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 戦時特例により企業に就職する場合は全て労働組合員でなければならない、企業は給与天引きにより組合費を支払うとの規則が制定されていて労働組合は何もしなくても組合員の増加と共に使い切れないほどの組合費が内部留保として残っていき、急速に巨大化した時期であった。その為苦労知らずのわがままな労働組合幹部が育成されることになり、企業経営を意識しない要求をストライキで押し通して解決すると言う手段が常態化してしまっていた。

 その急速な労働組合の台頭に共産化の危機感を覚え、企業就労に労働組合員でなくても良いことと労働組合による政治献金の禁止、ストライキの議会による中止議決を盛り込んだ「タフトハーレー法」を6月に議会で成立している現状であった。

 この法によって企業は労働組合に入らない人間の採用を加速していく流れが起きることは明白であり、政治的ロビー活動が制約され企業に対する労働組合のストライキによる諸問題の解決方法も取りづらくなったことは、労働組合の衰退を意味し未来においても覆すことの出来ない流れの始まりとなった。

この集まりの中で、一番の熱量を放っていたのが電気労連のタウンゼント・ドット代表であった。彼は常に経営陣との対立を軸にして部分的なストライキやサボタージュを提唱して今後の闘争方針としたい。との見解を述べていた。

 どの組合も今後の展開を一新するような案を提示するところはなかった。ところが鉄鋼労連のホイッグ代表と鉱山労連のハンセン代表が自動車労連の推すMrシミズの提唱する新時代の労働組合としての取り組みを支持し、今後の成果次第では全面的な運動方法の転換も視野に入れている旨の発言をしたものだから会場が一時騒然となった。

 特にタウンゼント・ドット代表が「イエローモンキーの軟弱で卑怯な組合方針などとても受け入れられない。リメンバー・パールハーバー!」と内容を最初から理解せずに案としての排斥を主張し始めたから、その後に説明しようと控えていた俺の出番が回って来る雰囲気ではなくなった。

「ドット代表が聞きたくなければ、書記だけ残して帰っていただいて結構だ。我々の生き残りを賭けた真摯な戦略を求めている。議会に対しても企業に対しても、当然組合員に対しても誠実に組合員としての未来への利益を受け取ることが出来る確かな組合運営が求められている。いたずらに経営側と対立したりおもねることなく、理性的な対応で相手と現実的要求を合意する方向作り出す能力を組合執行部に求めていく。その為のスキルを訓練するショップ運営や将来を見据えた資金運用などの総合力を我々自身が学ばなければ、企業経営陣の瑕疵を指摘して企業の正しい未来展開を導けない。

 いち早い斜陽産業からの避難的組合員転職訓練によって、先のない企業の淘汰を労働組合が実践できる能力を身に着ける。沈む船からは真っ先に労働組合員が逃げ出せることによる安心感を与える。

 搾取型企業については、組合員の早期引き揚げと組合員に対する認知の徹底。場合によっては広報的採算重視型対抗企業の育成。

 一番重要なのは、労働組合による資金創出と利益創出を作り出せる人材発掘と機能分野の創造を常に考えていく柔軟な組合執行部の育成。知恵を絞りだして、組合員の未来を見通す努力をしない組合ならば退出して貰って結構だ。」

 おいおい!カーター代表。俺が言いたかった決め台詞言っちまった。あーあ。


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