな」


「なるほど」


「あっちにいる一人は俺が<ハイド>で始末してくる。そうしたら六人で家に突入するぞ」


「「はい」」



 いくら力のある盗賊団と言っても見張りをしているヤツなんて下っ端だし、こんなところに来る人がそもそもいないわけで、常時集中して見張りをしているわけもない。

 俺が見つけた盗賊なんて枝の上で昼寝している感じだったからな。おそらく<エネミーサーチ>に任せて目は閉じているだけだろうが。

 というわけで、そんなヤツは即殺です。手慣れたもので、スキルで殺してからインベントリに収納した。


 そうして六人揃って小屋の入口に行ったが、案の定、鍵が掛かっている。ゲームではそんなことなかったのに。

 仕方なしに見張りの死体を取り出して懐を探ると鍵を見つけた。そりゃ持ってるだろうな。

 あとはもう鍵を開けて突っ込むだけだ。

 小屋の中にはすでに二人の盗賊が待ち構えており、俺たちが突入すると同時に襲い掛かって来た。


 Lv30~40程度の盗賊たちは序盤に出てきてはいけない強さの敵である。

 冒険者ならB~Aランクだろうし、そんな盗賊なんて早々いるわけない。これが現実世界となったゲームの恐ろしいところだ。時々ゲームを踏襲し、時々現実感を外してくる。


 そしてそんなヤツらが相手でも無難に勝てるのが今の俺たちである。

 レベルも高く、スキルも育てており、装備も中盤クラスのものがいくつもある。

 そもそも戦い方が違うからな。盗賊たちは通常攻撃で斬り掛かってくるのに、俺たちはスキルを連発するのだから。どちらが強いかなんて火を見るより明らかである。


 まぁカリンには控えさせたけどな。さすがにここで火魔法は使えない。

 だが狭い小屋の中で二~三十人の盗賊団が全員襲い掛かってくるわけがない。

 おそらく地下の連中には通達されていたとは思うが、小屋の中では二人しか現れなかった。従ってカリン抜きでも楽勝である。



 床の絨毯をめくると扉が見えた。そこを開ければ下り階段がある。

 なんとも凝った造りのアジトだな。おそらく例のデュイス・ワーデル侯爵が作らせたに違いない。手駒のために。

 そこを下りると本格的なアジトになるわけだが、ゲームのように大部屋で待ち構えているわけではなかった。

 やはり通達が行ったのか、小屋の騒ぎを察したのか、地下へと下りる階段の時点で盗賊団が次々に襲い掛かって来たのだ。


 動揺したのか慌てたのか分からない。こういう状況に慣れていないだとか、自分たちのレベルの高さに驕っていたのかもしれない。

 ヤツらが戦場に選んだそこは狭い階段。しかもこちらが上である。

 フゥガが受け、俺とフライヤが斃せばそれで終わり。各個撃破をし続けるだけで十人以上もの盗賊を斃せた。

 血気盛んというか、馬鹿というか、よくまぁこんな不利な状況で攻め続けられるものだ。順々に襲い掛かるのは四天王方式と言われる悪手である。ゲーマーの常識だ。



 ともかくそうして斃し続けてやっと地下に辿り着いた時には、さすがの盗賊団も真面目に待ち構える気になったらしい。

 俺の知っている大部屋で陣を布いてちゃんと戦う姿勢を見せていた。



「てめえらどこのモンだ!!」

「ただじゃすまねえぞ!!」

「お前らやっちまえ!! 生きて帰すな!!」



 ゲームでは五人ずつの連戦といった形だったのだが、どうやら一気に攻めてくるらしい。

 といっても頭領の【砂鼠のネルソン】は最後尾で指揮しているし、とりあえず下っ端をまとめて当たらせる方針のようだ。

 俺の知らない逃げ道などがなくて僥倖である。もしかしたらネルソンが逃げ出して貴族の元に駆け込む、なんてこともありえたからな。この場にいてくれてありがとうといった感じだ。


 こうした屋内の集団戦は、絶対に俺たちのほうが慣れているはずだ。

 エリザとフライヤは未経験だが、他四人は【青の竜爪】【白雷の虎】で経験している。

 二人は俺たちに合わせる形なのだが、フライヤはバランスを見るのが上手いし、エリザの回復やバフがあるだけでもう過剰戦力みたいなもんだ。


 俺たちは部屋の入口で六人の陣を布き、襲い掛かってくる盗賊たちを次々に討ち取っていった。

 やがてしびれを切らしたネルソンも側近と共に攻め込んで来る。


 だが……いくら上位職とは言え【ローグ】は戦闘に特化した職業(ジョブ)ではない。【アサシン】のように暗殺も狙えないし、【シャドウウォーカー】のようにデバフを撒けるわけでもない。

 そんなものはもはや、俺たちの敵ではないのだ。


 数の暴力により押される場面もあったし、手傷を負うこともあった。

 カリンとネフィリアが戦いづらかったという部分もある。

 しかし俺たちは敵の攻撃を凌ぎ、一人ずつ確実に仕留め、やがてネルソンの首筋に俺の刃が届いた。



 静まった大部屋は吐き気を催すような光景だが、それに見慣れた自分自身に何とも言えない感情が浮かぶ。

 皆は息を荒げ、汗をふき、その様子は戦いの厳しさを物語っていた。



「ふぅ、おつかれ。少し休んでいてくれ、俺は回収してくるから」


「どうせならここで選別してしまってはどうだ? 急いで出る必要もないのだろう?」


「それもそうか。じゃあ死体もまとめてここに置くか。はぎとって分別しておこう」



 それから殲滅の数倍の時間をかけ、分別と回収を行った。

 当然のようにお金もお宝もあった。【砂鼠団】はデュイス・ワーデル侯爵の依頼で貴族邸宅に襲撃したり、そこのお宝を盗んだりしているのだ。侯爵はむかつく貴族さえ消せればそれで満足だから、金や宝はその多くが【砂鼠団】の手に渡る。


=====

 白金糸のローブ、柳流の杖、角牛革の靴

 白光琥珀のネックレス、棒真珠の指輪、疾風のストール

=====


 白金糸のローブはエリザに渡す。祈念のローブよりも上だ。

 杖と靴は今の装備のほうが上だから死蔵だな。


 白光琥珀のネックレスはMPリジェネ。エリザに渡す。

 棒真珠の指輪は毒無効。ネフィリアの耐呪の腕輪と交換しておこう。

 疾風のストールはAGL上昇で、そよ風のスカーフよりも上だからこれもネフィリアかな。


 その他、侯爵との繋がりを示すような書類が多数。王城に持っていくかは微妙だが一応回収しておく。

 本来中盤のサブクエストということで盗賊団の装備品はどれも微妙に良さげなものなのだが、今の俺たちの装備と比べると、ネルソンの装備が今の俺の装備よりも上かな、というくらいだ。調整してから使ってもいいな。

 ネフィリアの装備している暁闇シリーズよりはちょっと下だろう。


 あとはもう日用品とか備品とか、家具や食料などもある。再利用されないよう一応全部回収するがほとんどダンジョンで捨てる感じだろうな。



「いつもこんなことしてんのかよ。どうりで大富豪なはずだぜ」


「捨てておいても無駄になるだけだろ? 俺たちが有効利用したほうがマシだ」


「そりゃそうだけどよ。こっちが強盗っぽく見えちまうから困るんだが」


「ジェイル様は正義の行いしかしませんよ、フライヤ様」



 なんかもうエリザには言うだけ無駄な気がしてきた。

 主人公であることはもうさすがに認めているが、【AG】(アーク・ジェネシス)の主人公とは一般人である。それは間違いない。


 いずれにしても売ったり、書類をどうにかするのは王都に行ってからだな。【フランデル】では無理だろう。

 それに【フランデル】に戻ったら侯爵の別荘を探索しないといけないからな。

 場合によってはそこで手に入れた何某かも王都で一緒に売ることになるかもしれん。



 結局、分別が終わる頃には夜になってしまったのだが、血だまりの残る小屋の中に泊まりたくはなかった。

 それにアジトから離れていた盗賊がいるかもしれないからな。そいつが帰ってきたら全滅して荷物が根こそぎなくなってましたとか大騒ぎだろ。それこそ侯爵に告げ口されるかもしれん。

 というわけで近くにテントを張って、夜番を設けるいつもの冒険者スタイルで休むことにした。


 翌日、【フランデル】に戻ってまずは街の住人のサブクエストを熟す。

 と言っても依頼人は三人だけだし、あまり有用なアイテムもないのだが普通に売るよりよほどマシだ。

 それから冒険者ギルドへと行って、依頼票を確認し、持っているドロップアイテムで完了できるものは熟す。


 【フランデル】の冒険者ギルドは今までの街と比べてかなり小さく、まさしく酒場のような雰囲気だった。これはこれで新鮮だな。

 フライヤにも確認したのだが、立ち寄っただけの街で拠点変更登録は特に必要ないらしい。

 だから数点の依頼を熟しつつ、いくつか買い取りを出しつつと、ただそれだけで終わった。


 それからは宿をとり、明日の馬車の時間まで休むだけ……というのは五人だけだ。

 俺はこれからもう一仕事しなければいけない。

 もう場所は掴んでいる。目指すはデュイス・ワーデル侯爵の別荘だ。





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