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Mrアラミスとの簡単な紹介と話し合いは終り、アンソニアホテルのドアボーイにMrアラミスが合図を送ると、ホテル玄関のキャノピー(ひさし)にピカピカのビュイックが滑り込んで来た。
その車に乗り込んで、ブロードウェイ通りを南下していく。混雑している繁華街(タイムズスクエアやヘラルドスクエア、五番街など)を通り抜け30分以上かかって目的地である13アスター・プレイスに着いた。
このビルは別名旧マーカンタイル・ライブラリー・ビルディングと呼ばれ11階建てで赤レンガ調の壁面は周囲に重厚な雰囲気を発していた。目的地は3階の小会議室であったが、先ずは2階の組合オフィスにいるカーター代表に挨拶と打ち合わせをすることになっていた。
ニューヨークの一等地にあるビルを一棟丸ごと所有している労働組合、その資金の豊富さがうかがわれる事象と言える。
2階にあるカーター代表のいる事務室では窓を全開にしてこの年の異常な熱波(35度を超えて来る)に対していた。
「やあ!熱いニューヨークにようこそ。何やら人間も沸き立っていてね、Mrシミズにどうにか冷や水をぶっかけて、皆の頭を冷やしてもらいたいとご足労願った次第だ。」
いつも通りのクールな表情であるが、言葉の端々に好意的な調子が混じっている。
「いつもニューヨークの夏はこんなに暑いンですか?まぁお元気そうで良かったです。Mrアラミスからおおよその事は聞いたンですが、組合ごとに対策が異なることは分かっていましたが、今回集められた組合は千差万別だとかで意見がまとまる事は初めから考えていないようですね。」
「ああ、最初に一応の声かけをして仁義を通しておかないと厄介な世界なんでね。Mrシミズには多少不愉快な質問もあるとは思うが勘弁して欲しい。私はMrシミズの構想している組合事業は今しか出来ない事業だと考えている。これまでのやり方では組合の将来は尻すぼみになる。もっと経営的センスを組合自身が持って、新しい事業構想と組合が経営した場合は組合員にも投資家にも事業の未来にも最も良い資金配分が出来ることを模索していく姿勢を示して、常に前進させることが出来る証明をする。それがMrシミズなら可能ではないかと感じている。敗戦国の日系人の考えたことなどばかげた話だと一蹴する人間も多くいるだろうが、Mrシミズのもれ伝え聞いた話を聞けば聞くほどこの世界の真の姿を見通すことの出来る人間ではないかと私の心に湧き上がってくるのだ。私にMrシミズの力を貸して欲しい。協力の過程で日系人に対する色々な便宜も考えている。」とカーター代表。
お互いソファにゆったり座りながら話しあっていると瞬く間に会議の時間となり、3階の小会議室に案内されることになった。
小会議室と言っても100人ほどの人間なら楽に入れるスペースがあった。ロの字型に机が設置してありどの席からも全ての出席者の動向を見通せる形になっていた。それぞれの机の上には出席者の所属と出席者名が示された三角プレートが置かれていた。
今回の幹事議長としてカーター代表から総労働組合「タフトハーレー法」対策会議の開会が宣言された。




