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「なんか変なにおい……」


「きちんとハンカチで抑えていてくださいね」


「はい」


 今日の視察は温泉の源泉だ。実際に温泉がどのようにできているのか、実は知らない。これは実際に行ってみてからのお楽しみ、と言われてしまったのだ。そして、源泉からたどってどのようにお屋敷まで引かれているのか見て、今日はおしまい。人の欲望とはすごいもので、この国の水道というものが発達した理由がこれらしい。

 温泉は源泉のままではどうしても熱い。そして遠い。そこで考え出したのが水道だった、と。いや、本当にすごいよね。僕だったら諦める。だってその時はそれがどういった効果をもたらすものか分からなかったんだよ?


「うーん、でも湯船一杯分のお湯を沸かすって大変だからね。

 もし毎日でも湯に入りたいと思ったらそういう考えに至っても不思議ではないというか……。

 熱するよりも冷ます方が楽そうだし」


「そんなもの?」


「ふふ、そうですね」


 うーん、とシントの言葉に首をひねっていると、その話を聞いていたらしいダブルク様が返事をしてくれる。え、なんかおかしなこと言ったかな。


「ああ、着きましたよ」


 伯爵に指名された男性がそういう。先ほどからずっと気になっていたけれど、やっぱりこれがそうなんだ……。


「大きい……」


 うん、大きい。さすが、一か所からいろんなところに引かれても枯渇しないだけある。これ全部温泉か。


「あ、近づかないでくださいね。

 ここでの温度はやけどしてしまうほど高いですから」


「あ、はい!」

 

 少し近づくだけでもわっと熱気を感じる。これは確かに相当温度高そう……。


「この源泉から、こちらの方に管をひき……」


 そのまま男性は水道の話に移る。正直僕らはそういう話を聞いても理解できない。視察に来ているから当たり前といわれればそれまでだけれど、皆さん本当にすごいよね。一つの専門にこだわらずに本当に国全体の特産に精通している。そんなわけで僕らはいまだに目は源泉に釘付けだ。変なにおいは相変わらずだけれど、だんだんと慣れてきた気がする。


「なんかここに鳥入れたら一瞬で煮えそう」


「え、でもここの匂いつかない?」


「あー、それはいやだ。

 まあ、実際に入ることはないんだろうね。

 さすがに鳥も避けるでしょ」


「まず匂いで避けそう」


「さっきからアランにおいのことばっかだ」


「いや、だって気になるじゃん?」


「君たち、何の話をしているんだ……。

 もう行くよ」


「あ、すみません!」


 ついついシントとの話に気を向けてしまっていた。気が付いたらあきれ顔のダブルク様。初めからそうだったけれど、完全に僕らのお世話係になっていますね。視察団の責任者というだけでもとても大変なのに申し訳ないです。



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