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予想以上に平和にすんだご令嬢との顔合わせの後はしばらく雑談をして、今日は解散。まあ、雑談というか楽しそうに温泉について語っている時間が結構あった気がするけれど……。気のせいかな? あとは兄弟の話とかもできたから、だいぶ穏やかに話せてあんしんしました。夕食はひとまず今日は伯爵家の人たちと別々で、とのことなので安心。どうせなら、とシントと二人部屋でとることにしたから、気を遣わずに済むのは助かった。給仕ももうサイガたちに頼んでしまったから、部屋の中は完全に気を休められる。
ここでの視察は温泉周りが大抵。それに関連して付近の安全確認。これが一番大切で大変らしい。この領に入る前にダブルク様が言っていたのが、ここは決して休憩の場所ではないということ。温泉は体を休める場所だから気を抜いてしまうこともあるだろうけれど、とも。今日はダブルク様達も早々に切り上げると言っていたからこの後が本当に大変なのだろう。
「うーん、どこもおいしかったけれどここのはなんだか特に美味しく感じるね」
「なんでだろう?
でも、ここのシンプルな味付け結構好みかも」
「うん、いいかも。
結構領によってはごてごてした味付けのところもあったものね。
香辛料ってただ使えばいいってものではないのに。
ふふ、あの時アランまともにご飯食べられなくて大変そうだったね」
「前だったら何でも食べられたのにね。
だいぶ家族に甘やかしてもらっちゃったから」
「いいんじゃない?」
前は兄として頑張っていたんだし、と付け加えられる。兄として、か。果たしてラルヘは兄として頑張れていたんだろうか。本物の兄弟じゃ、家族じゃなかったけれど必死に頑張ったな……。でも、この人生になって兄上と姉上に大事にしてもらって、もっとあの子たちにできることがあったのではないかと何度も考えてしまう。僕のワガママに巻き込んで、本当に大切にできていたんだろうか。
「アラン?」
「あ、いやなんでもない」
しまった、考え込んでしまった。しても意味がない後悔はできるだけしないって決めていてもついつい考えてしまうことがある。僕が兄にならなければもっと幸せな人生が歩めたんじゃないかって。でもな……。
……あ、嫌なことまで思い出しちゃった。うん、あれは封印しておかないと。
「……、そういえばもうすぐ無月か」
気持ちを立て直さないと、と思っているとぽつりとシントがつぶやく。無意識に口から出たのかな、というくらい特に表情とかは変わっていない。シント? と今度は僕が呼びかけると、何でもない、とだけ答える。無月って何かあったっけ?
「お二人とも?
早く食事をいただいてください。
屋敷の者も片づけられなくて困ってしまいますよ」
「あ、ごめんなさい!
すぐに食べます」
そう、考え事に集中していて忘れていたけれどまだご飯を食べている途中でした!




