三つのレファレンダム
3回目の勉強会は、前回から5日後に開かれた。
その日は三浦が牛丼店の勤務を早番にしていたため、開始時刻は午後7時だった。
グリフと上村がアパートへ入ると、三浦はすでに折り畳みテーブルの前に座り、ノートを広げていた。
壁には、前回の紙に代わって、新しい模造紙が貼られている。
そこには、黒い太字で4つの文章が書かれていた。
1、困りごとを町に伝える。
2、選ばれた町民が、話を聞いて、みんなで考える。
3、町民みんなで投票する。
4、決めたあとも、うまくいったか確かめる。
その一番下には、赤いペンで、
――間違ったら、みんなで直す。
と書き加えられていた。
「これが宿題か?」
グリフは立ったまま、模造紙を見た。
「ああ。倉沢モデル3分版」
「3分もかからないだろ」
「50秒くらいだな」
「削りすぎじゃないか?」
グリフは眉を寄せた。
「町民会議の参加者をどう選ぶのか、情報の公平性をどう守るのか、複数案をどう作るのかが、全部抜けてる」
「それは運営する人が知ってればいいんじゃないか?」
「参加する町民にも、ある程度は分かってもらわないと困る」
「最初から全部説明したら、参加する前に帰るよ」
「でも、これでは普通の住民投票との違いが――」
「俺は分かりやすいと思うぞ」
上村が、グリフの言葉を遮った。
「お前まで三浦の側につくのか」
「側とかじゃない。俺も前回の説明は聞いたけど、あとから覚えてたのは、だいたいこの4つだった」
「2時間半も説明したんだぞ」
「2時間半説明したから、4つ残ったんだろ」
三浦が得意そうにうなずいた。
「そういうことだ」
「お前は黙ってろ」
グリフは模造紙をもう一度見た。
「少なくとも、“困りごとを町に伝える”だけでは、何でも議題にできるように聞こえる」
「下に注意書きをつけようと思った」
三浦はノートを開いた。
「人をいじめたり、誰かの権利を奪ったりする提案は駄目」
「それは必要だな。それから、町民会議に選ばれていない人も意見を出せる」
「それも入れると長くなる」
「長くなっても正確なほうがいい」
「説明を聞いてもらえなかったら、正確も何もないだろ」
2人のあいだに、短い沈黙が生まれた。
上村が麦茶のペットボトルを開けながら言った。
「グリフ、お前が説明してるのは、車の仕組みなんだよ」
「車?」
「エンジンがどう動くとか、ブレーキがどう効くとか、安全検査を誰がやるとか」
「制度を説明するなら必要だろ」
「でも三浦が説明してるのは、乗り方だ。行き先を決めて、乗って、危なければ止まる」
三浦が上村を見た。
「お前、たまにはいいこと言うな」
「『たまには』は余計だ」
グリフは座布団へ腰を下ろした。
正確さを求めれば、説明は長くなる。
説明を短くすれば、誤解が生まれる。
どこまで削ってよいのか。
それは、グリフが町議だった頃から何度も悩んできた問題だった。
「三浦」
「何だ」
「お前、この説明を作るのに、どれくらいかかった?」
「3日」
「そんなに?」
「最初の10秒で、3分説明するのは諦めた」
「10秒で諦めたのに、3日かけたのか」
「グリフの話を思い出そうとしたけど、途中からふわっとしてきたんだよ。それで、ネットでも調べた」
「何を読んだ?」
「大学の先生が書いた論文みたいなやつ」
グリフは少し感心した。
「読めたのか?」
「読めなかった」
「何だよ」
「オーナーシップとか、コミットメントとか、ステークホルダーとか書いてあった」
上村が首をかしげた。
「何の話だ?」
「俺にも分からない。あと、包摂的なプロセスが必要らしい」
「包摂的って何だ?」
「いろんな人を仲間外れにしないって意味だ」
「だったら、最初からそう書けばいいのにな」
「だろ?」
三浦は勢いづいた。
「しかも、市民会議を1回開くのに、主催者、進行役、専門家、資料を作る人、評価する人が必要で、何千万円もかかる例があるんだぞ」
「国レベルなら、もっとかかるだろうな」
「倉沢はいくら使ってるんだ?」
三浦は待っていた質問を投げるように尋ねた。
グリフは少し考えた。
「最初の町民会議と住民投票は、中堅の町職員1人分の年収くらいだった」
「それでも結構かかってるな」
「職員の人件費をどこまで含めるかにもよる。ただ、今は案件によって1,000万円を超える」
三浦の目が大きくなった。
「1,000万円?」
「オンライン配信、機器の貸し出し、託児や介護の費用、資料の作成、通訳、外部の専門家への謝礼。以前より参加しやすく、公平にしようとすれば、それだけ費用は増える」
「1,000万円あったら、コミュニティバスを何本走らせられる?」
「俺も最初はそう思った」
「思ったのか」
「町民会議へ金を使うより、そのまま問題の解決に使ったほうがよいという批判は、毎回出る」
「何て答えてるんだ?」
「間違った事業を始めれば、1,000万円では済まない」
グリフは答えた。
「何億円もかけて施設を造ってから、住民が使わないと分かることもある。反対運動で事業が止まれば、それまでの調査費用も無駄になる。最初に意見を聞くことで、そうした失敗を減らせる」
「本当に減ったのか?」
「少なくとも倉沢では、町民会議を経た事業は、始めたあとの大きな反対が少ない」
「参加した人が納得してるからか?」
「参加していない人も、どういう議論があったか見られるからな。それに、自分の意見とは違っても、理由を聞けば受け入れられることがある」
三浦はノートに、
――話し合いにも金はかかる。失敗にはもっと金がかかる。
と書いた。
「それ、俺の言葉みたいに使うなよ」
「分かりやすくしてやったんだ」
「また削りすぎだ」
上村が笑った。
「でも、伝わるぞ」
グリフは反論しかけたが、やめた。
実際、分かりやすかった。
「最近は、倉沢へ視察に来る自治体も増えてるんだ」
グリフは続けた。
「町民会議を導入したいという市長や職員もいる」
「広がってるじゃないか」
「視察には来る。でも、実際に始める町は少ない」
「何で?」
「説明しているうちに、顔が暗くなっていく」
「今日の俺と同じだな」
「参加者をどう選ぶか。資料の公平性をどう確保するか。オンラインと対面をどう組み合わせるか。議会や町長との関係をどうするか。費用はいくらかかるか」
グリフは指を折った。
「最初は前向きだった担当者が、最後には“庁内で検討します”と言って帰っていく」
「役所の断り文句だな」
上村が言った。
「倉沢は10年かけて、失敗するたびに仕組みを足してきた。完成した形だけ見せられても、ほかの町には重すぎるんだと思う」
「10年分の装備を、最初から全部背負わせるからだろ」
三浦が言った。
「そうかもしれない」
「初心者用が必要なんじゃないか?」
グリフは三浦を見た。
「初心者用?」
「最初の1回から、倉沢と同じことを全部やらなくていいだろ。これだけ守れば最低限できる、という小さい形を作る」
「町民会議の入門版か」
「そう。それで何回かやって、必要なら増やせばいい」
グリフは、町議を辞める前に考えていたことを思い出した。
現在の倉沢モデルをそのまま他の自治体へ移すのではなく、最低限の仕組みに絞った導入モデルを作る。
自分でも必要だと思っていた。
だが、何を削るべきか決められなかった。
「お前の4つは、その入口としては使えるかもしれないな」
グリフが言った。
三浦は一瞬、聞き間違えたような顔をした。
「今、褒めた?」
「入口としては、と言った」
「初めて認めたな」
「制度の説明としては足りない」
「またそれか」
「でも、最初に興味を持ってもらう説明としては、このくらいでいいのかもしれない」
三浦は上村に向かって手を出した。
「勝ったな」
上村も軽く手を合わせた。
「何の勝負だ」
グリフは呆れたように言ったが、内心では三浦への見方が少し変わっていた。
話を聞いていなかったのではない。
三浦なりに、どこを残せば普通の人へ伝わるか考えていた。
正確な制度を作る力とは、別の力だった。
*
「それじゃ、今日の本題に入る」
グリフは鞄から新しい資料を取り出した。
「今回は、スイスの直接民主制についてだ」
「スイス」
三浦が言った。
「時計と銀行の国だな」
「あと、アルプスとチーズ」
上村が付け加えた。
「間違いではないけど、今日は政治の話だ」
グリフは、スイスの国旗が印刷された資料をテーブルへ置いた。
「スイスは、直接民主制が最も発達している国の一つと言われている」
「アイルランドより?」
「仕組みが違う」
「どう違う?」
「アイルランドで前回話したのは、市民会議で普通の人が時間をかけて考え、その結果を議会や国民投票につなげる方法だった」
「学習と熟議」
三浦が言った。
「言葉は嫌いだけど、意味は分かってきた」
「スイスでは、市民会議を必ず開くわけではない。中心になるのは、国民発議とレファレンダムだ」
三浦のペンが止まった。
「出た。難しい言葉」
「国民発議は、国民の側から提案する仕組みだ」
「レファレンダムは?」
「国民投票と訳されることが多い。ただ、スイスでは、議会が決めたことを国民の判断にかける仕組みという意味が強い」
三浦はノートに、
――国民発議=国民から提案
――レファレンダム=議会の決定を国民が確認
と書いた。
「大きく3つに分けると分かりやすい」
グリフは紙に3本の線を引いた。
「一つ目が、国民発議だ」
「国民が法律を作れるのか?」
「国レベルでは、国民が憲法の改正を提案できる」
「普通の法律じゃなくて、憲法?」
「そうだ。18か月以内に、有権者10万人の署名を集める」
「10万人」
三浦は目を丸くした。
「日本で考えれば、もっと必要になるな」
「人口比で単純に換算するものではないけど、日本なら100万人を超える規模になる」
「無理だろ」
「簡単ではない。ただ、全国に組織があったり、多くの人が関心を持つ問題なら集められる」
上村が尋ねた。
「署名が集まったら、そのまま国民投票か?」
「まず政府と議会が内容を調べる」
「そこで却下されることもある?」
「形式や、国際法の絶対に守らなければならない規範に反する場合などを除けば、議会が気に入らないというだけで消すことはできない」
「議会は賛成か反対かを決める?」
「国民に、賛成を勧めるか、反対を勧めるかを示す。それとは別に、元の案より穏やかな対案を出すこともある」
「対案?」
三浦が聞いた。
「国民発議の方向性には理解を示すが、そのままでは極端すぎる。そこで議会が、もう少し実現しやすい案を出す」
「国民の案を潰すためか?」
「そういう場合もあるだろう。でも、国民の問題提起を受けて、現実的な妥協案を作る働きもある」
上村がうなずいた。
「全部認めるか、全部拒否するかじゃなくて、話し合いになるわけか」
「そうだ。発議した側が、議会の対案で十分だと思えば、自分たちの案を取り下げる場合もある」
「取り下げない場合は?」
「国民投票で両方を聞くこともある」
「2つとも賛成だと思ったら?」
「両方に賛成できる。そのうえで、両方が可決された場合には、どちらを優先するかも選ぶ」
三浦はしばらく考えた。
「投票用紙、難しくないか?」
「だから説明資料が必要になる」
「倉沢モデルみたいに町民会議で整理しないのか?」
「国の制度として必ず市民会議を挟むわけではない。政党や市民団体、新聞、テレビなどを通じて議論する」
「ネットでも大騒ぎになるな」
「なるだろうな」
「それで国民発議が通るには、何票必要なんだ?」
「投票した国民の過半数だけでは足りない」
「まだあるのか」
「州の過半数も必要だ」
三浦はペンを止めた。
「州?」
「スイスでは、州に当たる地域をカントンという。26ある」
「国民全体で賛成が多くても、州の過半数が反対なら駄目?」
「駄目だ」
「何で?」
「人口の多い都市部だけで、国全体の憲法を変えられないようにするためだ。国民全体の多数と、地域の多数の両方を必要とする」
グリフは紙に2つの丸を書いた。
一つに「国民」、もう一つに「州」と書く。
「両方が賛成して、初めて憲法が変わる。これを二重多数という」
「東京や大阪だけで決めるな、地方も納得させろということか」
三浦が言った。
「日本と単純には比べられないけど、考え方は近い」
「地方の人口が少なくても力を持てる」
上村が言った。
「その代わり、人口の少ない地域の1票が、相対的に重くなるという批判もある」
「どっちが公平なんだ?」
「公平には、いろいろな考え方があるということだ」
「また、その答えか」
三浦は不満そうに言った。
「政治で、全部すっきりする答えを期待するな」
*
「2つ目が、任意的レファレンダムだ」
グリフが続けた。
「任意的?」
「国民が求めた場合に行われる、という意味だ」
「何を求める?」
「議会が作った法律を、国民投票にかけることだ」
三浦の表情が少し変わった。
「議会が決めたあとで?」
「そうだ。新しい法律が正式に公表されてから100日以内に、5万人分の署名を集める」
「国民発議より少ないな」
「憲法を変える提案ではなく、議会が作った法律について国民に聞けという要求だからな」
「5万人集まったら、法律はどうなる?」
「国民投票が終わるまで、本格的な施行を待つことになる」
「投票で反対が多ければ?」
「法律は成立しない」
三浦は、ノートへ書きながら小さく言った。
「国民が、議会に待ったをかけられる」
「そうだ」
「それ、すごいな」
「スイスの直接民主制で重要なのは、国民が何でも自分たちで決めることではない」
グリフは言った。
「普段は議会が法律を作る。ただし、国民が納得できなければ、最後に止めることができる」
「国民の拒否権か」
三浦が顔を上げた。
グリフは一瞬、黙った。
「そう表現することもできる」
「分かりやすいだろ」
「かなりな」
上村もうなずいた。
「政治家が勝手な法律を作っても、国民が止められる」
「その可能性があるだけでも、議会は国民の反応を気にするようになる」
グリフが言った。
「実際にレファレンダムまで行かなくても、反対運動が起きそうなら、最初から反対側と相談して法律を修正することがある」
「国民投票が、いつも使うブレーキじゃなくて、ブレーキがあるから無茶な運転をしなくなる」
三浦が言った。
「それも分かりやすいな」
上村が笑う。
「今日は三浦が調子いいな」
「俺だって馬鹿じゃない」
三浦は右手を頭へ載せた。
一瞬の間を置き、白目をむきながら手のひらを前へ出す。
グリフも上村も反応しなかった。
「そこは突っ込めよ」
「今、大事なところだから」
「大事なところに入れたから、緊張をほぐそうとしたんだよ」
「政治の説明に毎回それを入れるな」
「使い方は考える」
三浦は真顔に戻った。
「でも、この拒否権はいいな。政治家を全員信用しなくてもいい仕組みだ」
「逆に、国民がいつでも正しいとも限らない」
グリフは答えた。
「感情的な宣伝に流されることもある。少数者の権利を傷つける結果が出る危険もある」
「また悪いところを足すなよ」
「制度を理想化するなと言ってるんだ」
「でも、議会だけで決めるより、止める道が一つ増える」
「そこは確かだ」
*
「3つ目は、義務的レファレンダムだ」
「今度は国民が署名を集めなくてもやるのか?」
三浦が尋ねた。
「そうだ。憲法を変えるときは、必ず国民投票をする」
「議会が全員賛成でも?」
「全員賛成でもだ」
「最後は国民が決める」
「それに、国のあり方を大きく変える一部の国際的な取り決めなども、国民投票が必要になる」
「これも、国民と州の両方の過半数?」
「憲法を変える場合はそうだ」
三浦は、3つの制度をノートへ並べた。
1、国民発議。国民から憲法改正を提案する。
2、任意的レファレンダム。議会の法律に待ったをかける。
3、義務的レファレンダム。憲法を変えるときは必ず国民に聞く。
「これなら分かるな」
上村が言った。
「提案する権利と、止める権利と、最後に決める権利か」
三浦が付け加えた。
グリフは三浦のノートをのぞき込んだ。
「かなり大胆にまとめたな」
「間違ってるか?」
「大きくは間違ってない」
「また“大きくは”かよ」
「細かく言えば、制度ごとに対象も手続きも違う」
「最初の説明なら、これでいいんだろ?」
三浦は壁の4項目を指した。
グリフは苦笑した。
「入口としてはな」
「その言葉、便利だな」
*
「スイスでは、どのくらいの頻度で国民投票をするんだ?」
上村が尋ねた。
「投票日は、国全体で年に4回ほど設けられている」
「毎回、一つ?」
「一度に複数の案件を投票することが多い。国の問題だけでなく、州や市町村の投票が同じ日に行われる場合もある」
「投票用紙が何枚も来るのか」
「説明の冊子も届く。政府や議会の考え、賛成側と反対側の主張などが載っている」
三浦が顔をしかめた。
「全部読む人いるのか?」
「読む人もいるし、読まない人もいる」
「投票率は高いんだろうな」
「毎回の平均では、4割を少し超える程度とされている」
「低いじゃないか」
三浦が言った。
「国民が政治を決める国なのに、半分以上来ないのか?」
「そこは、スイスでも議論がある」
「強制的に投票させないのか?」
「一部にそうした仕組みを持つ地域もあるが、国全体では強制ではない」
「投票しない人が多いなら、本当に国民の意思と言えるのか?」
上村が尋ねた。
「それは直接民主制の弱点の一つだ。ただ、年に何度も、複数の問題について投票する。すべての案件に全員が関心を持つのは難しい」
「自分に関係があるときだけ行く人もいる?」
「いるだろうな。いつも同じ4割が投票しているとも限らない」
「学校の問題なら親が行って、年金なら高齢者が行く」
「そうなる可能性はある」
「だったら、関係のある人ばかりで決めることにならないか?」
「それも課題だ」
三浦は両手を広げた。
「問題ばかりじゃないか」
「問題のない制度なんてないよ」
グリフは答えた。
「大事なのは、今の制度の問題と、新しい制度の問題を比べることだ」
「今の日本だって、選挙の投票率は高くない」
上村が言った。
「4年に1回しか選べないのに、それでも行かない人がいる」
「スイスなら、あとから政策ごとに意思を示せる」
「そういう違いはあるな」
「国民発議は、実際によく通るのか?」
三浦が尋ねた。
「むしろ、否決されるもののほうがずっと多い」
「10万人も署名を集めたのに?」
「署名した10万人と、国民全体の考えが同じとは限らない」
「じゃあ、苦労して集めても無駄じゃないか」
「可決されなくても、政治的な効果はある」
「どういうこと?」
「これまで議会が扱わなかった問題を、国民的な議論にできる。議会が対案を出すこともある。発議そのものは否決されても、一部が法律に取り入れられることもある」
上村が言った。
「国民発議は、投票に勝つことだけが目的じゃないのか」
「問題を政治の議題に載せる力でもある」
三浦はノートに書いた。
――国民が、政治の議題を決められる。
「それもいいな」
「何が?」
「日本だと、何を国会で話すかも、だいたい政治家が決めるだろ」
「国民が要望を出す方法はある」
「でも、無視されることもある」
「あるな」
「スイスでは、10万人集めれば、少なくとも国民全体に聞くところまで行く」
「憲法改正の提案として条件を満たせばな」
「細かいことはあとで覚える」
「その言い方が不安なんだよ」




