猫
短いです。
紺色の髪が揺れる。
長いそれは美しく、白い回廊に映えた。
教師しか着ることのできない青いローブを翻し、その人は教室へ入った。
「初めまして。今日からみなさんの魔法授業を担当します。ローリア・ルイスリーゼです。」
自己紹介をして美しく笑ったその人は魔法を見せた。
高等科2年の生徒たちはその技術に目を向く。
「綺麗でしょう?貴方達もこれができるようになるわ。これは水と炎の複合魔法。この一年の知識でできることなのよ。」
ローリアは魔法を消すと、髪色より明るい紺の瞳を細めた。
その瞳に映るのは、期待か、挑戦か。
どちらであっても、生徒達の競争心を燃やしたのに変わりはないだろう。
こうして、学園に入った新たな教師の日常が始まるのだ。
***
「お疲れ様でした。」
彼女は教師陣の部屋を出て、門を潜り抜けた。
彼女の歩みは1人の人物に進んでいく。
「ローリア先生、お疲れ様。」
男がそう声をかけた。
ローリアの頬が緩む。
差し出された手に彼女は自分のそれを重ねた。
その瞬間、彼女の姿が変化する。
紺色の艶やかな髪は銀髪に。
紺より明るい瞳は琥珀と新緑に。
「ええ。ロベルトもお疲れ様。」
美しく笑った彼女……カナリアは、ローリアと瓜二つの笑い方をした。
いや、瓜二つではない。
本人なのだから。
生徒達に、第二皇女が教師として紛れているなんて悟られてはいけない。
姿を解く時も、ロベルトが自分のローブでカナリアを隠し、今もその状況は続いている。隠すのが遅れたとしても、ロベルトが張った認識阻害の結界の前ではどの視線も無意味だ。
まあ、ロベルトが隠し忘れる、なんてことはないだろうが。
「ふふっ、これからの生活が楽しみ!」
カナリアは笑った。
星の光を全てかき集めたような眩しい笑顔で。
夕日が2人の影を伸ばす。
それは寄り添うあう猫のように、温かい色をしていた。




