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 市場を見ながらご飯も食べていく。僕らが食べる前にダブルク様やバーバライザ様が毎回毒見のように一口口にしてくれる。果たしてこれは本当にいいのだろうか、といまだに戸惑っているけれど後で話を聞けばいいか、と素直に受け取ることにする。シントはともかく、僕よりもダブルク様たちのほうが身分は上なんだけれどね……。


「次はあそこの店を見ようか」


 ダブルク様が示したのは服飾店。服になる前の布も売っているみたい。所狭しと並べられたそれらの布はとてもきれいで、目を奪われてしまった。そんな僕をくすくすと笑うのはやめてほしかったけれど。


「おや、珍しい。

 リンキュ布ですね」


「え、ええ。

 今はもうだいぶ手に入りにくくなっていますよ!」


「ああ、そうだね。

 質がいいものなのに、不当なつり上げもなく販売している……」


「そりゃあ、旦那。

 これ以上値上げして、買い手がつかないほうが困りますからね」


 リンキュ……? 確かミドレリュ大陸の一国だよね。リンキュ布ということはおそらくそこの国の布なのだろう。他大陸の国と大まかな特性については学んだけれど、まずは国内のこと、とほとんど学んでいないんだよね。リンキュ王国の特産の中には確かに布もあった気がするけれど、どうして手に入りにくくなっている?


 そんなことを考えている間にもダブルク様、バーバライザ様は店主との談話を続けている。


「ねえ、シント。

 リンキュ王国ってミドレリュ大陸の国だよね?

 どうして特産が手に入りにくくなっているか知っている?」


「うーん……。

 詳しくは知らないけれど、天候の乱れが最近ひどいみたい」


 天候の乱れ? ということはそもそも生産自体が危ぶまれているってことか。それってかなりまずくない? だって、代々引き継いできたものが危うくなるほど、天候が変わってしまったってことでしょう。後でこのあたりの話も聞きたいな、と思っているうちに大人たちの話も終わったみたい。結局ダブルク様はリンキュ布を購入していた。あれはきっと奥様へのお土産かな。


 そんな風に市場を回っていくと、近くに待機していた馬車に乗って今度こそ領主の屋敷に向かうことになった。ここでは特に怪しい動きはない、という結論になったみたい。それにしても、ダブルク様の策略? 最初は恐ろしい、と思っていたけれど、今はそんなこと思わない。本当に自然に会話しているだけなのだ。情報を抜きたいというよりも、会話を楽しんでいる。だから相手も警戒しないのだろう。その暖かな様子はほっこりする。


 市場に視察にでなかったメンバーは先に屋敷に向かっている。それでもことさらゆっくりと進んでいたようで、荷物もなく身軽な馬車が急ぐとなんとか追いつくことができた。


「さあ、見えてきましたよ。

 あれがリキューシア領領主の館です」


 あれが! と目を向けるも少し拍子抜け。思っていたよりも、なんというかこじんまりしていたのだ。さすがに辺境伯家のタウンハウスよりは大きいけれど、領地の屋敷には及ばない。


「ふふふ、子爵領の領主の館はあのくらいの規模が一般的ですよ。

 王城はもとより、辺境伯の領主の館にも及ばないでしょう?」


 どうやら僕が考えていることはお見通しらしい。なんだか恥ずかしくなって僕はついうつむいてしまった。


「ようこそいらっしゃいました、視察団の皆様」


 屋敷につくと、領主と思われる恰幅の良い中年男性が歓迎をしてくれた。その後ろには妻と思われる女性、僕よりも年上と思われる男女に同い年くらいの女の子がいる。どうやら家族総出で出迎えてくれたらしい。どちらかというと忌避されるイメージがあったからこの歓迎ぶりには正直驚いた。


「出迎えありがとう。

 久しいな、リキューシア子爵」


「ええ、お久しぶりです、ダブルク様。

 お元気そうで何よりです。

 さあ、皆様お疲れでしょう。

 まずは部屋に案内させます」

 

 どうやら知り合いらしい。端的な会話を終えると早速部屋に案内するために使用人が出てきた。上級貴族となるとまた違うみたいだけれど、子爵といった下級貴族の場合、客室も多くはない。まあ、それは屋敷をみてよく分かったのだけれど。だから、視察中は何人かの相部屋になる可能性もある、といったことは事前に聞いていた。ここではどうやら僕はシントと相部屋のようだ。続きの部屋でサイガたちも休むみたい。

 シントと相部屋。なんだか楽しみだ。



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