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1票で相手にされるまで

「次」

 三浦がコメント欄を追う。

 《徴兵制とか言ってたけど、日本では憲法上できないんじゃない?》

「あ」

 三浦は少し考えた。

「徴兵制、憲法に禁止って直接書いてありましたっけ?」

 憲法前文まで暗唱した三浦には、自信があった。

「俺、憲法かなり読んだんですけど、“徴兵制は禁止する”って文はなかったと思います」

 グリフが答えた。

「直接そう書いた条文はない」

「ですよね」

「ただし、現在の政府見解では、徴兵制は憲法13条や18条などの趣旨から許されない、と明確にされています」

 グリフは手元の端末で確認した。

「しかも政府は、この解釈について、変更の余地はないという立場を取っています」

 三浦が画面を見る。

「じゃあ、さっき俺が、“徴兵制を始める法律ができたら”って例に出したのは、あまりよくなかった?」

「今すぐ起こりそうな例として聞こえたなら、よくなかったな」

「そこは訂正します」

 三浦はすぐにカメラへ頭を下げた。

「現在の政府見解では、徴兵制は憲法上認められないという立場です」

「僕らの制度を説明するために、分かりやすい極端な例として出しました。徴兵制が近いうちに始まると言いたかったわけではありません」

 コメント欄に、

 《訂正できるのはいい》

 《でも解釈って変わるじゃん》

 という文字が流れた。

 三浦もそれを見つけた。

「ただ、“政府の解釈って変わることあるよね”というコメントもあります」

「集団的自衛権とか?」

「そうだな」

「前は駄目で、今は条件付きで認めるようになったんだろ?」

「かなり単純化すれば、そう見える」

「そう見えるって何だよ」

 グリフは少し困った顔をした。

「政府の説明では、憲法9条についての基本的な論理そのものを変えたわけではなく、安全保障環境の変化を踏まえて、その論理を新しい状況へ当てはめた結果、一部の集団的自衛権の行使が認められるようになった、という整理なんだ」

 三浦は数秒黙った。

「……日本語としては、難しいな」

「分かる」

「前は認められないと言ってたものが、条件付きで認められるようになったんだろ?」

「結果だけ見れば、そう感じる人は当然いる」

「集団的自衛権も、分かりやすく説明して」

 グリフは考えた。

「たとえ話だから、正確には違うぞ」

「はい」

「三浦が誰かに襲われているとする」

「グリフは助けてくれる」

「普通ならな」

「普通なら?」

「国の集団的自衛権は、“友達が殴られたから一緒に殴り返す”ほど単純じゃない」

「違うの?」

「日本と密接な関係にある国が攻撃されて、それを放置すると日本そのものの存立が脅かされ、日本国民の命や権利が根底から覆される明白な危険がある」

 三浦が固まる。

「もう難しい」

「しかも、ほかに適当な手段がなく、武力を使うとしても必要最小限」

「友達のけんかの例に戻して」

「じゃあ」

 グリフは考えた。

「三浦が襲われている。ただし、お前を助けないと、その相手が次に俺の家族の家へ襲いに来ることが明らかで、警察を呼ぶ時間も逃げる方法もない」

「そこで初めてグリフが助ける?」

「たとえとしては、そのくらい条件が付くと思ってくれ」

「俺だけが殴られてるなら?」

「国の制度の例なら、それだけでは直接同じ話にはならない」

「友達甲斐ないな」

「外交と友達付き合いを一緒にするな」

 コメント欄に笑いが流れる。

「でも」

 三浦は少し真面目な顔になった。

「徴兵制については政府が、“解釈を変える余地はない”と言っている」

「そうだ」

「だったら、俺たちが“将来、徴兵制になるかもしれませんよ。怖いでしょう。だから電子署名を作りましょう”って言うのは……」

 三浦は、先ほどの質問を思い出した。

「ポピュリズムに近づかない?」

 グリフは少し驚いた顔をした。

「そうだな」

「不安をあおって、自分たちの政策に賛成させることになる」

「だから、今の政府見解と現実的な可能性は、きちんと説明したほうがいい」

「じゃあ、改めます」

 三浦はカメラを見た。

「徴兵制になるぞ、と僕は主張しません」

「現在の政府は、徴兵制は憲法上できない、解釈変更の余地もないと明確に言っています」

「それを前提にします」

「そのうえで、徴兵制に限らず、僕らが将来予想していなかった大きな政策変更が出たときに、国民側から“もう一度考えてくれ”と言える仕組みがあったほうがいい」

「そっちが僕らの主張です」

 グリフがうなずいた。

「それならいいと思う」

 三浦は小声で言った。

「危なかったな」

「生配信だからな」

「録画にすればよかった」

「もう遅い」


 *


 三浦はコメント欄を見た。

「そろそろ最後にしようかな」

 開始から予定していた時間を、すでにかなり過ぎている。

「これにします」

 《三浦さん1人が国会議員になっても、何もできないんじゃないですか?》

「うん」

 三浦は苦笑した。

「これは僕も考えました」

「まず、当選すること自体が難しいです」

 コメント欄に、

 《そこからか》

 と流れる。

「そこは認めますよ」

「仮に当選したとしても、僕1人でこの政策を法律にするのは難しい」

「議員立法を出すにも、1人では足りないんですよね」

 三浦がグリフを見る。

「衆議院なら、議員が法律案を提出するには、原則として20人以上の賛成者が必要だ」

「予算を伴う法律なら?」

「50人以上」

 三浦が大げさにのけぞった。

「増えた」

「参議院なら人数は違うけど、お前は衆議院を目指してるからな」

「つまり、俺が1人当選して、“電子署名基盤法案を出します”ってやっても出せない」

「協力する議員を集める必要がある」

「そこでね」

 三浦は少し身体を前へ出した。

「これは、まだグリフにも言っていなかったんですけど」

 グリフが横を見る。

「何だ?」

「俺、国会で自分の1票を売ろうと思ってる」

 部屋の空気が止まった。

 グリフの目が見開く。

 画面の外で、上村の手が止まった。

 久保も、腕を組んだまま顔を上げた。

 3人の頭に、ほぼ同時に同じ言葉が浮かんだ。

 ――終わった。

 コメント欄だけが猛烈な速度で流れている。

 《は?》

 《アウト》

 《買収宣言?》

 《切り抜かれるぞ》

 《今なんて?》

「お前……」

 グリフはそれしか言えなかった。

「どういう意味だ」

 三浦も、言った直後に気づいた。

 グリフとの会話が自然になりすぎていた。

 いつもの勉強会のような感覚で話してしまった。

 今はライブ配信中である。

「あ」

 三浦の顔が固まった。

「違います」

 両手を前へ出す。

「皆さん、今の言い方は、ものすごく悪かったです」

「金で売るという意味ではありません」

「当たり前だ!」

 グリフが思わず大きな声を出した。

「そう。それは当たり前です」

 三浦は早口になった。

「政策と交換するという意味です」

「例えば、ある政党が法案を出して、“三浦さんも賛成してください”と言ってきたとします」

「その法案を、僕も悪くないと思っている。でも、僕の1票が必要だと言う」

「だったら、“賛成する代わりに、僕の公約も少し前へ進めてください”と交渉する」

 グリフは、ようやく意味を理解した。

「政策協議か」

「そうです」

「例えば、電子署名基盤をすぐ作れ、とまでは言わない」

「その党の政策集に、“公的電子署名基盤の整備を検討する”と一文入れてもらう」

「あるいは国民の政治参加制度について、党内で勉強会を開いてもらう」

 三浦の口調が落ち着いてきた。

「もし与党が相手なら、政府に、“全国で電子署名基盤を作った場合、いくらかかるのか”と正式な試算を出してもらう」

「調査だけでも一歩進む」

「そうです」

「俺1人では法案を提出できない。でも、1票を持つ国会議員にはなれる」

 三浦は、自分の考えを整理するように話した。

「その1票を、ただ賛成、反対に使うんじゃなくて、自分の公約を少しずつ前へ進める交渉材料として使う」

 久保が画面の外で小さくうなずいた。

 聞いたことのない発想ではない。

 少数会派や無所属議員が、法案への賛否をめぐって他党と政策協議を行うこと自体は、政治では珍しいことではない。

 ただ、三浦は、それをいきなり、

 ――1票を売る。

 と言ってしまった。

 言葉の選び方が最悪だった。

「お前」

 グリフが言った。

「次から“売る”は禁止」

「分かった」

「絶対使うな」

「分かったって」

「もう切り抜かれてるぞ、たぶん」

「それは……あとで説明動画出す」

 上村が画面外で頭を抱えていた。

「でも」

 グリフは考えた。

「考え方自体は、悪くないと思う」

 三浦が顔を上げる。

「本当か?」

「1人でも、公約を少しずつ実現するための交渉をするということだろ」

「そう」

「だったら、条件がある」

「何?」

「全部公開する」

 三浦が黙る。

「どの法案に賛成する代わりに、相手の党から何を約束してもらったのか」

「政策集へ載せるのか」

「政府へ調査を求めるのか」

「勉強会を開くのか」

「その条件を公開する」

 三浦がすぐにうなずいた。

「いい。それがいい」

「密室で、“今回はこれに賛成するから、次はよろしく”とやったら、今までの政治と変わらない」

「全部、公開する」

 三浦はカメラへ向き直った。

「皆さん。今、決めました」

 グリフが横から言う。

「本当に、今決めたな」

「国会で他の政党と、公約を実現するための政策協議はします」

「ただし、何と何を交換条件にしたのか、できる限り公開します」

「もちろん」

 三浦は人差し指を立てた。

「どんな法案でも条件次第で賛成するわけではありません」

「これは絶対に反対だと思う法案へ、“電子署名基盤を作ってやるから賛成しろ”と言われても、賛成しません」

「そこは最低条件だ」

 グリフが言った。

「あと、お前個人に金をくれる、仕事をくれる、そういうものとの交換は論外だからな」

「当たり前だよ」

「さっきの発言のあとだから、全部言っておいたほうがいい」

「確かに」

 コメント欄には、

 《言い方は最悪だけど考えは分かった》

 《政策取引を公開するなら面白い》

 《結局与党に取り込まれそう》

 《1票でそんな交渉力ある?》

 と賛否が混ざっていた。

 三浦は、その流れを見て少し笑った。

「1票で相手にしてもらえるかは、当選してから試します」


 *


 グリフがコメントを追った。

「まだ重要なのがある」

「何?」

「“電子署名基盤以外の政治課題については、どうするんですか”」

 三浦の笑顔が少し消えた。

「似た質問もある。“経済や外交について立場を明確にしないということですか”」

「ああ」

 三浦はすぐには答えなかった。

 この問題も、グリフたちとは話していた。

「正直に言います」

 三浦はゆっくり話し始めた。

「《話せる国》として、今の段階で、あらゆる政策について固定した公約を作るつもりはありません」

「なぜなら、それを全部決めてしまうと、結局、今ある政党と同じになる気がするからです」

「原発は賛成だから、この党」

「夫婦別姓は反対だから、あの党」

「防衛費は増やしたいから、この党」

「全部を一つのセットにしたくない」

 グリフが口を挟んだ。

「ただし、三浦。国会議員になったら、ほかの法案にも賛成か反対かを決めなければならない」

「それは分かってる」

「“電子署名以外は知りません”では済まない」

「うん」

 三浦はカメラを見た。

「なので、ほかの政治課題を考えない、という意味ではありません」

「今も勉強しています」

「人口が減ること。国の財政や暮らし。外国人の受け入れ。安全保障。エネルギーや食料」

「僕なりの考えも少しずつできています」

「ただ」

 三浦は一度言葉を止めた。

「最初から、“三浦はこの立場です。絶対変えません”と全部決めてしまいたくない」

 上村が画面の外から、少し驚いたように三浦を見ている。

「できれば、今みたいに配信で皆さんと話したいです」

「賛成の人と反対の人の話を聞く」

「詳しい人にも来てもらう」

「それから、自分の立場を決める」

「一度決めても、新しい事実が出たら変えることもあると思います」

 三浦は笑った。

「それこそ、僕らが言ってる、“間違ったら直す”です」

 グリフは少し考えたあと、補足した。

「ただ、選挙まで何も決めないという意味にはしないほうがいい」

「そうだな」

「有権者は、三浦が国会でどう判断する人間なのか知る必要がある」

「じゃあ」

 三浦は少し考えた。

「個別政策の答えだけじゃなくて、判断の仕方も見せる」

「安全保障なら、国を守る必要性と、戦争へ近づく危険の両方を見る」

「外国人政策なら、受け入れが必要な理由と、地域の負担の両方を見る」

「経済なら、今の生活だけじゃなく、将来の負担も見る」

「そういう考え方は、選挙までには見せられると思う」

「それなら、いいと思う」

 グリフが答えた。

 三浦はコメント欄を見た。

「ということで、今後もこの配信で、ほかの政策も皆さんと一緒に考えたいです」

「小さい国民会議みたいに?」

「そうですね」

「今日みたいに、俺が間違ったことを言ったら、すぐコメントで突っ込んでください」

「ただし、できれば優しくお願いします」


 *


 気づけば、予定していた終了時刻を大幅に過ぎていた。

 コメントの中に、一つの短い言葉が流れた。

 《それ、全部当選してからの話でしょ》

 三浦とグリフは、ほぼ同時にそれを見つけた。

 2人は顔を見合わせた。

 数秒の沈黙。

 そして、2人とも笑った。

「確かに」

 三浦が言った。

「国会で1票をどう使うかとか、他党と交渉するとか」

「まず国会議員になってからだな」

 グリフも笑った。

「当選する前から、ずいぶん国会戦術を考えましたね」

「でも」

 グリフは少し表情を改めた。

「当選したらどう行動するかを、当選する前に話しておくのは悪くないと思います」

「特に今日の三浦の、“1票を売る”という発言は――」

「もう言わないでくれ」

「言い方は最悪だった」

「分かってる」

「ただ、発想自体は面白い」

 三浦が少し安心した顔をした。

「よかった」

「1人だから何もできない、で終わるんじゃなく、1人なら1票をどう使えば政策を前へ動かせるかを考えた」

「そこは評価していいと思う」

「では、グリフも賛成してくれたので」

 三浦はカメラへ向き直った。

「当選した場合は、自分の1票を使って、他の政党と公開で政策協議をする」

「この方向で、もう少し考えていきたいと思います」

 コメント欄には、

 《公開なら見たい》

 《選挙前に言ったこと覚えておけよ》

 《まず供託金》

 《当選頑張れ》

 《元芸人のわりに真面目だった》

 さまざまな言葉が流れていた。

 三浦は時計を見た。

「だいぶ時間も過ぎましたので、今日は、このあたりで終わりたいと思います」

「本当に、久しぶりの配信だったのに、こんな話を最後まで聞いていただいて、ありがとうございました」

「また、こうして皆さんと話したいと思っています」

「今日出た批判や質問も、次までに調べます」

「ポピュリズムも、もう少し勉強しておきます」

「俺もだ」

 グリフが言った。

「今日は、三浦が本当に政治の勉強を続けているということを、皆さんに見てもらえただけでも、私は少し安心しました」

「何ですか、それ」

 三浦が横を見る。

「俺が、途中で全部放り出すと思ってたのか」

「最初は思ってた」

「ひどいな」

「三浦にしては、よくやったよ」

 その一言で、三浦の表情が変わった。

 ――あのギャグで締めよう。

「そうだろ?」

 右手が、ゆっくり頭へ上がる。

 上村は、それを画面の外から見ていた。

 三浦が息を吸う。

「俺だって、バ――」

 画面が暗くなった。


 *


「上村あああ!」

 三浦が振り返った。

「途中で切るなよ!」

 上村は配信終了のボタンから手を離し、声を出して笑っていた。

「いや、絶対こっちのほうが面白いと思って」

「最後までやらせろよ!」

「続きが気になるだろ」

「みんな知ってるギャグだよ!」

 久保は座布団の上で腹を抱えていた。

「いい。上村、今のはいいぞ」

「久保さんまで!」

「次回の配信を見たくなる」

「政治の配信ですよ!」

 グリフは、配信の終了した画面を見ながら息を吐いた。

「でも三浦」

「何だよ」

「“1票を売る”は、二度と言うなよ」

 三浦の勢いが急に弱くなった。

「……やっぱり、まずかった?」

「まずいなんてもんじゃない」

 上村が答えた。

「俺、あの瞬間、人生終わったと思ったぞ」

「お前の人生じゃないだろ」

「俺も映ってないから、逃げようと思った」

「友達だろ!」

 久保はまだ笑っていた。

「大丈夫だ」

「何がですか」

「失言はした。だが、その場で説明した。グリフにも突っ込まれた。視聴者にも突っ込まれた」

「はい」

「むしろ今日、お前たちがやろうとしていることが見えた」

 三浦とグリフが久保を見る。

「完成した政策を候補者が一方的に発表するんじゃない」

「質問されて、間違えて、訂正して、その場で考えを修正する」

 久保は配信の終わった画面を指した。

「今日の配信そのものが、《話せる国》だったんじゃないか」

 三浦は少し黙った。

 グリフも、何も言わなかった。

 たしかに予定どおりではなかった。

 ポピュリズムについて即答できなかった。

 徴兵制の例は、途中で修正した。

 国会での1票の使い方は、配信中に初めてグリフへ話した。

 ほかの政治課題をどう扱うかも、視聴者から質問されながら方針が少し変わった。

 事前に作った完成品を披露したのではない。

 話しながら作った。

「そう考えれば」

 三浦が言った。

「失敗じゃない?」

「成功とも言わん」

 久保が答える。

「そこは今後、視聴回数と反応を見て決める」

「厳しいな」

「選挙は、笑ってくれたかどうかだけでは決まらん」

 上村が端末を見ていた。

「あ」

「何だ?」

「もう切り抜かれてる」

 三浦の顔が引きつった。

「どこ?」

「“国会で自分の1票を売ろうと思ってる”」

 三浦は両手で顔を覆った。

「そこだけかよ!」

 久保が、また爆笑した。

 グリフは額へ手を当てた。

 政治団体《話せる国》の最初のライブ配信は、本人たちが望んだ形とは少し違うところから、広がり始めていた。


 *


 三浦のライブ配信は、その後も週に一度のペースで続いた。

 本当は三浦としては、週2回でも3回でもやりたかった。

「数をやったほうが、見てもらえるだろ」

 そう主張したが、グリフに却下された。

「俺にも仕事がある」

「夜だけでいいじゃないか」

「店は夜が一番忙しいんだよ」

「じゃあ上村だけでも」

「俺にも家庭がある」

 上村にも断られた。

 三浦1人で配信する案もあったが、政治についてまだ分からないことが多い。

 専門的な質問が来るたび、

 ――それは次回までに調べます。

 では、さすがに頼りなく見える。

 結局、基本は週1回。

 グリフと上村が参加し、久保は3回に一度くらいの割合で顔を出す形に落ち着いた。

 もっとも久保の場合は、

「政治の配信へ参加しに来ているのか、お笑い映像を見に来ているのか分からない」

 とグリフから言われるようになっていた。

「両方だ」

 久保は悪びれずに答えた。

「今の芸人を知ることも、三浦の選挙戦略を考えるうえで必要だ」

「本当ですか?」

「半分くらいは」

 三浦のノートパソコンには、久保専用の「おすすめ芸人」フォルダまで作られるようになった。


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