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 1947年8月のウォール街は皆が皆、麻のスーツを着てパナマ帽を被った人間がやたらと多かった。ニューヨークは連日の猛暑に見舞われて、暑さで気分が悪くなる人間も多く出ているらしい。

 ウォール街を200mほど歩いてウィリアム・ストリートに出ると右に曲がればお目当ての「ワン・ウィリアム・ストリートビル」が現れる。豪華な花崗岩と石灰岩で作られた壁面には細かな造形が施されており、ビルの床はピカピカに磨き上げられた大理石の床で敷き詰められている。重厚なドアにはドアボーイが待機していて、顧客に対してドアの開閉と応接を無駄なく行っている。

 顧客も社員もそろいも揃って男は3ピースでネクタイと帽子で数少ない女性は品の良いドレスを着ている。ドレスコードがあるような雰囲気であり、会社に入ることを諦めて、リチャード・ゴールドバーグ氏に『すぐ目の前にあった「チョック」という喫茶店で待っているから手が空いたら来てね!Mrシミズ』と書いたメモを渡して貰う事にして、リーマン銀行を後にした。もちろん、チップは1ドルと弾んだよ!ドアボーイはニヤリと笑って直ぐに駆け出していったことは言うまでもない。

「チョック」は清潔な白と黒のタイルを張った長いカウンターが自慢のお店であり、特に目を引いたのは徹底的に効率化された機能美と衛生管理、チップ禁止による会計の明瞭、迅速化であった。

昭和22年当時の日本では考えられないほどの衛生管理とシステム構築は、80年後の日本でも十分以上に通じるものがあった。

 入り口に近いカウンターにレジが設置され皆が会計をする。従業員のアフリカ系女子がカウンター内でサンドイッチを作ったりする作業がカウンター越しに見ることが出来、従業員全員がプラスチック製の手袋とトングを用いて一切食品に触ることなく注文をこなしていくことが分かる。これによって衛生的に問題ないと顧客に安心させることが出来る。コーヒーサーバーはウェートレス各人が動かなくても直ぐに作動させることが出来る位置に必要なだけ設置してある。サンドイッチの材料も予めカッティングされており、パンの上に置いていくだけの作業になっている。

 もちろん、この光景はカメラに収めた。

後で聞いた話なのだが、この「チョック」という喫茶店はニューヨークはマンハッタンの中心部でわずか15セント(約300円)でコーヒーとサンドイッチが食べられる破格の店として多くの若手ビジネスマンや学生などに愛された店であったらしい。

 メイベルは名物のクリームチーズサンド(デーツとクルミを練り込んだパンとクリームチーズ)で、俺はロブスターサラダサンド。

コーヒー2杯含めて40セント(約800円)。リーマンのボーイに払ったチップより少ない!もしかすると気前良すぎたのか?としょーもない事を気にしている間に、メイベルがカウンターのガラスケースを指さしながら

「レモンクリームパイとドーナツ追加ね!」

と元気よく注文を入れていた。

この感じでは昼は昼で食べる(メイベル)なんだろうね。


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