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「夕飯前にすまないね。
屋敷に帰ったら今日あったことを聞いて……」
「大変申し訳ございませんでした!
末の子、それも娘だったためにどうしてもかわいく思えてしまい、甘やかしてしまいました。
責は親である私に」
そういって勢いよく頭を下げる。子供が起こしたことの責任をなんのためらいもなく負えるのは親としてはいい親なのだろう。でも貴族としては少し微妙。どう反応したらいいのかわからなくて、結果僕は無反応を貫くことになってしまった。それはシントも同じなよう。
その様子に何を勘違いしたのかより顔色を悪くしている。これ以上言ったら倒れそうだね、本当に。
「あの、顔を上げてください。
というか、一度落ち着いてください」
このままじゃ話にならない、そういった様子でシントが言うと、ひとまず顔を上げてくれた。ダブルク様はすまないね、とこちらに言うとひとまずサロンに移動しよう、という話になった。さすがに4人で話すにはこの部屋は狭いからね。
サロンに移動するとすでにお茶の用意がされていた。勧められた席についてハタと気が付いたんだけれど、この場に僕がいる必要ってあるのか? 一応物申したのはシントで、僕は特に何も言っていないし。あ、でも、一応無礼を働いたのは僕にもか。
「初めに聞きたいのですが、お二人は今日のことをなんと聞いているのですか?」
「あ、あの、フルシアがお二人に無礼を働いたと。
そしてガルシアンもシシティアもなにかお気を悪くすることをしてしまったと聞いております」
それってほとんど何も聞いていないってことじゃない? まあ帰宅から僕たちのところに来るのが妙に早かったからそんな感じだとは思っていたけれど。それに対してダブルク様が頭が痛そうにしている。視察帰りだったというのにお疲れさまです。
「まずはきちんと説明するところから始めましょうか。
はじめ僕たちはガルシアン殿、シシティア嬢に学院の話を伺っていたのです。
するとフルシア嬢が急に立ち上がって、そんな話ばかりではなく遊びましょう、と言い始めたのです。
その後、侍女に連れられてフルシア嬢はサロンを去っていき、残られたお二人が代わりに謝られたのです。
ですから僕は本人が何をしてしまったか自覚したら、フルシア嬢が謝りに来てほしい、そう伝えたのです」
シントが話を終えると、ダブルク様はなるほど、とうなずいている。子爵の顔色はいまだ治っていないようだけれど。でもここまで丁寧に説明すれば、今ここで子爵が謝っても意味がないとよくわかるだろう。
「それで?
こうして子爵までもが謝られたわけですが、フルシア嬢本人はどうされているのですか?」
静かに問うシントにこたえられない子爵。これは説得失敗しているな。どんだけ問題児なんだ、フルシア嬢は。いや、まあフルシア嬢だけが悪いわけではないとは思うけれど。
「ならば、今こうして時間をとっていただいても問題は解決しません」
シントの言葉に何も返せないでいる子爵。シントもこれ以上言うことはないようで、サロンには沈黙が広がっている。そんな空気を壊したのはふふふ、という場違いな笑い声。それを発したのはどうやらダブルク様みたいだ。
「うん、これはシフォベント殿下が正しいですね。
リキューシア子爵、至急速やかに、最悪我々がここを出るまでにこの問題を解決するように」
「は、はい」
それでこの話し合いは終わった。まあここは子爵に頑張ってもらうしかないでしょう! 夕飯はどうなったかというと、子爵家の子供たちはそれぞれ部屋での謹慎を言い渡されたらしく、僕らは普通に食堂でいただきました。この後はまた大人たちでお酒でもたしなむのかなと思っていたら、ダブルク様に呼び止められてしまった。
「それで一体なんの話でしょうか?」
「よく、頑張ったね」
部屋で三人きりになると、ダブルク様は途端に言葉を崩して僕らの頭をなでてくれる。え、ちょ、これはどういう状況!?
「あの、ダブルク様?」
「あの対応は君らなりの優しさだろう?
正しい行動だったよ」
「ダブルク、殿?」
二人して混乱しているなかでもダブルク様の手は止まらない。いやいや、いまだに状況に頭が追いついていません。
「シントも、アランも、優しい子たちなのは知っている。
気を使わせてしまって申し訳なかった」
事前の調べが足りなかった、とダブルク様が謝る。
「い、いえ!
ダブルク様が謝る必要はありません。
僕がもう少しうまくフォローできればよかったのです」
あの時はついシントに従うだけになってしまった。もっと上手なフォローができれば、あの場で問題を収められたかもしれないのだ。
「ほらほら、二人ともそんな落ち込んだ顔をしないで。
さっきも言っただろう、正しい行動だったと」
大丈夫だから、そう言い切ってくれたダブルク様の言葉になんだかほっとした。




