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今日は姉上のデビュタントの日。次の次の日には学園が始まるそうで、本当にせわしない。聞くことによると、今日のデビュタントは学園の顔合わせの意味も含まれているそう。それ、お茶会の方がよくない? と聞いた時は思ったものである。


 さて、なぜデビュタントが成人である学園卒業時ではないのか。もちろんデビュタント=成人という国もあるのに、である。聞くところによるとこの国ではデビュタント、つまり夜会デビューをすることで準成人として認められ、婚約が許されるらしい。お茶会ではやらないダンスや夜のための着飾り方等々を完璧にこなしてこそ、婚約者としてふさわしいか否かがわかるとかなんとか……。うん、詳しくは知らない。この話を聞いた時はまず準成人って何よ、と思ったものだ。9歳のお披露目は貴族として認められる日、デビュタントは準成人、本格的に家の仕事にかかわったり見習いとなったり、婚約者を持つことが認められる日、そして学園卒業の日が1人前の貴族として認められる日だ。因みに結婚もこの年から出来るようになる。そのため、我が国は他国と比べ女性が学べる機会がきちんと確保されているらしい。


 話を戻そう。今日は姉上のデビュタントに向けて我が家では朝から大忙しである。姉上や母上、そして屋敷の侍女たちや執事たちが、だが。今日の姉上のエスコートは兄上がやるらしいが、特に今はやることはないと言っていた。だからこそ、こんな日に僕の部屋に遊びに来られるのだろう。


「アランもデビュタントまであと4年だね」


「それはそうですが……。 

 その前に兄上の卒業があるでしょう?」


「ああ、そうだね。

 そうしたら僕はカーボ領に戻ることになるから、こうしてアランと一緒にいられる時間は貴重だね」


「そう、ですね。

 そう言えば、兄上には婚約者はいらっしゃらないのですか?」


「それを誰に聞いたの?

 僕にはまだいない。

 父上も無理に決める必要はないとおっしゃってくれているからね」


 やっぱりいないのか。先日ちらりと聞いたことだが、この年で婚約者がいないのは珍しいことらしい。でもそれは殿下も一緒だ。この二人の婚約者が決まらない影響で、ご令嬢方もなかなか婚約者を決めない。結果、現在のアルフェスラン王国はかなり珍しいことだが、準成人でも婚約者がいない人であふれているらしい。何という悪影響。


「なぜエキソバート殿下も婚約者をお決めにならないのでしょう?

 お相手となる方はゆくゆくは王妃となられる方。

 早々に教育が必要なのでは?」


 ふと思ったことを口にすると、兄上は苦笑いをしていた。


「アランはそんなことを考えているのか。

 まあ、エキソバート殿下の婚約者はなかなか決めるのが難しい状況だ。

 もしかしたらマリーがその座に収まるかもしれないけどな」


 姉上が!? そんな話は初耳である。え、姉上があの殿下と? いやいやお優しい姉上にはふさわしく……、いやそんなこと言ってはダメですよね、ハイ。


「王家の婚約者は選定にいろいろと基準があるから決まりにくいんだ」


 まあ、結局は僕に関係ないこと。そうなのですね、と返すことでこの話は終わった。


 そしてしばらくした後、姉上が今日のドレスを見せに来てくれた。途中で抜けて着替えた兄上も一緒である。


「うわぁ!

 とってもきれいです、姉上。

 デビュタント、おめでとうございます」


 デビュタントは白いドレスだ。でもシンプルではない。いや、前から見ればまだシンプルなのだが、背中側にはふんだんにフリルが使われている。もちろん素材もさわり心地も光沢もとてもお上品なものになってる。


 姉上と対になるように作られている兄上の衣装ももちろん素敵だ。デビュタントを意味する白はもちろん避け、こちらは襟元にフリルが使われているだけで、ドシンプル。でも、素材は姉上のドレスと同じものが使われている。うーん、兄上もやっぱり素敵だ。


「ふふ、ありがとうアラン。

 楽しんできますわね」


「お手をどうぞ、お姫様。

 今夜は精一杯エスコートいたします」


「まあ、光栄ですわ、お兄様」


 クスクスと笑いながら姉上はそう受け答える。どうやらあまり緊張はしていないそう。最後の仕上げも済ませた兄上たちが王城へとむかうのを僕は一人屋敷から見守ることとなった。


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