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 「戸栗商店と大田村商事の直接取引の中で、それとない近況の連絡を取ることが出来れば、双方が安心できるし、取引額の2%をボーナスとして設定しておけば、アメリカで売れる商品を提案して商売を広げることが出来れば皆が幸せになるとは思いませんか?」

そう俺が言うと、

「それは、娘を利用するということか?」と戸栗氏。

「日本においてアメリカ人の感覚を正確に掴むことは、あまりにも生活格差があって不可能に近いのです。その点お嬢さんはアメリカの最新の雑誌等の情報によって、何が売れるかという感覚を掴むことが可能だと思います。それと、戸栗氏と言う立派な先生がいるから最新の情報も入手しやすい。いずれほとぼりが冷めたころに独立して戸栗商店の日本支店を立ち上げることが出来るかもしれない。災い転じて福となる。未来を信じてみませんか?」

そう俺が言った時初めて戸栗氏が笑いながら、

「これほど強かで温かい取引提案を受けた覚えがない。年齢の事は関係ない。Mrシミズは大した人物だということを痛感しました。私からも『大将』と呼ばさせてください。」と戸栗氏。

 取り敢えず、これからの方向性として、ニュールックやハワイアンシャツ、独自の海軍シャツ様(Tシャツ)製品を生地を送って、完璧な縫製を指導しながら製品の質と技術力を上げて、生地の日本生産が整ってから完全輸入による大幅な利益増大を目指していく方向を戸栗氏と話し合った。

 そういった話をしていた為ついつい列車に乗り遅れて、結局ニューヨーク中央鉄道シカゴ・ラサールストリート駅23:30発の「イロコイ」号でニューヨークを目指すことになった。

ニューヨーク・グランドセントラル・ターミナルに着くのは13日の18:30ということだ。距離としては青森駅から新幹線に乗って広島駅の手前の三原駅ほどであろうか。(約1550㎞)

 アメリカ大陸を列車で横断する事がこれ程大変な事であるというのは実際に腰に来る日々を通して、初めて実感することができる。

距離的に約5200㎞であり、東京からシンガポールまで鉄道を引いて旅するようなものなのだ。

 時間的には列車待ちの時間もあり8月9日午後8時からとすると13日午後6時半までのほぼまる4日間掛かっている。アメリカは広い。

 ニューヨーク・グランドセントラル・ターミナルには8月13日の夕刻に時間通り着いた。

ニューヨークの街は8月に入って連日の猛暑になっているとの話を聞いた。毎日のように日中の気温が30度を超えて雨も降らない月になっているそうだ。

バテなきゃいいが今日はとにかく早くホテルに入って揺れない場所でゆっくりと体を伸ばして休みたいと俺が思って松川さんの顔を見ると、同じ思いなのかこちらを見て頷いている。

昨日は結局有り合わせの食事で戸栗氏との打ち合わせに没頭していた為、結局シカゴ名物スキヤキ定食が食べられなかったのだ。

 仕方がない、ニューヨーク名物のハンバーガーでも買ってホテルに入って寝るか。体が重くって、瞼も重い。

そう思っている自分がいました。・・・目の前に何でメイベル青木少尉がいるンだ!


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