三日目(後編)
お昼の時間になりました。
三人?仲良くテーブルを囲んでいます。
ラミアは器用に、椅子に蛇みたいな下半身を巻きつけて腰を下ろしています。
ラミアの作った昼食ですが、龍族の料理は揚げ物が多いみたいです。
肉や野菜や海産物に衣をつけて揚げたものに、米というものを、浸した水が無くなるまで熱を加えた料理です。
ご主人様は龍族の料理の米に大喜びしています。
私の立場が危ういので、さっそく召還したばかりの新鮮な毒蛇を開いて衣をつけて揚げてきます。楽しみにしててくださいね、ご主人様。
おや、ご主人様は魚介類がお嫌いの様子です。私の料理が役に立ちます。
有り難い事に目をつぶって味わって頂いておられます。
私の愛が充分届いている様子が窺えます。
ラミアも物欲しそうに見ていますね。
しょうがない、一つだけですよ。
これは共食いではないのでしょうか?
「お口に合いましたか?」
私は殆ど何もしていませんが聞いておきましょう。
徐々に好みに合わせていきたいので…。
「二人の料理は見た目も味も素晴らしい。あんな材料や調味料がこんなに美味しくなるとは。嫁なんてまともな食材で劇物を作るのに…。」
賄いは感想がとても気になるものです。ラミアも安心したようなので片付けをしましょう、二人だと家事がとても楽になります。
迷宮管理センターから使い魔が来たら役割分担してもよさそうですね。
「迷宮支援組合の魔物も扱えるようになったな。電気の魔物を追加召還しておこう。」
エレキトリックイールを10体召還したご主人様です。
電気を吐き出すトカゲで、意外なことにつぶらな瞳と水色の体が可愛いです。
「あの、その魔物は…お利口なので…細かい命令も聞きます。」
「それは助かる。ゴブリンメイジと一緒に集めてくれ。」
魔族では人型の魔物が多く、知能も高いのですが、龍族の魔物は違うみたいですね。
龍族の魔物は人型が極端に少なく、龍に近い魔物が多いです。
きっと龍型の魔物は知能が高いのでしょう。
「知能が高い魔物は訓練をさせると強くなります。稀に連携を取るようにもなります。でも人間ほどではありませんが。」
「知能の高い魔物は消費魔力に見合った働きをしそうだね。コストは割高だけど。」
すでに召還の為の魔力をお金に見立てて損得勘定をしているあたりは流石ですね。
普通の管理者は、強い魔物だから消費魔力が多くてもしょうがないという認識なのですが。
監視室の前に並べられた雷属性の魔物達に、魔法やスキルを使わせて、それを真剣に見るご主人様。
「見た感じ上位の魔法やスキルは電圧…いや、ワット数が高いか。ワット数はそのままで電圧を下げて電流値を上げて。」
命令を下すご主人様。すみません、私でも理解出来ません。
ラミアなんて自身の尻尾を結んでみたりして遊んでます。
頭を抱えるご主人様を、命令の意味がわからず、つぶらな瞳で見つめながら首を傾げるエレキトリックイール。
「わかった、威力は少々下げてもいいからなるべく長時間、敵に当ててくれ。複数で一人を狙うんだ。」
あ、妥協したご主人様、これなら皆出来そうです。
効果が薄い敵は後回しとか女性は電気のダメージで動けなくなりやすいとか全身金属鎧には効果が薄いとか仰ってます。
「体が濡れている敵には効果が大きい。」
なるほど、だから高温多湿の環境にしたんですね。
ひととおり訓練が終わると、エレキトリックイールに跨るゴブリンメイジが数組出てきました。
さっそく連携をとっているのですね。
エレキトリックイールの雷耐性をゴブリンメイジが利用している形です、これなら同士討ちもなくなります。
無事に訓練を終えて迷宮を歩くご主人様、後ろには私とラミアがいます。
立ち止まり詠唱を始めるご主人様。
「我が名において命ずる、焔に従えし邪悪な眷族よ常世を覆う霧となり姿を現せブリーブ」
唱え終わるや否や油の匂いを放つ霧が一瞬で迷宮全体を覆い、自らの足下すら見えなくなります。一瞬遅れて迷宮の至る所で爆発が起き、激しい轟音と爆風がありとあらゆる方向から襲い来ります。あまりの迫力に幻術と分かっていても両手で顔を覆わずにいられません。そして永遠に続くかと思える程長く爆発が連続して起こります。
ふとラミアの方に目をやると、爆発と爆発の僅かな隙間にみえるその姿は茫然と立ち尽くしているようです。
そして直ぐに爆発に呑まれます。
しばらく続いた爆発の後に満足げな口調で仰るご主人様。
「どう?この魔法は?ラミア、他にもメテオストームってのがあるんだけど。」
「えっ?あ、あの?今…何か起きたんですか?詠唱に…失敗したのかと思ってました。」
唖然とするご主人様。どうやらラミアの方がはるかに魔力に優れている為、ご主人様の幻術魔法は効果が無いようです。
「そっか…。」
落ち込むご主人様に私は慌てて言います。
「素晴らしい魔法でしたよ!この魔法で生じた隙をついて私とラミアが攻撃を仕掛ければ、熟練の冒険者でもなすすべもないでしょう。」
「そ、そうです。私の…魔法は…隙を付いたほうが、効果が…高いのです。流石…旦那様です。」
空気を読んだラミアの援護もあって、ご主人様は元気を取り戻してくれます。
「これで冒険者とも渡り合えるね。でも、君たち無理はしないようにね。」
私とラミアも連携を取れるようになったみたいです。
今日の訓練の最大の成果ではないでしょうか?
そろそろ夕食の支度をしないといけませんね。
柔らかくなるまで煮込んだ大きな肉を入れたビーフシチューとサラダを用意します。
ラミアにはご主人様のお気に入りの米を用意して貰います。
米に合うと言われている、野菜に塩等をまぶして重しを乗せて漬けた物も添えておきます。
私は早くも、ご主人様の味の好みや好き嫌いを把握しつつあります。
料理を作る側にとっては、どの食材を美味しそうにされて、何を残されるかがとても印象に残る為、当然ともいえますが…。
私達の料理をお召しになったご主人様は、今までになく満足されたご用意です。
さっそく私とラミアの連携をご覧に入れる事が出来ました。
「この夕食は最高のものだったよ。今日は疲れただろう。明日からは冒険者との戦いが待っている。2人共、ゆっくり休むようにね。」
こうして新たな使い魔を加えた私達の1日は終わるのでした。