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 ニューヨーク五番街と言えば誰でもが、ティファニーを思い浮かべるだろう。更には、高級百貨店としての「バーグドルフ・グッドマン」や「サックス・フィフス・アベニュー」などもアメリカにおける最高級の商品を扱う店として知られている。

 その一角に足を踏み入れようとしているが、ウィンドウショッピングさえはばかられる様な空気がそのエリアには存在していた。

地下鉄駅から地上に顔を出してから、辺りには日系人だけでなくアジア人や黒人などの有色人種の影が無かった。

 メイベルは俺の方を向いて

「大将と一緒だと通りを歩けるかなって思っていたけど、やっぱりまだ早かったみたい。トラブルに巻き込まれる予感しか起きないもン。」

 街頭に警邏している警官が俺たちの動向を見据えているような気がするのは気のせいか?

「この場所はまだ我々には早いように思える。これがメイベルの暮らすアメリカなンだね。」

「そうだよ。少しでも枠を外すと途端に凄まじいしっぺ返しがくる。中世の貴族と平民の世界が残っているようなところが、この国のいたるところに残っている現実を忘れてはいけない。そう思っていたンだけど、大将がいるとつい何でも出来ちゃう気がするから困る!」

 メイベルは組んでいた腕を体に密着させながらシリアスな話をする。おい!話に集中出来ないではないか!けしからん。うれしいけど。

 結局そのまま地下鉄に逆戻りして、地下鉄の「ウォール・ストリート駅」へ向かう事にした。

 しかし、地下鉄は暑い。駅にも電車にもクーラーというものは整備されておらず、今年の30度越えから35度に迫ろうと言う猛暑日の地下鉄はラッシュアワーが過ぎて、人がまばらになった現在でも不快な暑さにしかめ面になるのを避けられない。

「ニューヨークは住みづらいか?」思わず聞いてしまった。

「どうしても差別はあるけど、戦争中でも日系人に対する強制収容を免れている地域としてニューヨークがあるくらいだから、ロサンゼルスに比べると住みやすいかもしれない。ただ、どうしてもホワイトカラーの仕事が多い地域だから、入り込めない場所がたくさんあるという事も事実。でも、大将が変えていくンでしょ?

 大将の話を聞いていると、この国は変わっていくンだって感じるもン。」

蠱惑的な瞳で俺を覗き込んで来る視線をメイベルはしていた。

こいつが一番の武器を使って俺を攻略しようとしているのか?と思う位心臓の動きが怪しい。

「そんな大層なことなどしないよ。少しだけ住みやすくして、ガンガン稼ぐだけだよ。」

「そーなんだ。メイベルも応援するね。お給料たくさんちょうだい!」とメイベル。

 20分掛からずに電車はウォールストリートー駅に着いた。改札を抜けて、地上に出ると目の前に教会の尖塔が天に突き刺さっていた。

 坂を下がっていく東に歩き出すと

「この駅、お父さんに連れられて来たことがある。でも北の方向へ歩いて行ったから、今回は違う証券会社に行くの?」とメイベル。

「ロサンゼルスのガーデナで出会った若者に会いに行くだけだよ。」と俺。


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