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「スカウト」は夜の間にモハーベ砂漠を通り越し、目を覚ました時から砂と赤い岩肌をした崖を見せている。10時過ぎにグランドキャニオンへ行くためにウィリアムズ駅から乗り換えを行うらしい。
ここで行楽目的の乗客の大半が降りることになる。
スチュワードがランチの予約を取りに来たため、メニューの内容を聞くとアメリカの代表的な家庭料理でランチは形成されていた。
俺と松川さん両方ともメインはチキンコロッケのセットにした。
セットメニューの内容はスープがチキンヌードルスープ!となっていたどんなものなのだろうか、ワクワクしたのは内緒である。
焼き立てのパンにバニラアイスクリームまたは季節のフルーツパイだったのでもちろんパイを予約した。松川さんはアイスであった。飲み物は二人ともコーヒーというランチメニューになった。
この内容で65セント(約1300円)である。
予約時間は11:30~1:30の間の11:30とした。なるべく人ごみを避ける方がいい。
ランチ予約を取った後、シカゴの現状を松川さんに色々と教わった。
シカゴは現在あまりにも日系人が急速に膨れ上がってしまった為に、日系人の住む所に余裕がなくなり、狭い部屋でシェアする家族が相当数いるとのことだった。
街中にはこの「スカウト」が到着するディアボーン駅からタクシーで15分くらいの距離で着く、ニア・ノースサイドと呼ばれるクラーク通りとディヴィジョン通りの交差点付近の地域とサウスサイドと呼ばれるケンウッドとハイドパーク地区がある。
今回、ニューヨーク行の列車時間の関係でニア・ノースサイドの日本人街だけを訪れることに予定している。取り敢えず、列車客とのコミュニケーションの中でそれとなくシカゴの情報を集めることにした。
お昼のランチタイムを告げるベルボーイが「ポン、パン、ポン」とハンドベルを鳴らしてランチタイムの最初の予約を知らせていく。さすがに早朝とは違って最初からランチ客は多く、既に列が食堂車の前では出来ていた。我々も相席となった食卓に案内されたがそこには同じ日系人の退役兵が2人座っていた。
「初めまして、私は清水と言います、こちらは松川さんです。」
と俺が挨拶をすると、角刈りの目つきの鋭い兵隊が
「俺はトガワ、こいつはタナカだ。ようやく日本から除隊できた。」
とやや不愛想に受け答えした。
「日本はどうでした?」と俺が聞くと、タナカと紹介された男が
「酷いもンだね。敗戦するという事がどういうことか分かった。どの町にも体を売る女が溢れていた。何でもアメリカ兵との混血が随分と生まれているっていう話を聞いて、少し悲しかったよ。
そう言えば、ファンだった東京ローズが裁判になって無罪になったという話を聞いてホットした。あの子は日系人でたまたま日本に帰っていた時にアメリカに帰れなくなって、仕方なしに戦争に協力させられただけの女性だったという話だし。」と言うと。
俺の中で「東京ローズ」ってアメリカに帰って国家反逆罪で有罪になったという、ことを前世の戦後史を調べている時にあったような記憶を刺激する事になったのだ。




