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一行は特に問題もなく目的地、リキューシア領に到着した。これからは予定通り初めから領主の屋敷に行くのではなく、ひとまず市場を見て回る。着替えは馬車の中で済ませたので、もう準備は万端。そうそう最後に少し長めに伸びた髪はひもでくくっておかないと。そういう目的もあって、馬車はリキューシア領に入るとまもなく停車した。まだ市場も遠いけれど、視察用の国章が入った馬車で近くまで行ったら台無しだもんね。
「さて、ここかから先何があるかわかりません。
十分に注意してくださいね」
「はい」
王都とカーボ領以外に行くのは初めてでドキドキしてくる。シントはそもそも王都からでたことがないと言っていたこともあって、わかりやすいくらいワクワクとしている。あれだね、自分よりも興奮している人を見ると逆に冷静になれる。ありがとう、シント。
「さあ、ここから市場までも少し歩くよ。
行こうか」
視察組は何も全員市場等に顔を出しているわけではない。ほんの数人が交代で各領で羽を伸ばしつつ視察をするというわけだ。今回の同行者は初めてなので顔なじみがあるダブルク様とバーバライザ様。安心できる。
「はい、二人ともしっかりと魔法をかけられていますね」
瞳の色を確認してもらってから、四人で市場を目指す。まあ、四人といってもこっそりと護衛もついてきているけれど。
しばらくすると目的地が見えてきた。にぎやかではあるけれど、やっぱり王都ほどではないかな。少し疲れたね、そういいながら市場に入っていくとなんだか視線を感じる。え、何か変なところあったかな、とちらりとダブルク様たちのほうを見ると特に気にしていなさそうだ。
「何か飲もうか」
「え、あ、はい」
本当に気にしていないんだ、と面食らっているとそんな提案をされる。確かに何か飲みたいと思っていたからうれしいんだけれど、いいのかな?
「すみません、リンゴとブドウの果実水を一つずつ」
「は、はいぃぃ。
あ、あのこの辺りでは見かけない顔だね……?」
ダブルク様が声をかけると果実水を売っているおば様が顔を赤らめている。そっか、ダブルク様もバーバライザ様も顔が整っているものね。
「ええ、旅の途中で寄ったのです。
ここはとてもおいしい果実で有名ですからね」
「ああ、とってもおいしいからいろいろと食べてみるといい」
「そういえば、最近何かこの領地でありましたか?」
「何か?
いいや、とくには。
はいよ、果実水二杯だよ」
「ああ、ありがとう。
そっか、じゃあ聞き間違えだったんだね」
こくりと受け取った果実水を飲みながら、もう一つをバーバライザ様に渡す。バーバライザ様も一口口にすると、二人ともそれぞれ僕らにそれ等を渡してくれた。え、毒見みたいな役目をお二人がやってくれたってこと!? も、申し訳ない……。シントと顔を見合わせた後に、お礼を言ってそれを受け取ると確かにとてもおいしい。王都で飲む果実水は果実の風味がする、といった感じだ。でもこれは違う。きっと使っている果汁の量が全く違うのだろう。
「じゃあ、次に行こうか」
おば様との話は終わったらしい。その場を離れようとするダブルク様に残念そうな視線を向けているけれど、まったく気にした様子はないね。まあ、この方もう奥様いるからね。
「何か変な噂なんてありましたか?」
果実水のお店から離れて少しすると、シントがそう口にする。確かに先ほどダブルク様がそんなことを口にしていたね。
「いや、何もないよ。
でもそうやって話を持ち掛けたほうが素直に話してくれることが多いんだ」
なんと、これも戦略でしたか!! だ、ダブルク様って実は恐ろしい人?




