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「この店は不思議な店ですね。店の人が一人しかいないと思ったら、実は壁の向こう側に何人もの人が商品を作って、販売されるたびに補充していく。」

話をしながら、俺は動かない回転ずしを思い浮かべていた。

「そうなんです。この店はオートマットと言って、小銭があれば誰でもお腹を膨らませることが出来るんです。」

確かに客層はウォール街のエリートサラリーマンから、どこかの力仕事を終えた労働者や貧乏そうな人間、学生、買い物途中の主婦などバラエティーに富んでいたし、メキシコ系やアジア系の人間もここにはいた。

ここには、言葉のいらない食事空間があったのだ。母国語で話しても許される空間があったのだ。なるほど、ニューヨークは都会であった。

「ところで、うちの父が大変Mrシミズのことを気に入ってしまったらしく、ロサンゼルスの建設会社の設立に関して資金面を含めて協力させてもらうことを伝えてくれとの言葉を預かっております。

それで、リーマンの援助を受けないで試験的な形で労働組合との共同事業を立ち上げる方向で持って行くやり方が、事業の将来的な組織運営を含めて円滑な形態を模索しやすいのではないかとのことを伝えるように父から言われてます。」

とリチャード君。

「それは、俺も同意する。上手に労働組合を取り込んで、利益を分配することと、事業を行う事と、労働者に対する報酬をどう配分するかを労働組合自身が真剣に考えて事業運営にかかわらせることがこの事業の真の目的の一つになっているのだから。ある程度形になってから早期に株式公開させて資本投資の分配も学べればいいかなと思っている。」と俺がニューヨーク一美味いコーヒーと言われているオートマットのコーヒーに口を付けながら話を続ける。

「何よりも、労働組合が資本家や投資家として行動するという行動原理を取ること自体、共産主義とは全く別の行動組織として運営していくという決意表明ではないか?」

 リチャード君が笑っている。メイベルは特性アップルパイを食べながらウンウン頷いている。朝からすっごい食べてはるンどすけど太りまへんか?と頭にテロップが流れる。

「今回ニューヨークに来られたのも、自動車労連のカーター代表からの要請だとか、Mrシミズは見かけはすごく若いですけど、考えが奥深過ぎて想像できない領域にいるように私には見えます。

 あのー、これは私一人だけの心に仕舞っておきますので、一つお尋ねしてもよろしいですか?」

と何やらリチャード君が俺の目を見据えて来る。

「いいですよ。俺が考えることですから。」

「今うちの会社の代表がユダヤ人の母国としてイスラエルを建国しようと奔走していますが、果たして国家として成立するのでしょうか。」

リチャード君はユダヤ難民として僅かな細い糸によって生きてアメリカへ渡って来た経緯があり、ユダヤ人国家を成立させるというシオニズムの思想には大変関心が高かったようだ。リーマンの代表も多額の資金を提供しているという話だし。

「恐らく、来年のイギリスの統治期間終了に伴いイスラエルの建国は行われるのは間違いない。けれど、真の独立は多くの血が流れた後でなければ達成されないでしょう。つまり、間違いなく独立戦争が始まることを覚悟して準備する必要があるということです。」

そう俺が断言すると、リチャード君は心持頭を下げて

「ありがとうございました。Mrシミズの至言、心に刻み付けておきます。」


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