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王道ルート拒否!~転生やりこみゲーマーはメインストーリーを避けて通りたい~  作者: 藤原キリオ


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20:交易都市デュッセル



 【ベレッサの街】から【交易都市デュッセル】の間にある宿場町や農村、これはゲームでは存在しない場所だ。

 ゲーム容量のために省かれたのか、フィールドには影も形も存在しない。

 まぁ現実世界で考えればありえないけどな。主要都市しか存在しませんとか。

 国の食料事情を賄うための農村は必要だし、家畜を放牧している村もあるという。

 ゲームではありえない、現実(リアル)な生活感は俺の心を躍らせた。正しい【AG】(アーク・ジェネシス)の世界観というものを味わっていたのだ。


 とは言え、そのような宿場町や農村にアイテムが落ちているわけもないし、サブクエストの依頼人がいるわけでもない。

 何のイベントも発生しないのであれば居座る意味もない。

 結局はただの休憩所としてしか利用せず、俺たちはまっすぐに【交易都市デュッセル】を目指した。



 【デュッセル】は交易都市の名の通り、シュトローゼル王国の通商の要所だ。

 場所は王国のほぼ中央。東には【王都ローゼル】があり、南には【ヴェナト海王国】、北には【エイリーン聖王国】と行き来もしやすい。

 人も物も金も集まる、まさに大都市である。

 シュトローゼル王国の中でも王都に次ぐ規模なのは間違いない。活気という意味では一位かもな。



「すさまじい人だな。感動するわ」


「これだけの都市はボイルーツ共和国でも見たことないですよ」


「物取りがいるかもしれん。我々は装備も立派だから狙われるかもしれないぞ。気を付けていこう」


「私は数十年前に来たことがありますが実際治安は悪いそうですよ。清濁合わさって混沌とした街という印象です」



 なるほどな。言わんとしていることは分かる。

 実際、この街で発生するサブイベントも治安の悪いものばかりだ。できるだけ熟すつもりではいるのだが。

 とりあえずすべきは冒険者ギルドに行って、拠点変更手続きと宿を決めることだな。そんな話をしつつ大通りを歩いた。


 【デュッセル】の大通りは広いのだが、人通りも多いし、店や屋台の数も多い。どれも派手に飾り付けしてあって目立とうと競争している感じだ。

 ごちゃごちゃというか、ごみごみというか、全く落ち着かない、良く言えば賑やかな街だな。

 チラリと見る路地やその先では汚い孤児が群れているし、物乞いの姿もある。豪華に見えるのは表通りだけ。裏は危険に違いない。


 ゲームでも裏通りに行くことはある。イベント系でな。

 しかしそれもごく一部しか反映されていなかったのだろう。

 俺の知らない【デュッセル】の裏側はどれほど濁っているのか。正直、あまり近寄りたくはない。……まぁ嫌でも行くことになるのだが。



「気を付けるべき三人は覚えているな?」


「ジン、サボア、エリザだったか? 容姿と名前は憶えているが」


「まぁ気にしていてくれたらそれでいい。万が一仲良くなってもカーマイン推しで頼む」


「ああ、分かった」



 【デュッセル】にいるユニークキャラ(or準ユニーク)は幾人かいるが、冒険者ルートで仲間になる可能性があるのは三人。


 一人は【ジン】という男性。この街に三つある闇組織のうちの一つ【青の竜爪】に所属している【アサシン】だ。

 イベントで【青の竜爪】を壊滅させようとすると幹部として敵対することになる。

 そしてイベント終了時に主人公陣営に加入する、という流れだ。「俺を斃したのだからこの命、好きに使うが良い」みたいな。中二病キャラである。



 二人目は【サボア】という【マジシャン】の女性だが、こいつは準ユニークキャラだ。

 街中にある錬金術屋に行くとランダムで遭遇し、話しかけると仲間にすることができる。

 まだ序盤と言えるこの時期では非常に使えるキャラで、【ベレッサ】でせっかくクリエイトキャラを作ったのにサボアのせいで解雇される、というのも初見あるあるだ。

 ただ言っても準ユニークだからな。最終決戦まで連れて行くかと言われると首を傾げる。

 それでも一応カーマイン陣営に入ることも可能性としてはあるかもしれないので、念の為、俺たちは仲間にしない方針だ。



 三人目は【エリザ】という【クレリック】だ。貴重な回復役(ヒーラー)ではあるのだが、こいつが要注意。

 冒険者ギルドで受付嬢に三回話しかけるだけで出会うイベントが発生するのだが、この時点では準ユニークキャラだ。

 シュトローゼル王国から一歩でも出ると強制的に離脱イベントが発生してしまう。

 そしてエイローゼル聖王国でメインストーリーを進めると再登場するのだが、その時には【エリザベート】と名乗り、職業(ジョブ)も【セイント】となっている。

 つまりは聖女様なのだ。お忍びで国を抜け出し、修行のために冒険者になっていたという設定。


 メインヒロインの一人であり、ゲームのパッケージにも登場している人気キャラなのだが、カーマイン陣営には絶対必要な存在であり、間違っても俺の仲間にしてはいけない。

 と言うか、カーマインのメインパーティーに絶対入れるべき人材である。

 できれば出会って、「カーマインって冒険者がすごいんですよ」と激推ししてあげたいくらいだ。それくらい重要な存在である。



 以上の三人については事前にフゥガたちに共有していた。

 【デュッセル】で気を付けるべきところは色々とあるのだが、一番気を付けるべきはその三人である。

 俺が意図的にメインストーリーを進めるような真似はしないし、カーマイン陣営の強化を妨げるような真似はしたくない。これが俺たちの旅の方針だ。

 まぁこちらが意図しない形でのイベント発生などもあるのだろうが、あくまで指針はそこである。でなければ最終決戦で俺たちが死ぬはめになるからな。出来る限り安全策はとっていきたい。


 そんなことを考えつつ冒険者ギルドに行ったのだが、案の定、エリザが出てくるようなことはなかった。時期尚早ということだろう。

 拠点変更の手続きだけしてギルドの用事は終わり。次は宿探しだ。

 これもまた数えるのも馬鹿らしくなるほどに宿屋があるのだが、やはり治安優先ということで大通りに近い場所を選んだ。お値段四人一部屋で7,000milである。うーん、高い。


 そこで改めて今後の予定を話し合った。



=====


・街中のアイテムを集めて、欲しがっている住人に渡す⇒報酬ゲット

・闇金業者、襲撃

・裏町のごろつき討伐

・【青の竜爪】【白雷の虎】の壊滅

・インベントリにある【幽霊屋敷】【梟のアジト】の雑貨類を売る

・奴隷商で二人補充(できれば前衛アタッカーと回復役(ヒーラー)

 奴隷オークションを見てみるのも可

・武具屋に行って装備の手直し、もしくは作成

・全て終わってから冒険者活動開始


=====



「一応、やるべきことはこんなところなのだが――」


「待て待て待て! 物騒なのが混じっているのだが!?」


「最初にやると思ってたのが四つ目とか五つ目とかになってるです!?」


「【青の竜爪】や【白雷の虎】というのは闇組織なのでは……? 壊滅? え?」


「うん、一つずつ説明しよう。とりあえず落ち着いてくれ」



 【デュッセル】で熟しておきたいサブイベントというのは豊富なんだ。それだけ大きな街だから当然と言えば当然なのだが。

 もちろん街の外に出て魔物を斃しドロップアイテムを納品するというサブクエストもある。しかしそれは先の話だ。最初に熟すべきは「街の中で完結するサブクエスト」だからな。【ベレッサ】でも同じ感じだったが。


 まずは街中を漁ってサブイベント用アイテムを手に入れる。

 それを住人に納品することでクエストクリアになるのだが、漁るのはやはり夜がいいだろう。日中にやるのは目立つ。ついでにポーションや小銭などを拾ってもいいが、いずれにせよ夜に動いたほうがいい。



「ようは困っている住人の頼み事を聞く感じだ。【ベレッサ】でもやってたからフゥガとカリンは分かるだろ?」


「あのありえない報酬をもらっていたやつか。やる価値があるのは理解できるが……」


「この広い街の中から探すですか……」


「当たりはつけているし今夜にでもこっそり探して来るつもりだ。さすがにゴミ漁りみたいな真似を天下の往来でやる気にはならないしな。そんで明日以降に住人に渡して、あわよくば報酬を頂く」


「こっそりって、まさかジェイル一人で行く気か?」


「そのほうがいいだろ。で、そのついでに闇金業者を潰して、ごろつきも斃す」


「そんなついでみたいに暗殺しないで下さいよ。いくらジェイルさんだって危険です」



 闇金業者もごろつきもサブイベントだ。

 【若き店主の苦悩】と【家宝の剣を取り戻して】というサブクエストなのだが、どちらも住人から依頼を受けることで発生する。

 しかし俺は依頼を受けずにイベントだけ熟そうと思っている。【夜霧の梟】の時と同じだな。

 依頼報酬よりもそこで手に入るアイテムのほうに価値があるタイプのクエストだ。だから先に熟しておきたい。



「できれば【青の竜爪】と【白雷の虎】も一緒に潰したいところだが……さすがに一晩じゃなぁ」


「闇組織まで一人で潰すつもりだったのか!? 私たちを助けた時と同じようなことをこの街でも!?」


「いやさすがに闇組織二つなんて無茶ですよ! さすがに止めたいです!」



 闇組織を潰すイベントは、メインストーリーを進めたあとで発生するチェーンクエストだ。上記の二つのサブクエストと連動している。

 【デュッセル】の裏社会は三つの闇組織が牽制しあっていることで表面上は平穏を保っているという設定だ。

 しかしそれぞれの闇組織が悪事を働いているのも確かで、事件は毎日、様々な形で起きている。


 【青の竜爪】は暗殺や人身売買をやっているし、【白雷の虎】は闇金や闇魔道具の生産、麻薬なんかも取り扱っている。

 最後の一つが【朱の怪鳥】という闇組織で、ここは裏町のまとめ役といった立ち回り。一番小さいし一番影響力が弱い。

 とは言え裏町で禁制品を売っていたり、地上げしたり、なんやかんややっているみたいだけどな。


 で、【交易都市の裏の顔】というサブクエストで、主人公陣営がどの闇組織に肩入れするかという選択肢になるのだ。三つのうち、二つを選んで潰せってことだな。

 これにより【デュッセル】の裏社会は一つの闇組織でまとまり、表面上はもっと平和な街になる、という感じ。



 現実世界となった今なら、正直三つとも潰していいんじゃないかという気もしている。

 が、確かにこれだけの都市であるなら裏のまとめ役は必要だよな、とも思うわけだ。実際、領主の力だけで管理できていないからこうなっているわけだし。

 だからイベントに従って二つを潰そうと思うわけだが、俺が選ぶとすれば当然【青の竜爪】と【白雷の虎】になるわけだ。

 レベルアップ的な意味でも、入手アイテム的な意味でも、そっちのほうが旨い。【朱の怪鳥】は全く美味しくない。


 ……ということをゲーム知識を誤魔化した上で、三人にも説明した。



「言いたいことは分かったが、それなら四人で乗り込むことはできないのか?」


「そりゃそのほうが助かるが三人に人殺しを頼むことになるぞ? おまけにそれで賞されるわけでもない。なるべく目立たないように終わらせるつもりだからな」


「私は奴隷ですので命じられれば行かざるを得ませんが……」


「悪事を働く者を討伐するのは当然だろう。私は何の忌避感もない」


「一人で勝手に動かれるよりも安心ですよ。と言いますか、ジェイルさんがそう言うってことは十分な勝算があるんですよね?」


「そりゃもちろんあるさ。相手の強さだったせいぜいLv38くらいだからな」


「十分強いと思いますけど……」



 【夜霧の梟】よりもレベルは低いが数が多いって感じだな。

 八割くらいの雑魚がLv15~20前後だから俺たちに斃せないわけがない。幹部クラスが厄介なだけだ。

 ただ四人で行くなら寝込みを襲ったり暗殺できるわけじゃなくなる。正攻法で攻める感じになるから、逆にキツくなるかもしれない。乱戦に次ぐ乱戦になるだろう。


 そういう意味では三人にとって危険な面もあるのだが……連携を高めたり、レベルアップの機会と見ればチャンスには違いない。

 あと残るデメリットは、やっぱり四人だと目立つってことだ。やるなら深夜がいいだろう。



「じゃあとりあえず今夜は俺一人で行動する。それで明日の深夜に四人で襲撃をかけるって感じでどうだ?」


「ああ、分かった」「了解です!」


「私はちょっと不安なのですが……」


「ネフィリアは<エネミーサーチ>で索敵と警戒担当だな。射てるタイミングがあれば射ってもらう感じで」


「分かりました」



 明日また打ち合わせるけど、とりあえずはこんな形で行ってみよう。

 街中で終わらせられるサブクエストはさっさと終わらせておきたいからな。金策にもなるし。

 金が増えればいい奴隷も買えるかもしれない。装備にも金はかかるから稼げる時に稼いでおこう。





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