68
姉上の婚約問題が解決しないまま、僕は王都を出発することになった。やっぱり姉上は王妃なんて無理、自分はカーボ領で暮らしていたい、という結論になったみたい。それをエキソバート殿下を筆頭にして王族の方々が引き留めている。その関係でなかなか話がまとまらないみたいだ。ちなみにシントは賛成でも反対でもない中立派で、僕たちに対しても申し訳なさそうにしている。
「さて、準備は万端かい?」
「はい!」
「ふふ、いい返事だね」
この一年で相当慣れてきたらしいダブルク様は、今はこうして自然に話してくださる。仲良くなれて本当にうれしいです。ダブルク様は本当にやさしくて、まだ子供がいらっしゃらないからか、僕たちのことをとても気にかけてくださる。優しくて頼りになる兄上って感じがする。
「ダブルク様、出発できます」
「ああ、ありがとう。
では行ってまいります、シベフェルラ公爵」
「ああ、頼んだ」
そうしてなかなかの大所帯で王城を出発することになったのだ。
「初めに行く場所のこと、覚えていますか?」
「はい。
果物が有名なアークレッフェ公爵リキューシア子爵領ですよね」
僕の言葉にダブルク様がうなずく。よかった、あっていた。
「それにしても果物か。
実際になっているところは見たことがないんです」
「そうなのですね。
きっとリキューシア領では今も果物が実っているはずです。
タイミングが良ければ収穫を手伝えるかもしれませんね」
果物の収穫! やってみたい。シントと顔を見合わせるとお互いに瞳が輝いていることがわかる。やっぱりなんだか面白そうだよね。
ちなみに馬車の中では特に瞳の色を変えていない。僕は両目を同じ色にするのに使っているけれど。これはまだ魔力を使い慣れていない僕たちがずっと使っていて、人前に出たときに切れると大変だから、という理由らしい。
「リキューシア領は近いですからね、今日中につきますよ」
「今日は町にも降りるのですか?」
「うーん、まだ決まっていません。
到着の時間やその他もろもろの兼ね合わせですね」
町降りてみたいんだよね~、とは口に出せない。ひとまず馬車では極力休むこと。それが僕に対するこの視察の最低条件だった。ちなみにこの馬車だけ特別製だったりする。ソファはふっかふか、幅広タイプでこの小さ目な体では余裕で横になれる。そして豪華にも魔法で温度調整もされている。うーん、本当にすごい。
まあ、初めて視察に王族が参加するということで張り切ったみたい。僕にとってもありがたい話だけれど。この馬車に乗っているのは僕とシント、ダブルク様とそれぞれの執事だ。まあ、この視察においてひとつの馬車に6人はとっても少ない。そして周りには近衛騎士という最強の守り。もともと護衛の騎士はつく予定だったけれど、近衛騎士が来るのは相当調節があったみたい。といっても3人ととても少人数。
「さあ、アランは今のうちに少し眠っておくといい」
「はい。
起こしてくださいね?」
しっかりとうなずくのを確認してから、僕は目を閉じた。今日は朝早かったから眠くなってきていたんだよね。それはシントも同じだったようで、隣でもおやすみなさい、という言葉が聞こえてきた。
誤字報告ありがとうございます!




