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すみません、80話がぬけていました…。
挿入したため、これ以降87話まで1話ずつズレております。
「今日はもうここまでにして、馬車に戻ろう。
アラン、けがはどこにもないんだよね?」
「あ、はい。
あ……」
何か違和感がある、その原因にようやく行き当たった。もらったお小遣いを入れておいた袋がなくなったのだ。これは、さっきの子に奪われたんだよね?
「どうしたの、アラン?」
「あ、お金、盗まれたみたい……」
「ああ。
ひとまず戻ろう?」
せかされて歩き出す。少し冷静になって市場を見てみるとこちらをうかがっている視線を感じる。ピリッとした視線に嫌な気持ちになる。ああ、なるほど、確かに治安が悪い。なんだか少し気分が悪くなってきた……。
「アラン、もう少し我慢できる?」
「え?」
「顔、真っ青だから」
ぎゅっと、僕の肩を抱いて少し急ぎ目で歩いてくれる。はい、となんとか答えて僕はひとまず必死に足を動かした。
そして間もなく馬車へとたどり着く。よかった、これで安全だ。ひとまず馬車へと乗り込むと、待っていたサイガが心配そうにこちらを見てくる。でも、今は説明したくないな、なんて。
「アラン、ひとまず水を飲んで落ち着いて。
もう大丈夫だから」
「あ、はい。
すみません、大丈夫です」
とてもそうは思えないけど、と苦笑されてしまう。うう、反論はできない。でも、あの子供とか、突然気づいた視線とか、せっかくもらったお金とられちゃったこととか……、ってそうだ!
「あの、すみません、お金!」
「え?
ああ、気にしないで」
にこり、と笑うダブルク様。本当に気にしていないみたい、よかった。ホッとしていると、サイガがお金? と口にする。しまった。
「何があったのですか、アラン様」
「あ、えっと……。
ちょっとすりに……」
とたんにすり!? と声を上げる。まあそうなるよね。でも何もなかったから、というと、何もではないでしょうと返されて、何も言えませんでした……。
「まあ、領主の屋敷に着いたらまた話そう」
「はい」
僕のせい、とはわかってはいるけれど馬車の中の空気は重い。早くつけ、と思っている間になんとかアーラン侯爵邸の敷地に馬車は入っていった。侯爵邸はどこもそうだけれど、やっぱり大きい。そして辺境伯邸のように堅牢ではないから、目でも楽しめる。これぞお屋敷といった感じがする。
「ようこそいらっしゃいました、視察団の皆様。
どうぞ、こちらのお屋敷ではごゆっくりとお過ごしください」
「歓迎感謝する」
「早速ではございますが、当主がサロンにてお待ちです」
荷物を侍従や下男が受け取っている中、僕ら、というよりも視察団の顔である上位貴族の名を持つ人、ついでに僕とシントもサロンに案内される。正直今すぐ休みたい。
そして向かったサロンでは予想通りこの侯爵家の子供である二人がいた。
「こんにちは、よくいらっしゃいましたね。
前に会ってからは少し間が空きましたか、ダブルク殿」
「ええ、お久しぶりです、アーラン侯爵」
軽い挨拶が交わされた後、子供は子供同士で、とサロンの端のほうへと誘導される。そこには四席分のソファが向かいあうように置いてあるから確信犯だろ。もう休みたい。
「ごきげんよう、シフォベント殿下。
殿下のお披露目会以来でしょうか」
「ええ、お久しぶりです、リークアル嬢。
こちらは友人のアラミレーテ・カーボです。
アラミレーテ、こちらはリークアル・アーラン嬢だ」
「アラミレーテ・カーボと申します。
よろしくお願いいたします」
「よろしくお願いします、アラミレーテ様。
こちらはわたくしの弟、グリーサカですわ」
「グリーサカ・アーランと申します」
よし、これで顔合わせは終わったのだから部屋に下がらせてくれ。もう疲れた……。
「アラミレーテ様、わたくしアラミレーテ様は眼帯をされていると聞いていたのですが……。
本日はされていないのですね?」
音もなく侍女が置いていったお茶を一口飲んだタイミングでそんなことを聞かれたから、思わず吹きそうになったじゃん。うん、そっか。いつか誰かに聞かれるとは思ったけれど、ここでか。
「え、ええ。
体調が悪いときとかはつけるようにしているのですが……」
「まあ、そうでしたの」
ああ、面倒だ。言いたいことがあるならはっきりと言えばいいのに、と思うけれど、そういうわけにはいかないのだろう。こちらも直接言わせるわけにはいかないから、こうして遠回りの会話を続けなければいけない。
「それにしても、わたくしアラミレーテ様が眼帯を付けてらっしゃるのは、同情を引くためだと耳にしましたの。
ええ、もちろん信じてはおりませんわ。
ですが誰にも理由をお話にならないので、皆様つい疑ってしまうのです」
あああ、面倒! そりゃ思っていた、眼帯なんて目立つものつけておいて、急に外したら訝しく思われるって。だからちゃんと理由も考えている。この人にそれを言わなくてはいけない意味が分からないけれど。
「あら、もしかして何か言えない理由なのですか?」
「ご令嬢」
きっとこの応酬にしびれを切らしたのだろう。シントが声を上げる。でも、ここでシントに助けてもらっていちゃだめだよね。僕はシントにだけ聞こえるように名前を呼ぶ。それだけで意図を察してくれたようでそれ以上は何も言わないでくれた。




