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 見た目は20歳を回ったか回らないかに見える人間が一体どうやって「英雄」と呼ばれるマックバーガー大将から大尉待遇人物推薦を勝ち取ることが出来たのであろうか?

 戸栗氏の頭の中は混乱で渦巻いていたが、「英雄」からの評価を疑う訳にはいかなかった。書類をじっと見つめてから戸栗氏は俺に深々と頭を下げて

「私が「東京ローズ」アイバ・戸栗・ダキノの父親です。」と言った。

俺としては「そんな話聞いてねー!」と動揺したが、相手の動揺が大きかったために気付かれずに済んだようだ。

「知らないとは言え、失礼な言動申し訳ありません。ただ俺の話は誰にも話さないという条件は誓ってもらいますが。」

「分かった。俺はこれから聞くMrシミズの話は決して誰にも漏らさねぇ。墓場まで持って行くと約束するよ。」と戸栗氏。

その言葉を聞いて、松川氏に目配せして部屋の入口に近づく人の気配があったら知らせてもらう準備をしてから、おもむろに今後の事態の推移とそれに対する二つの道の選択を考えてもらうことにした。

「今回のお嬢さんの誤りは「東京ローズ」としてアメリカの新聞記者の取材に応じて報酬をもらい、サインをしてしまったことに原因があります。これによって人種差別の強い人間が全く反撃できないサンドバック状態の人間を好きなだけ叩ける大義名分が出来てしまったのです。彼らは口々に『アメリカ国民であるくせにジャップ(日本人の蔑称)と共同してアメリカ軍の士気を著しく下げるラジオ放送に積極的に加担した。国辱的人間であり「国家反逆罪」を用いるべき人間である。』と。」

「娘は敵性国人として餓死するか服従して放送にかかわるかを選択せざるを得ない立場に立たされたから、従ったまでであり、先年の日本における裁判でも無罪になっている。」と戸栗氏。

「日本における裁判はマックバーガー大将という冷静で有能な指揮官の下、公正な法廷が維持されました。しかし、このアメリカ本土においてはその公正さを期待できないことは、戸栗さん自身もよくご存じでないかと思いますが。」と俺が再度質問すると、戸栗氏は目を伏せ力なく肯定した。

「これから話す予想については可能性の話であって、必ずしも起きる事では無い事をご承知いただけますか?」

「ああ、心得ている。」と戸栗氏。

「どうしても有罪に追い込むために必要な事は、世論の後押しがあるアメリカ本土で裁判をする必要性があること。そして、確実に罪を着せる為には偽の証拠や証人を用意する事。この二点が必要になります。恐らく国家権力を利用して、裁判の証人に偽証させれば有罪を覆すことはできません。どれほど有能な弁護士を付けても裁判は最初から無理な出来レースなのです。」

と俺が言うと戸栗氏はじっくりと俺の話を噛み締めながら考えている。

 伏せていた視線を上げて強い目力を放って俺に向き合うまでに数分の時間が必要であった。

「Mrシミズの話は、私が味わってきたアメリカの国には掃いて捨てるほどよくある話だ。特に我々日系人については。ではいったい私の娘はどうすればいいんだ!」と戸栗氏は俺に迫って来た。


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