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「東京ローズはアメリカに帰ってきているのですか?」と思わず声に出していた。
俺の問いかけにMrタナカは
「いや、何だかアメリカ本国から入国拒否にあって、日本で苦労しているといううわさ話は聞いているがはっきりしてない。日系人と言うだけで日本では仲間外れにされて、アメリカでは差別される。俺たちはどっちからもいいとこ使いされるだけの存在なのかもしれない。」
Mrタナカは悔しそうな言葉を口に出した。
「まぁそれでも俺たちはアメリカについて良かった。あんな日本に住んでいたら、真っ先に死んでいたかもしれないのだから。そう言えばお兄さんたちは何処から来たンだ。」
とトガワと名乗った男が聞いて来たので、
「俺たちは日本から先月着いたばかりです。色々とご迷惑を掛けている日本人です。この度は日本及び日系人のアメリカ国の印象を少しでも改善するためにやって来ました。と言っても政府の人間ではないです。純粋に民間人です。ですから日系人の印象が良くなるような事業を探して提案していく形になると思います。」
「何とも無茶な事を企てる人なんだね。事務所一つ借りるにもまともな所を借りることが出来ない日系人がいるのに、敵性日本人に貸すような所などどこにもないのが現状だろうが、一体どうやって行くつもり何だか。」
Mrトガワはそう胡散臭そうに俺たちを見て言った。
「『東京ローズ』について他に知っている事はないですか?」と俺が続けて質問すると、Mrタナカが
「はっきりとは知らないが、何でも実家はシカゴの日系人の顔役だという話を聞いたような気がするが、はっきりとはしないがいいか?」と答えてくれたので
「ありがとうございます。ニア・ノースサイドで一度尋ねてみます。」と俺が言うと
「俺より若いのに、東京ローズのファンとは渋い趣味しているよ。がんばれよ!」とMrタナカ。
松川さんは俺の趣味が「東京ローズ」のファンだったのかと、驚いたような眼で見ていた。Mrトガワも変わったやっちゃなー!という目で見ている。取り敢えず俺はそういうことにしておいた。
そうこう話しているうちに、ランチを黒人のウェイターが運んで来た。
奇しくも、ランチのメインメニューはチキンコロッケで4人とも同じメニューになった事で何となく連帯感が出来たようで、話は色々な方面に飛ぶことになったが、概ね和やかにアメリカにおける日系人扱いや、差別に対する忌憚のない感想を聞くことが出来た。
そうそう!チキンヌードルスープがあった。これは、俺が想像していたチキンラーメンとは全く別物であった。
黄金色に透き通ったチキンコンソメスープに、きし麺を2~3センチほど切って入れたものがチキンヌードルスープであった。具材としてはサイコロ上の鶏肉と人参でパセリが散らされている。
当時のアメリカ人に取っては代表的なおふくろの味であり、風邪をひいて体が弱った時に飲む定番のスープであった。また、スープと一緒に2~3枚の薄いクラッカーが付いていた。
デザートのピーチパイも蕩けそうな旬の生の桃がふんだんに入っていて砂糖、シナモン、レモン果汁のバランスが取れた、とても美味しいパイであった。熱いコーヒーであっても、クーラーが掛かっている車両内では、心地よく感じられ、これで65セント(約1300円)なら満足の価格であった。




