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三日目(前編)

昨日は色々なことが起きました。

一晩経っても今だ興奮の醒めぬ使い魔のリリです。

残念ながら、ご主人様は寝室で絶対安静中です。

私は、今日の迷宮の改装を任されてしまいました。

本日は迷宮の改装の為、休業です。

これからお金を稼がないといけないので、一生懸命頑張ります。

今は、ご主人様の用意された指示書を見ながら迷宮を作り変えているところです。

まず保留したままの一階層は、密林のようにするそうです。

迷宮の地下一階に進めば、そこに密林が広がっているとか色々とおかしいような気がします。

階段まで一直線に来られては困るので、階段の付近だけは川や崖を用意しています。

どうせなら、全体を迷路状にすれば良いと思うのですが、駄目なのでしょうか。

これは指示書に描かれた地図の通りに作ればいいので楽なのですが、問題は次です。

木々の配置も作るように指示されています。普通ここはランダムで設定するものだと思っていました。

えーっと、木々を配置した小さな区画を5つ6つ作って、同じ配置が並ばないように区画の方向を変えつつ並べていけと。何か、意味があるのでしょうか?

でもよかった、意外と楽そうですね。

迷宮の設定を終えるまでは入り口を開放出来ないので、明日までに完成しなかったらどうしようかと思ってました

ちなみに、冒険者が一人でも迷宮内にいた場合、迷宮の設定や入り口の閉鎖が出来ません。

ご主人様は、定時つまり17時近くになっても冒険者が残っている場合は魔物を総動員して排除しろと仰ってました。

捕獲を優先させているご主人様ですが、このときばかりは情けは無用だとか。


これは昔聞いた話ですが、騎士を育成する学校というものがあるらしいのです。

なんでも卒業前に練習として迷宮にパーティーを組んだ生徒が来るとか。

ひよっこと思って舐めていたら酷い目にあうみたいで、通常6人一組のパーティーが何組もやってくるらしいです。

若いと言っても小さい頃から剣や魔法の訓練をやってきた人達なので、成人してクワやモリから剣に持ち替えた通常の冒険者より遙かに強いみたいです、親も大切な跡取りに何かあったら一大事なので良い装備を持たせてますしね。

うまく退治出来れば、良い稼ぎにはなりそうです。


あとは迷宮全体を高温多湿にして、冒険者を長く居座らせないようにすればいいみたいです。

これは魔法で水をかぶったり、冷気や霧を漂わせたりされて対策されそう。

ご主人様は魔物のカタログをご覧になっていたとき、熱帯の密林に適した蔓状植物の魔物に興味を惹かれていました。

あの手の魔物は殺傷能力はほとんどありませんが、耐久性と捕獲能力に秀でていましたね。

他にも、主に洞窟風の迷宮に適した触手型魔物を熱心にご覧になっておられましたから、冒険者の捕獲を好まれるのでしょう。

熱帯の密林は利点が多く、様々な魔物の繁殖にも有効です。

食料、主に肉類の心配はなさそうです。

ついでですが、ご主人様に早く元気になってほしいので、後で毒蛇でも召還しておきましょう。

私はとても食べる気になりませんが、言い伝えでは滋養強壮に良いとされています。


魔物の配置は、一階層は動物や植物系の魔物を多数配置するそうです。

基本強い魔物は配置せずに、他階層の魔物のエサ場として機能させるのでしょう。

この密林で一番強い魔物でも、大型の黒豹程度ですね。

3~4メートルを超える大きさにもかかわらず素早く、音を立てずに襲い来る魔物として人間に恐れられています。

私からすれば隠密行動は稚拙で図体の割りに力も無くしかも遅いといった認識です。

私に、毛皮を提供する為に配置された魔物なのでしょう。

丁度私も、温かい服が欲しかったのです。

ご主人様に限らず、一般的に男性は暑がりなので室内の設定温度は低くされていますから。


二階と三階には、電気の魔法やスキルを使う魔物を配置するようにと書かれています。

雷属性で高温多湿の環境に適応する魔物なんて数が限られてそうです。

電気を放つ発光体、ゴブリンメイジ、空中を漂うクラゲ、小悪魔とかが候補ですね。

普通は色々な属性の魔物を配置したほうが良いのですが、何か良い考えがあるのでしょうか?

ご主人様は何も知らないようで、変わったことを知っておられるお方なのであとで聞いてみましょう。

ついでに雑用や村を襲わせる為に、オークを20体召還しておきます。

ご主人様が何か変わったことを仰られたらオークにやらせます。

彼らの強さは駆け出し冒険者が一対一でなんとか勝てる程度の魔物なので、数が揃っていれば略奪とかもこなしてくれるでしょう。

本当はリザードマンの方が役に立つのですが、ご主人様にはしばらく会わせられません。


そうそう、オーブの魔力を使う事により、管理者は自らを回復させたり若返ったり出来るのですが、これはお昼まで黙っておきましょう。

ご主人様の為にも、ちょっと痛い思いをしたほうが良いのです。

前いた世界ではきっと甘やかされていたのでしょう。

軽率な行動が多過ぎです、物事を安易に考えすぎです、きっと困ったら誰かが助けてくれると思っているのです。

多分、そんな世界で生きていたのでしょう。

ここは心を鬼にして、身を持って知って頂きます。


あとは迷宮管理センターから新しいレンタル使い魔が来るはずなのですが、創造主である上級魔族様が直々に新しい使い魔を作ってくれるようです。

昨日、ご主人様が色々な使い魔を考案したそうで・・・まあ、明後日には来るでしょう。


少し早いですがご主人様に怪我を治せる事をお伝えします。

え?甘い?きっともう判って頂いているはずです。

それに昨日はまともにお顔を見ることすら出来ませんでしたし・・・。



「若返れるのか。面白そうだ。永遠の17歳とか。」

楽しそうなご主人様、多分見た目が私と同じくらいになりますね。

黒髪黒目だしお似合いの二人になりそうです。やったー。

さっそく、オーブに命令を下し全身が光り始めるご主人様です。

・・・痛い思いは何も勉強にならなかったみたいです。

若返ったりして大丈夫なのか?身体に害は無いのか?とか考えないのでしょうか?

もうこれは私が頑張るしかないようです。

おお、ご所望の17歳になられました。

普通に若くなられただけですが、今までを知っているだけに可愛らしい感じです。

「若くなられた姿も素敵です。」

ここは本心を言っておきましょう。

「ありがとう。そうだ。さっき寝ながら新しい魔法を考えたんだ。」

気を良くしたご主人様は目をキラキラさせて仰います。

抱きしめて差し上げたいです。

「迷宮で披露しよう。」

「それは、またの機会にお願いします。」

どんなに凄い魔法でも所詮幻術ですから、正直見てるこっちが辛いのです、不憫で。

「迷宮の設定は終わりました。お時間が余ってしまいましたね。何でも仰ってください、ご主人様。」


さりげなく時間の事を言っておきましょう。

男性の考えていることの6割はHな事だと言われています。

現在のご主人様の年齢だと9割近くでしょう。

私としては新しい使い魔が来る前に自らの地位を確立しておきたいのです。

「冒険者の使うアイテムに罠を見破るものはあるのかな?」

いきなり予想外の言葉が発せられました。

私の罠を見破られた気分です。

「罠の作動の為の魔力を読み取る兜や眼鏡があります。価値は中級だったと思います。」

「中級者以上には罠は、効果が薄いと考えたほうが良いか。」

あごに手を当てて考える仕草も可愛いですね。

「よし、いい考えがある。手伝ってくれ。」

「そう思ってオークを20体ご用意しております。何なりとご命令ください。」

いきなりオークが役に立ちます。

「鉄片とか鉄製のゴミと塩水と油と燃えやすい木を大量に。あと扉を密閉する為にニカワとなめし皮だ。購入しても良い。」

何をされるのでしょうか?とりあえず、用意しましょう。

必要な物は安く手に入るはずです。

「三階の小部屋の扉の隙間を皮で密閉しておき、室内に鉄をばら撒き塩水をかけてくれ。最後に部屋の中央付近に幾つもの大きな焚き火をするのだ。油をかけておいてもいい。無事に火がついたら、皆部屋を出て扉を閉めてそれ以降誰も扉を開けないように。」

なんかの魔術の儀式でしょうか。

「事故対策してた人間がこれをやるとは。」

悲しそうに呟く姿が印象的でした。

モニターから焚き火を眺めていると、どの部屋もまだ木が残っているのに何故か途中で火が消えてしまいました。

ご主人様に、「ちょっとオークでも使って中の様子を見に行かせましょう。」と言うと、全力で止められます。

部屋に入っただけで死ぬとか仰っていますが、怪しいものです。

これは魔力を使ってないので見破られる事は無さそうです。

モニターごしでは、なんの変化も見て取れないですが。


「迷宮支援組合に連絡はとれるかな?」

モニターを眺めながらオークの仕事ぶりを見ているご主人様が突然意味不明な事を仰ります。

「連絡は取れますが。龍族達の組織ですよ?迷宮管理センターから鞍替えされるのですか?」

もちろん私は既にご主人様のものですからまったく問題無いのですが。

「どちらの組織に身を置くか迷ってる姿勢を見せる。交互に使い魔を購入したり、安くて良い物を買おうと思うんだけど、問題はある?」

「サポートを謳う組織なので、鞍替えとかしないのであれば妨害される事は無いでしょう。」

基本的にどちらを利用してもいいはずなので大丈夫でしょう。

さっそく、龍族の使い魔が派遣されるそうです。

どんな使い魔なのでしょうか?

龍族の扱っている商品にも興味があります。

「これで暫くは敵は冒険者だけになるといいんだけど。」

なるほど、なるべくお金を使わずに安全を買おうというのですね。



「お初に・・・お目にかかります・・・、旦那様。・・・使い魔のラミアと・・・申します。」

龍族の使い魔を迎えます。

背中まで伸びたストレートの赤毛に赤い大きな瞳、整った顔立ちは作られた存在ならではでしょう。

髪や目の色が自己主張している割には、おとなしそうな印象の顔立ちですね。

おどおどした口調は龍族の使い魔とは思えません。

あ、すごく胸が大きいです、わざとなのか、クネクネして胸を揺らしている姿は、殺意を覚えます。

服は龍族らしく派手な色で、おへそ出してます、腰のくびれもアピールしています、魔族とは趣向が違うものですね、生意気な。

短めのスカートから、あれ?蛇みたいな下半身です。2メートルぐらいの長さがニョロニョロしてます。

所詮は龍族ですね。人間の事をわかっていません。

人間は、自分達の姿により近い存在を好みます。

自らの容姿が認められない事の不便さは私も味わってきました。

「よろしく。尻尾が可愛いね。触ってみてもいい?」

いきなりお気に召されたご主人様、心が広い事はすばらしいのですが。

「どうぞ・・・あ、あの・・・やさしく・・・お願いします。」

思わせぶりな仕草が怒りを誘いますね。

ラミアの尻尾をさするご主人様。

「どうぞ。これから・・・可愛がってください・・・旦那様。」

ラミアは急にご主人様の手を取り、自らの胸に押し当てて、いや、挟み込みました。

器用な芸当が出来るのですね、よっぽど肉塊に変わりたいらしいです。

私の殺気を感じたのか、ラミアはご主人様の手を離し、私のほうを向いて。

「奥方様も・・・よろしくおねがいします。」

「昨日ご主人様に買っていただきました。使い魔のリリです。よろしくお願いします。」

なかなか殊勝な態度も取れるようですが、立場は明確にしておかないといけません。

「あら・・・お似合いの二人だったので・・・申し訳ありませんでした・・・。黒髪が美しい・・・お姉さま。」

どうやら彼女とは良い関係が築けそうです。


驚いたことに龍族の方針では最初の使い魔はサービスで貰えるみたいです。

迷宮管理センターがつぶれる日は近いのかもしれません。

ちなみにラミアは暗黒魔法が使えるようです。

状態異常や束縛等の魔法はご主人様にとって大変有用でしょう。

「あとで我が奥義をみせてやろう。」


ご主人様はラミアに対抗しようとしてますが残念ながら、比べるまでも無いのです・・・。

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