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王道ルート拒否!~転生やりこみゲーマーはメインストーリーを避けて通りたい~  作者: 藤原キリオ


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16:レームル山の異変を解決せよ



「<ガードスタンス>! <タウント>!」


「<アサシンエッジ>! <スターバースト>! 後続来るぞ!」


「はいっ! <グランドファイア>! <ファイアランス>!」


「<ナイトフォッグ>! 無理そうなら言えよ!」


「「はいっ!」」



 【狂乱化オーガ】の居場所についてはゲーム知識によって目星はついていたが、やはり多少の違いが見られた。

 予想以上にバラバラな部分と予想以上に群れている部分、両極端という感じだ。

 他の魔物をできる限り無視してとりあえず【狂乱化オーガ】を処理しようと、俺たちは山を登っていったわけだが、それでも【レームル山】は【ベレッサ】周辺でも比較的難易度が高いエリアだ。

 全ての魔物をスルーすることなどできず、それと戦っている時に【狂乱化オーガ】が乱入して来るなど、最初のほうは対処に苦労した。


 フゥガも緊張している様子だったし、カリンは見るからにあわあわしていたな。それでも俺の指示に従ってくれているのはさすがと言えるが。



 そうしていざ【狂乱化オーガ】と戦ってみると「あれ? 案外戦えるな」という印象に変わったらしい。

 確かに【狂乱化オーガ】は強い。ただでさえDランク上位の魔物であるのに、狂乱化によってバーサーカーモードなのだ。

 こちらの攻撃を無視して襲って来るし、その攻撃力たるやハイオーガやトロール並みと言っても過言ではない。


 フゥガが普通に受けてもノックバックはするし、気を抜けば吹き飛ばされるだろう。そうなればカリンの前が開き、一撃でもくらえば死か瀕死になりうる。

 それほど危険な相手なのだ。常に頭と身体を動かし、緊張感を持ち、冷静に対処しなければならない。



 だがそれも一体、二体と無傷での勝利を収めると「私たちってもしかしてかなり強くなってる?」と意識の変化が起こっていた。

 もちろん俺からすれば当然の結果なのだが。

 二人がそれだけ強くなっているのも知っているし、普通に戦える状況であれば普通に斃せると。だから『ちょうどいい練習相手』と思ったのだしな。

 なんにせよ二人にとって自信に繋がる戦いだったのは間違いないらしく、それが好調を生み出していた。


 終いにはフゥガも「二体同時に受けてみたいのだが」などと言い出すし、カリンも<ハートオンファイア>で俺に火属性付与までしてきた。雑魚敵相手にやっている『意味の無いスキル回し(熟練度稼ぎ)』である。

 Cランクパーティーでも苦戦するのが【狂乱化オーガLv25】だ。

 それなのにこの余裕。まぁ俺とカリンは装備のおかげもあるのだが、フゥガの耐久力と言うか盾受けの技量が素晴らしい。

 やはり盾役(タンク)がちゃんとしているとパーティー戦闘が楽になるものだ。改めてそれが確認できた。



「もう終わっちゃったですか」


「これで九体か。残りの一体は斃さずにおくのだろう?」


「あとから来る衛兵団用に一体は残しておかないとな」



 全てを俺たちが斃してしまうと、調査しに来た衛兵団やCランクパーティーが『収穫なし』となってしまうからな。異変の元凶という証拠は残しておかなくてはいけない。

 【狂乱化オーガ】がどの程度の強さに変異しているのかも味わってほしいし、ドロップアイテムである【狂乱の首輪】も持ち帰り、そこから魔族の関与を突き留めてもらわないと問題視されない可能性もあるからな。



「あとは周辺の魔物の間引きと探索もやるつもりだが……何より『真の元凶』のほうに行かないと」


「真の元凶? ……魔族か!」


「まだいるかどうかは分からないが研究所みたいな隠れ家があるはずだ。そこをまず探索しよう」


「ええっ!? い、いたら戦うですか!? 魔族と!?」



 おそらくいないとは思っている。少なくともゲームではもぬけのから(・・・・・・)だった。

 今回の犯人は六魔将の一人【魔嵐公アシュトルーデ】の配下、【這宴(はいえん)のフルアデス】というヤツだ。

 フルアデスは言ってしまえばマッドサイエンティストっぽい魔族だな。「ぽい」というのは、そこまでトチ狂った科学者になりきれていないという意味だ。中途半端な科学者という印象。


 今回の件で言うと、魔物を狂乱化させるために【狂乱の首輪】を開発し、それを魔族領から遠く離れたこんな僻地で実験していたわけだが、【狂乱の首輪】も奴隷などに使われる【隷属の首輪】をちょっと細工しただけのものだし、とても人間界を危機に陥らせるような代物ではない。


 わざわざ【ベレッサ】の近くまでやってきて、研究所的な隠れ家を作り、秘密裡に研究するほどのものではないのだ。

 こんなもん、魔族領で実験しろよと言いたくなってしまう。



 が、この世界の人間からすれば「魔族がこんなところまで出張ってきている」とそれだけでも一大事である。

 オーガを狂乱化させ劇的に強くした。ならば今度は一体どんな手を使ってくるのか。どんな企みをしているのか。

 そう考えるのは当然だし、【ベレッサの街】どころか王国全体で警戒すべきことになってしまうのだ。


 フゥガもカリンも、だからこそ警戒しているし、恐れてもいる。

 それでも割と平常心を保てているのは、俺が呑気なせいだろう。


 何せ分かっているからな。フルアデスは大したものを作れないし、戦っても異常に弱いのだと。

 まぁ科学者というか【クラフター】というか【アルケミスト】というか、そんな存在なのだ。ようは非戦闘職である。

 できればまだ隠れ家に居残っていてくれ、とさえ思っている。この場で始末できるならば始末しておきたいからだ。後々脅威になるわけではないが邪魔にはなるのだし。



 そんな話をしながら崖のような切り立った岩山へとやってきた。オーガが群れていた場所からわりと近いが、本当に『隠しエリア』なんだよな。フルアデスの研究所は。

 初回プレイではまず気付けない。俺だってあとからwikiで知ったくらいだ。有志とは偉大である。


 俺は岩山の周辺を<トラップサーチ>で探し、隠しスイッチを見つけるとそれを押す。

 するとただの崖だった岩山の壁面がゴゴゴと開く。研究所の入口となる洞穴が顔を出すわけだ。



「なんとまぁ、本当に何でも知っているな、ジェイルは」


「何でもは知らないよ。Cランクパーティーの斥候職だって見つけられるかもしれないが、まぁ開けておいたほうがみつけやすいだろうしな」


「手柄は他の人たちにあげちゃうですね、今回もまた」



 ゲームでは衛兵団とCランクパーティーの調査によって【狂乱化オーガ】を斃し、【狂乱の首輪】を入手することによって「これは魔族の技術が使われている!」「じゃあ魔族が関わっているのか!」となるわけだが、どうせなら研究所も見せておいたほうがいい。

 二人は手柄を渡すことに若干躊躇いがあるようだけどな。俺の意図を酌んでくれているのは助かる。


 <エネミーサーチ>を使ってもやはり中に人がいる気配はない。とっくに逃げているようだ。

 フルアデスにとって今回の実験は結果を見るまでもない『お遊び』だったってことだな。何なら研究とか実験とか、そんな大したものでもないのだと思う。

 何となく作った隠れ家で、おもちゃを作り、それで遊んだだけ。

 だから【狂乱化オーガ】も【狂乱の首輪】も、この隠れ家に残された資料とかも野放しで立ち去っているのだ。秘匿すべきものではないということだな。


 この辺が、フルアデスがマッドサイエンティストになりきれていない中途半端なヤツと言われる所以なんだよ。

 頭が良いのに馬鹿と言うか、計算しているようで詰めが甘いとか、厄介そうに見えて弱いとか。俺の総評としては『残念』という位置づけになっている。



 洞穴に入ってみると、中は部屋のように改造され、錬金術師の工房のようになっていた。

 素材や工具が散乱し、棚には研究資料と思われる書物もいくつか見える。

 これだけの証拠品を残したままとんずらしているのだから、やはりフルアデスは馬鹿だなぁと思うわけだ。



「これは……すごいな。ここの主が魔族ということか」


「なんかとんでもない発見をしちゃってるです……こんなの悪事の証拠ってレベルじゃないですよ……」



 隠し扉を開けた状態でここを見せれば衛兵団たちは大騒ぎだろう。まぁそうなってもらうつもりなのだが。

 とは言え俺が来た目的は別だ。わざわざ隠しエリアに来たのは相応のお宝があるためである。



「おっ、あったあった。これが欲しかったんだよ」


「なんだ? この資料以上に価値のあるものなんて早々ないだろうに」


「俺にとってはこっちのほうがずっと価値があるからな」



=====


 ・白光琥珀のネックレス ・緋珊瑚のイヤリング

 ・<クラフト>の書 ・<アルケミー>の書

 ・<クッキング>の書 ・<アプレイス>の書


=====



 序盤にある隠しエリアとしては破格の報酬だろう。

 これがあるからわざわざ来たと言ってもいい。【狂乱化オーガ】のほうがついで(・・・)だ。


 フルアデスはモノづくり専門の科学者だから、相応の品が並んでいる。

 本はスキルを覚えるものだが、それぞれ「アイテム製作」「錬金」「料理」「アイテム鑑定」が可能となるものだ。

 初心者用クラフトセットもアイテム製作や錬金ができるが、あれはLv1限定だからな。本で覚えればレベルアップも可能となる。

 俺がスキルを覚えて、クラフトセットをフゥガかカリンに使わせれば効率は二倍だ。


 【白光琥珀のネックレス】はMPリジェネの効果。カリンに装備させよう。

 【緋珊瑚のイヤリング】は毒・麻痺・睡眠の状態異常耐性。これは盾役(タンク)のフゥガがいいな。



「ええっ!? 私でいいのですか!? ありがとうございますっ!」


「なんと……貰ってばかりで申し訳なくなるな」


「パーティー成長って意味なら妥当だろう。来たかいがあるってもんだ。あ、スキルのほうは俺がもらうけどいいか?」



 <クッキング>は二人のどちらかが料理をできるなら、と思ったのだがどうやら二人とも料理はできないらしい。

 ならば俺がもらおう。これでバフ効果のある料理が作れる。まぁ厨房を借りないと無理なのだが。


 これで用事は全て終わったな。

 せっかく三泊分の用意もしてきたのだし、ここからは【レームル山】全域を探索しつつ、魔物を狩ってレベル上げだ。

 その間に衛兵団とかも来るだろうし、【狂乱化オーガ】の残り一体を斃してもらって、この隠し研究所も見つけてもらえば最高だ。

 俺たちが集めた【狂乱の首輪】もここに置いておくか。……いや、一つは持ち帰ろう。八個だけ置いていく。



「じゃあここからは探索にするが、南側は避けて西から北・東と【レームル山】を回る感じにする」


「衛兵団とかと鉢合わせないように、ということだな」


「まぁな。最悪、見つかったら『異変を知らずにたまたま来ちゃいました』とか言い訳するつもりだが」


「無理があるですねぇ。ま、見つからなきゃいいだけです!」



 よし、じゃあ早速始めようか。【レームル山】を殲滅する勢いで狩りまくってやるからな。





 三日後、俺たちは【ベレッサの街】へと戻って来た。

 初の遠征ということもありテントを張ったり、夜間の見張りを立てたり、色々と戸惑うところもあったが、冒険者として良い経験ができたと思う。

 それこそ二人に感謝だな。冒険者の先達として色々教わった。

 やっぱり二人を仲間にできて幸運だったと改めて実感した次第だ。


 【レームル山】は元々推奨Lv15とかなので、そこまで強い魔物はいない。せいぜいDランク上位のオーガがちらほらいる程度だ。

 だからこそフルアデスもオーガを狂乱化させたのだろうけどな。エリアで一番強い魔物をさらに強くしようと。


 従って俺たちが山中を探索しても苦戦するわけがない。レベルアップはそこまで見込めなかったというわけだ。

 【狩りの勲章】の経験値二倍効果があってこれだから仕方ない部分でもある。

 今は俺が【スカウトLv35】、フゥガが【ナイトLv30】、カリンが【マジシャンLv30】となっている。

 一応、二人とも職業(ジョブ)スキルの最高位が取得できたので、そこで切り上げたという感じだな。


 だがスキル熟練度のほうはかなり稼げたと思う。

 霊草を採取したそばからMPポーションを作り、それすら使い切った感はあるが、とにかく熟練度を上げまくった。カリンに渡した【白光琥珀のネックレス】も最初に入手しておいて正解だったな。

 おかげでいくつかのスキルがLv8のカンストとなり、そろそろ武器の変更も視野に入って来た感じだ。

 転職は職業(ジョブ)Lv50までお預けだけどな。どこかで経験値稼ぎをしたいものだ。


 もちろん採取エリアも回ったし、魔物のドロップも大量にある。

 これを一気に買い取りに出すと大変な騒ぎになるので自重はするつもりだが、街を巡って売れるものはどんどん売ってしまおうと思っている。

 最悪は次の街までお預けだな。インベントリで死蔵させておくのも構わないというつもりではいる。


 そんな成果を確かめながらウキウキ気分で【ベレッサの街】に着いたわけだが、入口で何やら騒がしい光景が目に入った。



「調査は終わりだと!? まだ一体残っているのではないか!? 資料には十体の変異種を作ったとあったのだろう!?」


「しかし我々が捜索した限りではもう見当たりませんでした。魔族が連れ帰ったのかもしれません。足取りが掴めない以上、どうしようもないのです」


「やはり私も行くべきだ! もう一度調査隊を組んでくれ!」


「いくら坊ちゃんの頼みでも無理ですよ。せめて領主様の指示を仰いで下さい」



 うわぁ……カールくん、相変わらずやってんなぁ……。





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