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すみません、80話がぬけていました…。
挿入したため、これ以降87話まで1話ずつズレております。
ダブルク様に続いて移動すると、先ほどまでの寡黙な市場と違ってにぎやかな声が聞こえてくる。そうそう、これが市場だよね。とはいってもやっぱり少しおとなしめだけれど。
「ここはあまりこれといった料理はないんだよね。
多いのは採掘に行ったときに気軽に食べられる携帯食みたいだけれど」
「携帯食……。
あまり好んで食べたいものではないですね」
「そうだよね。
まあ、特産とは言えなくても何か料理食べようか」
あまりここでは食べ歩きをしている人がいないだね。食事処は結構食べられる場所を設けているところが多い。やっぱり特産によっても市場の様子って違うんだ。
「あそこの店に行ってみようか」
ダブルク様がさした先はオープンな飲み屋みたいなところ。これから仕事なのにいいのかな? まあ、本人がいいというならいいのか……。
「こんにちは、4人分席ある?」
「ああ、お好きなところへどうぞ」
どうも、と言って席へ着くとエールを一杯頼む。やっぱり飲むのか? と思ったけれど特に手を付けない。そしてエールと一緒に頼んだ甘辛いタレが絡んだピグ鳥、あまり大振りとは言えない野菜が入ったスープ、スライスされたパン。護衛の人が一口ずつ食べてから僕らにどうぞ、と差し出される。これ、もしも何か良くないものが入っていたらまずくない?
エール片手に店の者と話しているダブルク様を横目に僕らは食事を頂く。まあ、っていう感じかな。ちなみにダブルク様はエール片手といってもほぼ飲んでいない。まあ、そうよね。
「この辺りはあまり治安が良くないと聞いたが……」
「あん?
ああ、兄ちゃんたち外から来たやつか。
くく、それを知っていて坊ちゃんもつれてくるなんて」
真昼間からエールぐびぐび飲んでこの叔父さんは一体なんの仕事をしているんだろう。顔も真っ赤だし、相当飲んでいるみたい。そしてやっぱりいいところの坊ちゃんに見られるのか……。なんだろう、もっとこう、髪をぐしゃぐしゃにしたり、目つきわるくしたりすればいいのかな? うーーん。
「アラ、ン様、どうかなさいましたか?」
「へ、あ、いや何でもないんだ」
どうやら僕が考え込んでいたことで心配をかけてしまったらしい。今考えるのはやめておいて、今度市場に連れて行ってもらえる日までにどうしたらいいか考えておこう。僕がそんなことを考えているうちにどうやら情報収集は終わったらしい。まだエールも食事も残っているけれど、ダブルク様が席を立ったので僕らも慌ててそれに従った。
「すごいな、こっちの市場でもちらほら宝石が付いたものが売っている」
「ああ、でもここに置いているのはくず石ばかりだ。
質もよくない」
「本当だ。
でも値段相当といった感じですね。
妹にはちょうどいいかもな……」
「おやめください……」
確かシントの妹ってまだ結構幼かったよね。一度も会ったことがないけれど。くず石とはいえ、そんな子に宝石はね~。
「エリザベート様にお渡しするならば、きちんとした宝石商で買ってください」
え、あ、そっち? 幼子に宝石は必要ないよ、じゃなくて。ち、小さくても王女様は王女様ということだね……。結局シントは主に買い物をしてみたいという理由で、自分の色にちなんだ宝石がついたネックレスを購入することにした。僕もネックレスを一つ購入した。でもそれはシントの理由とは違って、とあるネックレスに猛烈にひかれたからだ。理由はわからないけれど、なんだか懐かしい感じがする。少し珍しい色をしているし、よくこれがここに売られていたよね。
「大きさにひかれた?」
なんで懐かしいのか、とじっくり見ていると隣からからかうような声が聞こえる。む、僕は別に大きさでこれを選んだわけじゃないのに。
「おーい、お兄ちゃん、焼きバロウどうぞ」
シントに言い返してやろうしていると、不意に露店から声がかかる。どうやら僕らに言ったらしい。ずい、と差し出されたのは丸いものが刺さった串二本。僕もシントも、渡されたものを直接食べてはいけない、とよく言い聞かされているからか、突然の出来事にただ戸惑うことしかできなかった。
「い、いらないです」
「行こう」
すこし冷静に店主を観察してみると、あれだね。嫌な顔している。これは前もあったのだけれど、きっとこの差し出された串を食べたらお金請求されるやつでしょ。いかにも試食です、って空気出して。鍋の横で刺さっているやつは一つの串に4つ刺さっているけれど、今差し出されているのは一つの串に一つ。これじゃあ騙されても仕方ないでしょう。
いらないです、と言っているのに、いいからと勧められる。面倒、とも思ってまた一歩下がると誰かにぶつかってしまった。
「あ、すみません!」
そして振り返ると、そこにいたのはいつかのお祭りで見たような、がりがりに痩せた子供。驚いて声が出ない僕にもう一度ぶつかるとその子は走り去っていった。
「大丈夫か!」
「え、あ、はい」
ダブルク様が焦ったように僕に声をかけるも、呆然としてしまって走り去ったほうを眺めることしかできなかった。




