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 翌朝、僕はいつものように朝食の席に向かっていた。昨夜はみんなが帰ってくる前に寝たから感想を聞けていない。兄上はなぜか積極的には夜会の話をしてくれないんだよね。だから朝早くから会いに行きたかったんだけれど、皆様つかれていますから、と止められてしまったのだ。ということで、今日の朝はゆっくりめだ。


 誰か来ているかな、そんなことを考えながら扉を開けるとすでに兄上と姉上が来ていた。


「はぁ、本当にあの方は何を考えているんだ」


「あの、申し訳ありません、お兄様」


「いや、マリーは悪くないよ」


 あれ、なんだか変な空気? もしかしてタイミング悪かったかな。


「あ、あの、おはようございます兄上、姉上」


 ひとまず朝の挨拶はしなければ。おずおずと声をかけると途端に二人は笑顔になった。


「おはよう、アラン」


「アラン、起きていたのね」


「兄上たちこそ、もっと遅くに起きるのだと思っていました」


「いや、十分に休めたよ。

 それにアランに会って癒された」


「ええ、本当に。

 昨日は、ね」


 言葉を濁すと二人とも何とも言えない顔をしている。きっと昨日はいい一日ではなかったのだ。せっかくのデビュタントであったのに。一体何があったのか、聞くのも少しためらわれる。だって聞いても何の力にもなれないだろうから。


 どうしよう、と悩んでいると父上と母上もやってくる。これで全員揃った。僕たちが微妙な空気になっていることに気が付いたのだろう。二人も苦笑いしている。うーん、何もできないのに聞くのもな、と思ったけれどここはやっぱり聞いておこう。なんとなくその方がいい気がする。


「ひとまず朝食をいただきましょう」


 母上の一言でメイドたちが朝食の準備を始めていく。これはひとまず朝食だね。


 いつも通りの朝食。まあ、料理人自体が違うから領地とは少し味が違うけれど。前回は兄上と二人きりだったこの食堂に家族みんな揃っているって改めて不思議。もぐもぐとおいしい朝食を食べ終わると早速サロンへ移動する。やっと話が聞けるね。



「それで一体何があったのですか?」


「ああ、それがね……」


 ここはためらっても仕方ない、単刀直入に切り出すと兄上がためらいがちに口を開く。それを止めたのは父上だった。というか父上、お仕事はいいのですか?


「お前は王太子殿下の婚約者の選定についてどれほど知っている?」


 殿下の婚約者? なんだかつい昨日そんな話をしていたよね。でも選定の基準とかについては特に知らない。だから僕は何も、と答えた。


「そうか。

 まあ、端的に言うと、三大貴族の勢力バランスを保ちつつ王妃を選ばなくてはいけない。

 そういう理由から今まで殿下の婚約者はなかなか決まらなかったのだ」


 三大貴族、つまり基本は公爵家から王妃を決めていると。年齢からいけばちょうどいいのはクルミレート家のベルベリット様だけれど、今の王妃様もクルミレート家出身だもんね。なるほど、とうなずくと父上が話を進めていった。


「そして、昨日はマリーのデビュタントがあった。

 もちろん王太子殿下もその夜会には参加されていてな。

 そして、マリーに一目ぼれしたと、その場で婚約を申し込んだんだ」


 静かに言い切った父上。怒っているようにも呆れているようにも感じる。えーーと、今なんて? え、婚約を申し込んだ? 姉上に? 確かに候補にはあると聞いた。けれど急に婚約って申し込むことあるの? やばい、状況が理解できな過ぎて疑問しか浮かばない。姉上も困った顔しているし。


「うん、意味が分からないよね。

 大丈夫、僕もだから」


 あ、兄上。笑顔なのになんだか怖いです。


「あの、結局どうされたのですか?」


「もちろんその場では保留。

 後日正式に話し合いの場を設けることになったよ。

 でも僕はマリーが嫌なら断っていいと思う」


 きっぱりという兄上。ずっと感じてはいたけれど、相当怒っていらっしゃる。まあ、僕の感覚からいっても夜会の人目があるところで、いきなり一目ぼれはちょっと……。この国の王太子本当に大丈夫か?


「わ、わたくしは、正直どうしたらいいのかわからないのです。

 今まで考えたことがなかったですし……」


「姉上、僕は姉上がどのような選択をしても味方です」


 姉上のほうに行き手を握る。すると、姉上はようやくいつものようにやさしく微笑んでくれた。なんにせよ、姉上がしたいようにするのが一番だよね!



誤字報告ありがとうございました!

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