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 「南華茶室」におけるランチは久しぶりの中華料理というか、割合薄味なのにしっかりとした素材の旨味が分かる京都や金沢で食べた美味しい料理が頭をよぎるような料理だった。

「メイベルは知っているのか?彼らの言葉が中国語(北京語)とは少し違うような感じがするのだが。」

「大将、ここの人たちは私たちよりも古くからアメリカに移住してきた人の子孫なんです。100年ほど前にあったカリフォルニアのゴールドラッシュで鉄道建設労務者として広東省の中国人がアヘン戦争やその後の動乱を避ける為に渡って来た人の子孫。その後中国からの移住禁止と西海岸の暴動や差別強化によって人種差別の小さいニューヨークにやって来た人たちが作った場所。だからほとんどの人が広東人で広東語が標準だから北京語とは違って聞こえるンじゃない。」とメイベル。

「それで味付けが広東風なんだ。チャーシュー饅や餃子が美味い。それに安いから電車賃使っても、たまには来たくなる。松川さんやたまきにも食べさせてやりたいな。」

「そうだよ。うちの妹分のたまきちゃん、一人だけロサンゼルスに置き去りにしてきて可哀そうだよ。」

「今回はこちらに商売に来た訳じゃなく、あくまでも招待だからね。それに今はロサンゼルスが新しい商売を始めた大事な時期だから主力のたまきを外す訳にはいかなかった。大陸横断5000㎞は半端じゃないし、ゆっくり時間が取れる時以外は来れないから、まだ少し先になると思う。」

「じゃあ私が会いに行くね。どんどん仕事が増えて叔父さん大変そうだし、手伝いも必要みたいだから応援に行くね!」とメイベル。

 ちょっと待て!メイベルが来ると確かに仕事は随分やり易くなる。何と言っても天然の見かけと違って中身は極めて能力が高い。

仕事の進展力は半端なくあるように思える。将来のAOCを背負って立つ人材になる可能性が高い。何故かしら俺の周りの女性はどう見ても俺の能力の数段上の人間が多いような気がして敵わん。

それに、メイベルは魅力があり過ぎる。時々匂いに負けてクラクラっと来るからどうにも、困ったうれしいの心境。

「美味しい物はやっぱり熱いうちに食べるのが一番だね!大将。」

メイベル畳みかけて来るな!

 こうしてリトル・チャイナの昼は満足と迷いの中で過ぎて行った。

取り敢えず一旦、アンソニアホテルに戻ることにして、帰ってみるとカーター代表から明日の件で連絡を入れてくれとのメッセージが届いていたので、電話することになった。

 短い慰労の挨拶の後、明日の会議の手順と送迎の打ち合わせを簡単に取り決めして、よろしくとの事になった。

「大将は明日も大変だね。何だったら大将の秘書として付いていった方が良ければうちも行くよ。」とメイベル。

「いや、こんな所にガールフレンド連れて来よったと口の悪そうな連中が言ってくるのが見えてるから、今回は俺と松川さん二人で行ってくる。」

「ふ~ん。ところで松川さんて何者なの?大将がこんなに気を使っている人って初めて見た。」

「あの人は外交官として有能過ぎて、復帰を拒まれた人。そして、このアメリカに日本で最も強い力を振るう事が出来る可能性を持った人かな。俺の口からこれ以上のことは言えないけど、メイベルもおいおい事情を知ることになると思う。」

「何か凄そうな人なんだね。楽しみー。」

アンソニアホテルのロビー喫茶は葉巻の香りとオペラの歌声が微かに流れ込んで来る文化の香り、若くても長旅の疲れは出て来るもんだなと眠たげに独り言ちる俺がいた。


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